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サムライ×KILL  作者: 45
【序】──侍と侍魂──
8/39

【魂】×TRUTH 壱

「今季最後の寒空となるでしょう──。」


ニュース番組の天気予報のコーナーが終わり、BGMが変わる。

いつもなら占いの結果まで視聴して番組の終わりまでを見届けて学校に向かうところだが、今日はそうもいかない。


刀真はカバンに受験票を入れて口を閉じた。


「忘れ物はない?」


鋏子が心配そうに聞く。

大丈夫の合図を親指を立てて示す。

鋏子も安心そうに笑った。


「あんた、何よそれ?」


鋏子が刀真の腰を指差して尋ねた。

それは彼が幼い頃から愛用している木刀が添えられていた。


「まさかそれで試験を受けるつもり?」


首を傾げる鋏子に対して刀真は少し膨れっ面をみせる。


「何もないよりマシだから。」


そう言って刀真はもう一つ、手に取った。


「それは──」

「良いんだ。」


腰に添えた“黒椿”の柄を力強く握る。


「使うつもりはないよ、でもいつまでも刀が抜けない侍でいるわけにはいかない。 いつの日か抜かなければならない時が来ると思うんだ。」

「でもだからって黒椿じゃなくても。」


不安そうな鋏子に刀真は首を横に振った。


「黒椿じゃなきゃダメなんだ。 父さんを超える侍になるなら過去と──この刀の呪いは乗り越えていかなきゃいけない。」


刀真の瞳に迷いはなかった。

鋏子は黙って頷き、ポケットから何かを取り出した。

それは小さな御守りだ。


「母さん特製だから特別な効果はございません。 御利益は──親の加護!」


“いつでも見守っている”


鋏子はその想いを込めて作成したことは刀真には伝えなかったが、言わなくても刀真は理解していた。


「ありがとう。」


御守りをポケットにしまって、刀真は玄関先へと向かった。


「刀真──!」


靴を履いている途中、鋏子が呼び止める。

振り向くと少し寂しげな表情を浮かべているのがわかった。


「いってらっしゃい。」


無理して笑っている。そんな雰囲気を感じと取ったが、刀真は触れなかった。

いつも通り、ただ笑って母の見送りに応えた。


「いってきます!」


そう言って家を出て行く息子の後姿は不思議といつもより大きく見えた。

先日までの刀真とは違う。あれはまるで──。


「剣義さん、またあなたに少し似てきたかしら。」


最近涙脆くて仕方ないことを年のせいにして、鋏子も仕事に行く支度を始めた。


あの出来事から数日──刀真は学校には行かなかった。

それは阿久津からこんな提案があったからだ。


「君はもう学校に来なくて良いですよ。」


爽やかな笑顔で放つ一言に刀真は電話越しに落胆する。


「いや──そういう意味ではなくて、もう出席日数も十分ですし授業も大してないので、卒業式までの残りの期間は最終試験に集中してもらおうと思いまして。」


あの出来事の翌日に刀真は黒霧学園の最終試験を受けることを阿久津に告げた。

すると阿久津はすぐに学校側に申請を出して許可を得てきたのである。


「ちなみに矢井馬くんにも同じ提案を出しているので、決して君だけ特別待遇って訳じゃありませんよ? 先生、贔屓はしません。」


どこか抜けた声色で言うが、恐らく角を立たせない配慮であると刀真は思った。


後日、訪問してきた生徒指導の教師の話では、矢井馬が刀真の事情を知っていたのは別の教師が喋ってしまったからであり、この教師は厳重注意と軽処罰を与えられたらしい。


また矢井馬によって事情を知ったクラスメイト達の中には、やはり刀真に対しての態度や見方を変えたもの達もいる。


阿久津はこの状況での刀真の精神的な苦痛等や、余計な争いを避ける為に行動したと、刀真は思っていた。


「ありがとうございます。」

「いや──それより試験大丈夫そうですか?」

「大丈──夫ではないかもしれません。」


自信のない返事に阿久津は驚いた。


「随分と自信の無い返事じゃないですか。」


刀真は受話器をそのままにして目の前の用紙に目線を移した。

それは黒霧学園の最終試験の“試験内容”の通知書。

そこにはこう記されている。


「最終試験内容は──」


“刀の力を引き出して”行うものを予定とする。


「刀の力って──えぇ!? それって凄くマズくないですか?」

「凄くマズいんですよ。」


刀が抜けなくても侍になってみせる。

その一歩目の課題が刀を使った内容であり、抜刀できない刀真にとっては大きな壁となった。


「どうするんですか!?」

「なんとかします!」


勢いだけでそう告げたのはわかっていたが、解決方法が見つからないまま、その電話から数日が過ぎて試験当日を迎えた。


その間、刀真は剣術をより磨いてきたが、抜刀──こればかりは簡単な山ではないことを思い知っている。


「どうしよう。」


絶望という表情を浮かべて試験会場へと向かう。

一層のこと逃げるなんて選択肢も考えることはできたが、すぐに有り得ないと消した。

頭を悩ませながら最初の曲がり角を曲がった。

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