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サムライ×KILL  作者: 45
【序】──侍と侍魂──
6/39

【刀】×DARKNESS 参

“心を我に委ねよ──”

 

その言葉で意識を取り戻す。

飛び起きた刀真は呼吸を激しく乱していた。

辺りを見渡す。ここはどうやら学校の保健室らしい。

ほのかな薬品の匂いが鼻をくすぐる。


刀真は頭を抱えた。頭痛がする。

教室での出来事、まだ記憶は鮮明に残っていた。


犯した罪──自らの父を殺したこと。


忘れられるはずのない事実をたった数分の会話で思い知らされてしまった。


「目が覚めましたか?」


声のする方向に振り向くと、そこには刀真たちの担任教師──阿久津命(あくつみこと)が教員用の机に座っていた。

手元には一冊の小説、有名作家──書師走筆彦(かきばしりふでひこ)のデビュー作、『孤独』がある。

刀真の看病をする間、彼はこの本を読んでいた。


「気分はどうです?」

「先生──あまり良いとは言えません。」

「でしょうね。」


阿久津は読んでいた本を閉じて、表紙部分を刀真に見せた。


「読書はします? 私よく読書家と誤解されがちなのですが、実は家では漫画しか読まないんですよ。」


胡散臭いがお似合いな笑顔でそう語る。


「この本は校長先生に勧められて仕方なく読み進めたつもりだったんですが、これが意外と面白いのなんの──先生、書師走筆彦のファンになっちゃおうかななんて。」

「先生。」


目を合わせずに刀真は阿久津を呼んだ。


「ご迷惑をおかけしてすみませんでした。」


刀真はか細い声でそう告げた。

彼の言葉に阿久津は真剣な表情を浮かべて、本を机に置いた。


「どうやら一悶着あったようですね。」


刀真は何も答えなかった。


「事情は粗方呼びに来てくれた生徒に聞きました。 私がもう少し早く行けばこのような事態にはならなかったかもしれません。 申し訳ない。」

「や、やめてください!」


頭を下げる阿久津に対して刀真は首を横に振った。


「僕が全て悪いんです。」


再び俯く。

阿久津は頭を上げて彼の方に顔を向けた。


「悪い? 何故斬咲くんが? けしかけたのは矢井馬くんでしょう。」

「僕が全て悪いんです。」


一点張りの態度に困った表情を浮かべる阿久津。

ひと息つくと、再び口を開いた。


「それは“これまで”のことがですか? それとも“父親を殺してしまった”ことですか?」


刀真は動揺をみせた。

阿久津の方に視線を向けて目を見開く。

少しの沈黙の後、彼は口を開いた。


「両方です。」


刀真は過去の自分を思い出していた。

刀が抜けなくなる以前の自分のことを。


「矢井馬くんがあそこまで僕に対して恨みがあるとは思っていませんでした。 でも今思えば仕方ないですよね。」

「──と言いますと?」


阿久津は敢えて聞き返した。


「僕は入学時──いやそれ以前からだったからかもしれません。 とにかく傲慢で自意識過剰な人間でした。」


剣豪である父──斬咲剣義の子として生まれた刀真は、幼い頃より剣の修行を行ってきた。

その甲斐もあって十歳を迎える頃には並大抵の大人では太刀打ち出来ないほどの剣術の達人となっていたのだ。

だが次第に刀真は、自身をエリートだと思い込む歪んだ侍道へと進むことになった。


「三年に進級した去年の春──僕は自分を特別だと思い、そして周りの人間を蔑んでいた。 それが恨まれるきっかけとなったんです。」

「まあ、君は実際に天才的な剣術の使い手ですからね。 年相応にそう思うのも無理はない。」


阿久津が続けなさい、と合図を送る。


「そして去年の夏頃、黒霧学園入学一次試験を控えたある日のことでした──」


その夏は例年より暑かった。


夏休みに入り、刀真は毎日父親との剣術修行に明け暮れていた。

朝から晩まで、基礎体力を作り、筋トレに励み、剣を交えて力を蓄えた。


ある日のことである。その日は父──剣義が所属する組織KILLの任務に行く日であり、午前の稽古は自主トレとなっていた。

しかし毎日の基礎訓練に飽きていた刀真はより強さを求めて、“黒椿(くろつばき)”に目をつけたのだ。


黒椿──斬咲の家の先祖は昔、上流階級の家柄だったと言われている。その当時の当主が使用していたと言われる刀であり、家宝として子孫に引き継がれていた。


鞘から引き抜くと刃も柄も全て黒いその身を美しく光らせ、柄の部分には斬咲家の家紋が彫られている。


しかしこの刀、家宝でありながらもとある逸話によって決して使用してはいけない決まりがあった。


「逸話?」


阿久津が繰り返すと刀真は頷いた。


「黒椿は“呪われた刀”なんです。」


“黒椿には亡霊が取り憑いており、使う者を呪い操り、周りの者を斬り殺して最後には使い手をも殺す”という。


実際に先祖の中では刀を使用して死んでいった者もいると伝えられている。


「当時の僕は呪いだとか信じていませんでした。 ただその刀を使うことは父から強く禁じられていました。」

「それでも使ったのですね。」

「純粋に強さを求めていたんです。」


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