表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/49

現実への侵入

「瑞羽さん…?」


悠は来訪者を自室に招き入れつつも、慎重そうに相手の様子を伺う。

日が落ちかける少し前の、薄ぼんやりした青空の様な、青色の制服。

ポニーテールの髪を揺らし、落ち着いた様子で、話しかけられるのも待たずにベッドに腰掛けた。

ロウソクの様な白い色をした顔を悠に向けて、彼女は言う。


「悠、元気?」


その蒼白な喉の奥より発せられる、微細な空気の振動が悠の心に、不快さと嫌悪感を鼓膜を通じて、与えた。


…粘土細工じみた無表情の顔で、セーラー服を着た少女は再び、問いかける。


「悠、元気?」


悠は、黙って目の前に座る彼女の顔を見つめ返す。

そして…


「トイレ行ってきます。」


机の上の、自分のスマートフォンを手でかっさらう様に手に取り、部屋から出てドアを閉めた。


…ドアノブをしっかり掴んだまま、何度も軽く胸を上下させる。

震える手で、スマートフォンのタッチパネルを操作して、電話をかけた。

他ならぬ瑞羽の番号へ…


「あれは…」


コール音が画面の向こうで何度も繰り返す。

…出ない。


そしてドアの向こうの、部屋の中にも、何の反応も感じられなかった。

悠はたらりと、一筋の汗が、自分の頬を伝うのを感じた。

かすれた声で、彼女は囁き声を漏らす。


「あれは…瑞羽さんじゃない……」


悠は、尚もドアノブを握りしめたまま、スマートフォンの画面を切った。


唐突に訪れた物々しい静寂に、全身が押し潰されるかの如く、身体全体が沈んでいく。


どうすればいい? どうすればいい?


一瞬の内に、ありとあらゆる思考が頭蓋の中を巡った。

台所からは、母親が居間のテーブルに食器を並べる、厳かな音が聞こえてくる。

考えがまるで溢れ出すかの様に、パンパンに膨れた心臓の紐を緩め、彼女は落ち着いた声調でこう、呟いた。


「王君…。」


悠は半ば無意識にスマートフォンを操作し、洪健の番号へ通話を試みて…



「気ヅいタ?」



完全に意識が離れていたドアノブが、回されていた。

冷徹な悪意を体現した目線が、悠を見下ろしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ