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65 魔力測定、再び

 私は元気。でも、とにかく身体が重い。

 ぐらぐらと脳が揺れていて、感情は内側で荒れ狂っている。

 無数の小さな私が戦いを起こそうとしています。


 米、米を作らせろ!

 TKGたまごかけごはんを食べさせろ!

 土地がいただけないのなら、領地へ戻ろうぞ!

 反乱だ! エイ・エイ・オー!


 でも、乗り掛かった舟、それに乗っている土魔法クラブの皆様が。

 うーん、うーん。

 そんな私の耳元で、囁く人がいます。


『シリィ』


 相変わらず、愛情を隠さない声音で私を呼ぶ。

 歯の浮くようなセリフを、待ちたいような、むしろ待っているような。

 その人は、私のむずがゆい期待など知らずに言いました。


『明日は学食で塩結びが振舞われる日だ。皆で……エミールやアレク、ロザリア達と学食で昼食を取る、皆で塩結びを食べる。起きないと、シリィだけ参加できないよ?』


 あ……。

 土地に気を取られて、塩結びが振舞われる日のことを忘れていました。

 起きないと、食べられない。

 皆で楽しいことするのに、私だけ不参加なのは…………とっても、寂しい!


『エミールがもう米が無いといっていた。カントリーハウスで収穫できた米はマルグリット様が管理をされているそうだよ』


 な、なんということでしょう。お母様に米管理権を握らせましたか。

 そこはリヒャルトお兄様にして欲しかったところ。

 追い米を簡単に頼めない環境ですね……。


『起きないと、来年まで食べられないよ』

「だ……め……です………わ」


 絞り出したようなガラガラの声が先に出ました。

 瞼を上げようとしましたが、上がりません。


『残念だよ、シリィ。君の分まで、僕が食べるね』

「クゥッ!!!」


 私は奥歯がぐらぐらするくらいに噛みしめました。

 歯にヒビが入る予感。

 けれど、カッと瞼は開く。

 私は、呟いた。


「……こめ」


 瞼は開いたものの、世界の光が眩しすぎて、負けそうになります。

 そんな私に気合を入れるように、高らかなレオの声が部屋に響き渡りました。


「医師を!」


 う、耳がキーンと。

 かなり近いところにいるとみました。


 視線だけで周りを見ると、まず、ベッド脇にやはりレオ。

 調度品を見れば、お母様が使っていたお部屋。

 この展開、何度目でしょう。

 私、レオの前で鼻血を二回も出しています。令嬢として辛い。


 医師を呼べとか、あれこれを持ってこいと、キビキビと指示が飛びます。

 あと、王宮にいるときに私を見守ってくれているメイドもバタバタを他のメイドに指示を出しています。

 なんだか、とても申し訳ない。


「……私は、米を……」


 食べられるのか、と尋ねてみたかったけれど、声がカスカスで出ない。


 それにやはり眩暈がひどくて、起き上がることは無理そうです。

 私は寝ころんだまま、腕を上げて手のひらを見ました。

 少女の瑞々しい肌の、小さな手。

 これが、私の手。

 あの、土地ゲットのヒリヒリ感の中で味わった、意識が溶けあう瞬間が脳裏によみがえる。


「とりあえず、シリィ、水を飲んで」

「米……」

「……」


 レオは笑顔を崩さず、私が上体を起こすのを助けてくれた。


「まず、無事にシリィの土地になったから心配はしなくていいよ」

「!!」


 私はレオからコップを受け取り、水を飲んで喉を潤しました。

 それからレオに勢いよく尋ねる。


「本当ですか!」

「うん、大丈夫」

「そうですか! 良かったです!」


 契約書は取水権その他もろもろ追加して作りなおしてくれるらしい。

 出来上がり次第レオかアレクが預かり、私がサイン。

 それから陛下に……という流れ。

 預かるから後でサインをしてくれれば、レオが陛下に渡してくれるらしい。

 これに掛かるのが一週間程度。

 つまり、それから晴れて私の土地。


「あと、あの精霊が守ると言ったから平和だよ。強いから」

「まぁ……」


 警護費用が浮いた……。

 それが一番に浮かんだ私は、少し道徳とか倫理の本を読んだ方がいいかもしれません。

 土魔法クラブの皆様の安全が確保されたので、本当に良かったです。


 それから顔馴染になった医師が来て、いろいろ問診と触診をされた。

 血を多く流しているから、ちゃんと栄養価の高い食事をとるように言われました。


 それからセバスチャンが恭しく持ってきたのは、見覚えのある、透明な水晶玉。と、ピヨ。


 あれ、ピヨがいつの間にかバレーボールからバスケットボールの大きさになっています。

 ピヨは「お前はまったく」と言いながら、私の太腿の上に着地。

 レオは水晶玉を受け取ると、セバスチャン以外、人払いをしました。


「魔力測定するから、手を置いて」

「……もう測りましたけれど」


 五歳の時に、というのは加えるのは止めました。


「倒れたからね。はい、測って」


 ニコニコ顔のレオの圧が凄い。

 鼻血出して倒れて、ご迷惑をお掛けしたでしょうし。

 手を置くだけだし、と私は手を置いて魔力を流した。

 眩暈とか、いろんな具合の悪さが無くなっていきます。


 そして、目を開けていられない光量が部屋を満たした。

 眩しさに、私は目を閉じる。

 レオが興奮を抑えた声で言った。


「なるほど」


 私がおそるおそる目を開けると、水晶の中に文字が浮かんでいた。


『∞ ∞』


 ……無限大が、二つ?

 どういうこと? 無限大×2とかいう概念はあるの?

 いや、ないでしょう……。

 本当に、よくわかりません。


 レオは困ったような表情で、そんな私の顔を覗き込んできました。

週1にするつもりが、更新しちゃいました……。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!大歓迎です!!
サプライズな更新、ありがとうございます
 週1と言わずに、もう少し読みたいです。  「DAS◯村」なら、番犬とアヒル隊長も必要。
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