第12話 もう一人の存在……!
「その顔、いい顔してるわねぇ、誰だお前は??っていう感じ。
アタシか誰だか知りたいのかなぁ?ねぇ甘蔵君。」
「いやいやいや、俺とあんた、初対面だからね!!」
この人は危険人物だと甘蔵の直感が、警告してくる。
「いや、別にどうでもいいよ。あんたがどちら様だろうが。」
口ではそっけなく返したが、
本当は“正体を知りたくてたまらない”自分がいる。
けれど、それ以上に町を襲われた怒りが大きすぎて、
ツッコミどころ満載の相手なのに、いつものように突っ込めない。
「あらぁ、つれないわねぇ。じゃあアタシから自己紹介してあげる。」
甘蔵は黙ったまま、怒りを抑え込むように聞いている。
女はくるりと振り返り、堂々と名乗った。
「男もガチャも—―狙った獲物は逃さない!
ガチャ士のスパイシー!! と言えば、アタシのことよ♪」
「甘蔵よ。こういう時何を言えばよいのかのう?」
「……信長さん。」
甘蔵達の表情が険しい。それを見て不評だったと思いスパイシーは、
もう一度、自己紹介することにした。
「アタシは――魔王軍麾下第一軍団、軍団長のスパイシー。
魔王様に仕えるガチャ士よぉ。
つまり、アナタと同じ“ガチャ士”ってわけぇ。」
「……ガチャ士、ね。」
信長は甘蔵の肩をポンポンと叩き、どこか誇らしげに笑みを浮かべた。
「ほう。同業者とはのう。
昨日、こやつが連れてきた英雄が魔王を封印したぞ。」
「でも残念。魔王は昨日“一時的に封印された”んだって?
いやぁ、ほんとビックリしたわよぉ。」
軽い調子で言うが、その目だけは笑っていない。
「それとね――ミッドナイトキング?
あれは“野良魔王”でアタシ達の魔王軍には、
入ることすらできなかった半端者なのよぉ。」
表情が一番厳しかった甘蔵が呟く。
「……野良、魔王?」
「そう。あなた達が封印したのは、ただの野良魔王。」
甘蔵のメンタルが悲鳴をあげている。
「じゃあ……本物の魔王は別にいるってことか。」
「当然でしょう? 私たちの尊き主である、
魔王様は――もっと圧倒的存在なのよぉ。
アナタが出会ったのは、せいぜい『魔王の見習い』よぉ。」
スパイシーの言っていることが、大袈裟ではなく本当のことだとすると、
甘蔵の背筋に、冷たいものがすっと走った。
勝てるわけがない。そもそも俺の“試練”って何だ?
この字の使い方で合っているのか?
考えれば考えるほど訳が分からず、頭の中がぐらりと揺れる。
気を失いかけた甘蔵は、思わず隣にいた信長と光秀に助けを求めた。
信長は魔王の存在について何か思案しているようだったが、
光秀はまったく別のことを考えている気配があった。
光秀の表情から何かやる気が全く消えてしまった。
昨晩の野営での出来事が脳裏をよぎる。
皆が寝静まった頃、見張り当番をしていた甘蔵のもとへ、
光秀が静かに近づき、自分の将来について尋ねてきたのだ。
俺は、言うか言うまいか、迷った。
この世界の結末は、あの歴史とは絶対に違う。
ガチャの召喚に応じて現れた以上、
光秀も本来の世界線とは別の存在のはずだ。
それを前提に説明したつもりだったのに、
どうやら伝わっていなかったらしい。
もしかして、伝わっていて何か思うことがあるのかも……。
甘蔵のメンタルは限界寸前、光秀はなぜか別方向に迷走中。
信長だけが妙に落ち着いているのが、逆に一番不安である。
次回――甘蔵、ついに“情報量”に耐えきれなくなるのか?如何に!!
ご覧いただきありがとうございます!
もしよろしければブックマーク登録の方と後書きの下にあります
☆☆☆☆☆から好きな評価で応援していただけると嬉しいです!




