【魂】×TRUTH 弐
「おわっ──!?」
誰かが叫んだ。
その時、刀真の目の前が急に真っ暗になる、と同時に体が少し宙に浮いた。
勢いに飲まれたと思った次には地面に尻もちを着いていた。
「イテテ──。」
見上げるとそこには光子郎がいた。
「斬咲!?」
突然の遭遇に光子郎は驚きを隠せなかった。
「なんでお前がこんなところに。」
ハッとした表情をしたかと思えば、光子郎はすぐに怒りを露わにした。
「どこに目をつけてんだお前!」
「それはお互い様じゃないかな。」
刀真は立ち上がって砂埃をはらい言葉を返した。
「なんだと──大体なんでお前がここにいるんだよ?」
「僕はこれから黒霧学園の最終試験会場へ向かうんだ。」
意外な答えだったのか、光子郎は数秒沈黙する。
そして急に口を大きく開いて笑い出した。
「まだ諦めてなかったのか?」
「あ、当たり前だ!」
「刀も抜けないのにか?」
「それでも──」
「また誰かを斬るのか。」
光子郎の表情が突然険しくなったことで動揺してしまう。
「刀を抜けばまたお前は呪われるんだろ?」
「それでも僕は侍になる。」
「子供のわがままみたいに!」
光子郎は何か思いついた表情を浮かべ、素早く行動した。
「あ──」
一瞬の隙をつかれた刀真の木刀が奪われる。
「返せ!」
「やなこった!」
刀真との距離を空けて木刀の端を両手で掴み、折ろうと体勢を取った。
「こんなもので何ができる、こんな木刀で侍になれる訳がないんだよッ!」
力を入れると木が軋む音が木刀から鳴る。
光子郎の力なら簡単に真っ二つに折ることが出来そうだ。
「やめろ!」
「やなこったって言わなかったか?」
「卑怯者め!」
「何──?」
光子郎が聞き返す。
刀真は彼を睨んで言葉を続けた。
「君は卑怯者だ! みんなの前で僕のことをバラしたり、そんなことでしか僕に勝てないのか?」
「なんだとォ?」
彼の反応を見た刀真は不適に笑った。
「君こそ侍失格なんじゃないか?」
「テメェ──!!」
ついに堪忍袋の尾が切れる。
光子郎は木刀を刀真へと投げ返し、刀を抜き取った。
激しい形相で戦闘態勢を取る。
「上等だ、刀を構えろ斬咲ィ!」
刀真は木刀を掴み、光子郎の望み通り構えた。
「刀って言ってるだろうがァ!?」
「今の君にはこれで十分だ。」
怒りが湧いてくる。
光子郎は今この場で、本気で刀真を倒すと決意した。
「俺を──なめるなよッ!!」
間合いを素早く詰めて、刀を力強く振り下ろす。
刀真はそれをかわして反撃に出た。
木刀を下から光子郎の腹を目掛けて振り上げる。
「ぐゥッ──!?」
重たい衝撃を喰らい悶える。
刀真の次なる攻撃が飛ぶが対応できない。
光子郎は後ろへ吹き飛ばされた。
「どうしたんだ、この程度で僕に勝てると思ったか? 君こそ僕をなめるなよ。」
「くっ──刀も使えん分際でなめた口を聞くな。」
立ち上がり、もう一度構える。
「俺の侍魂をみせてやる、輝け──“天空星”!」
光子郎が叫ぶと、彼の刀の刃が光り輝いた。
輝きは徐々に強くなっていき、そしてすぐに消える。
消えた光は“光の速度で移動して”刀真の肩を斬り裂いた。
「あぁ──!」
痛みで膝を着く。
その様子を見た光子郎から笑いが溢れた。
「どうだ、俺の天空星の“能力”は久々だろう?」
得意げに話す光子郎に光が集まり、刃が再形成されていく。
刀真は以前にもこの能力を受けたことがある。
“天空星”──その刃は光に変化し、光の速度で相手を斬る──。
刀には職人によって形等が異なるが、その全てに“能力”が宿っている。
侍のもつ侍魂はその“能力”を引き出すことが出来るのだ。
「光となり光で斬る──この能力はお前も随分と苦戦したよな」
刀真は過去何度か光子郎と剣を交えたことがあり、この光の速度で放つ刃に苦戦したこともあった。
しかし何度か戦ったからこそ、その特性は理解している。
刀真は立ち上がると後ろへ振り返った。
そして勢いよく駆け出す。
「って待て!」
光子郎も遅れて駆け出す。
奇妙な追いかけっこが始まった。
「逃げても無駄だ!」
天空星が再び光となる。
斬撃は確実に刀真を捉えてその身を刻んだ。
「ぐッ──!!」
血が地へと飛び散る。
激しい痛みに襲われても刀真は走ることをやめなかった。
周りの景色が大通りへと変わる。
道中何度も攻撃を受けた影響により刀真の制服はボロボロになっていた。
傷の痛みも大きい。少し攻撃を喰らい過ぎた。
それでも刀真は止まらない。
「いい加減にしろ!!」
叫ぶと同時に放つ。
斬撃が刀真の背中を斬り裂いた。
衝撃で刀真は転がり倒れる。
体はもうボロボロだが、まだ立ち上がる。
辺りを見渡すとすぐ横に路上駐車された車を見つけた。
刀真は車に掴まり立ち上がると、追いかけてくる光子郎を睨みつけた。




