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サムライ×KILL  作者: 45
【序】──侍と侍魂──
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【刀】×DARKNESS 弐

「何がそんなに凄いことなんだよ?」


発言者に視線が移る。

その人物──矢井馬光子郎(やいばこうしろう)

彼も刀真のクラスメイトであり、侍を目指す卵である。


「またかよ矢井馬。」

「いつもいつも斬咲くんに突っかかって何様よ。」

「“俺様”──だ。」


光子郎は席から立ち上がり、勢いよく宙へと跳んだ。

空中で一回転、華麗に舞い刀真の目の前へと着地してみせる。


「すごい──。」

「さすが矢井馬だ。」

「でも斬咲くんには勝てないくせに。」


最後の言葉を聞いた光子郎が足を滑らせて転げる。

その瞬間、教室中が笑いに包まれた。


「だ──誰だ今言ったやつ出てこい!」


笑い声は響けど、挙手は上がらず。

光子郎は治らない怒りの矛先を刀真へと向け、彼を睨んだ。


「おい斬咲、黒霧の最終試験なら俺も受けるぜ。」

「え──?」


今度は静寂が包む。

それを光子郎は自ら破った。


「黒霧に行けるチャンスを掴んでるのは何もお前だけじゃないってことだよ。」


そう言って彼は、ポケットから最終試験受験票を取り出して刀真に見せた。

それは刀真のところにも届いた書類と同じ。

紛れもない本物の受験票だ。


「え、矢井馬も受けるの?」

「やめとけ斬咲に勝てたこともないくせに──」

「──黙れ!!」


光子郎の叫びに再び教室内が静まり返る。


「お前らいつまでコイツをチヤホヤしてんだ?」

「だって、斬咲くんは強いし。」

「それにあの“KILL”に所属する斬咲剣義の──」

「お前らまだ知らないのか?」


言葉を遮り光子郎は不適な笑みを浮かべた。


「そうか──なら俺が教えてやる!」

「──やめろ!」


刀真は光子郎の胸ぐらを掴む。

これから彼が言おうとしている内容がわかってしまったからだ。


「斬咲くん──?」

「ハハハ! 言われたくないか?」


光子郎は激しく笑い出し、刀真は彼を強く睨んだ。


「そらそうだよな! だってこいつは──」

「やめろォ!!」


感情が昂り、気付いた時には刀真の右手の拳が光子郎の頬へと飛んでいた。

殴られた勢いで光子郎は吹っ飛び、机を巻き添えにして倒れた。


「きゃあぁぁ──!!」


女子生徒たちが叫ぶ。

男子生徒たちも予想外の事態に愕然とした表情を浮かべた。


「斬咲が矢井馬を殴った──!?」

「どうして?」


刀真は我に返る。

やってしまった──。

呼吸が粗い。頭が痛い。思い出す、あの夢を。あの出来事を。

それ以上は──語ってくれるな。

その思いが暴力という最悪の形で出てしまった。


「やってくれるな。」


光子郎が頭を抱えながら立ち上がった。


「侍が手出したらダメだろう? 出すなら刀だ。」


また光子郎は笑った。

刀真は反射的に自身の刀の柄に触れる。

その手は大きく震えていた。


「抜けるのか?」


刀真は答えなかった。


「無理だろうな。 だってお前は──“父親をその刀で斬った”んだからなァ!!」


教室内が静まり返る。

誰もが光子郎が言ったことをの意味をすぐには理解できなかった。


「は──?」

「何言ってんだお前。」

「斬咲くんが斬った──?」

「父親ってあの剣義さん?」


光子郎は笑いが止まらなかった。

刀真は吐き気が止まらなかった。


「おいおい、みんな責めてやるな。 奴も仕方なかったんだ。」

「どういうことだ?」

「聞くだけ無駄よ、こいつ斬咲くんがムカつくから嘘言ってるのよ!」

「そうよ──そうよね斬咲くん?」


全員の視線が刀真に移る──が、刀真は何も言わず俯いたままであった。


「おい、なんとか言えよ斬咲。」

「僕は──」


刀真の意思とは別に手が動く。

柄を握る手をもう片方の腕で掴んでいる。

刀を抜かせないと、本能的に動いていることを刀真は感じていた。


「その刀さ、その“呪われた刀”の呪いを受けたんだ斬咲は。」


刀真の鼓動が早くなる。

夢から覚めた時と同じ感覚──。


「呪われて意識を無くし父親を斬った──そのトラウマでこいつは“もう刀を抜くことができない”んだ!!」


突き刺さる言葉。

受け入れ難い現実。

どれだけ忘れようとも、心の奥底に閉まっても、夢として現れる記憶。


“何をやっている”──。


夢の中で父が問う。


“僕には──何もできない”──。


もう刀が抜けないのだから。

その闇は刀真の心を蝕んだ。


「刀の抜けない奴が侍になんてなれるのか?」

「黙れッ──!!」


刀真は近くにあった木刀を手に取った。

再び感情に身を任せ、光子郎へと振り下ろす。

鉄の擦れる音が響き、光子郎は刀を抜いた。

素早く木刀を受け止め、刀真を弾き飛ばした。


「また呪われたか?」


皮肉を込めて尋ねる。

刀真は答えなかった。


「俺はもう二度とお前には負けない──お前は侍になんかなれやしないからな。」

「黙れ──」


もう一度木刀を振る気力はない。

刀真はそのまま眠るように意識を失った。


生徒の一人がすぐに先生を呼び出す頃には、刀真の心は再び闇深くに堕ちていった後だった。

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