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サムライ×KILL  作者: 45
【一】──黒霧学園──
30/39

【孤独】×FIRE 四

全てを終えた仁は、腰の引けた彼のことを見た。


「あぁ、」


とても怯えている。

仁に対してか、“いつもの”行為が行われそうになったことに対してか。

完全に戦意喪失しており、向かって来る様子はなさそうだ。


「友達は選べよ、心を利用するような奴はクズだ。」


彼は何も言えなかった。

仁も返答は求めずに歩みを進める。

刀真は引き続き、彼の後を追った。


少し前まで使われていた工場跡。今では工事が中途半端に進められており、外観はまるで廃墟のようだ。

迷い無く仁は中へと入っていった。


「なんでこんなところに?」


更に後を追って中へと入る。

内観はもっと酷い。残った建物の柱がかなり古びており、今にも崩れそうだ。

それに──雨風に晒されていたせいか、錆びた臭いが嗅覚を刺激する。

工場として使われていた道具はほとんど残っていないか、かなり壊れたガラクタが転がっている程度。


こんな場所に用があるとすれば、余程の変わり者と言える。

刀真にはそう思えたが、目の前の光景で感想が変わった。


そこには刀を振る仁の姿があった。


ガラクタや古びた部品をかき集めて作られた、正直に言えば出来の悪い人形。

それを相手に剣術の修行を行っている。彼も刀真と同じだ。授業以外の時間を使って鍛錬していたのだ。


驚いた拍子に足元のガラクタに躓いて倒れる。その音に仁が気付いて振り向いた。


「お前──!」

「や、やあ!」


気まずいという空気を感じ取り、お互い次の言葉を話すまで少し時間が掛かった。


しかし意外だった。

不良のレッテルを張られた人間が、人目のないこんな場所で自主練習を行っている。

刀真の想像とは遥かに違うその姿に、不思議と笑えてきた。


沈黙を先に破ったのは刀真だった。


「自主練、ぼくも付き合っていいかな?」


仁は驚きながらも、ぎこちなく頷いた。


刀真は木刀を、仁は刀を手に取ってぶつけ合う。

野球で例えると、キャッチボール感覚の対決が繰り広げられていた。


「つけてきやがったァ!?」

「う、うん」


事情を説明したが、どうやら全く尾行に気付いていなかったらしい。


「マジかよ。」

「確かめたいことがあったんだ。」


園柳仁という男が“不良”と呼ばれる真相を。

彼の本音が知りたかった。

それが刀真の考える真実に繋がると思えたからだ。


「君は“誰かの為”に喧嘩していたんだね。」

「そんなんじゃねえよ。」


仁は感情任せに撃ち返す。

少し照れ臭そうな態度は刀真の気のせいではない。


「怪我はこの自主練のせいか。」

「今日の授業見てたろ? 俺の(けん)はクソだ。」


自虐的に言うが、刀真は否定できなかった。

先ほどから撃ち込まれる彼の一撃に力はない。振り方も、使い方も“デタラメ”そのもの。


“慣れていない”──違和感を言葉にするならこれが相応しいだろう。


「まるで自分と違う型を使ってる感じ。」

「──!」


刀真の言葉で動揺したのか手が滑る。

仁はその隙を突かれ吹っ飛ばされてしまった。


「大丈夫?」

「わかんのか?」


刀真は頷く。


「人の真似をしてるように感じるよ、君の(けん)じゃない。」

「そうか──。」


見抜かれた、とでも言いたそうな顔をみせる。

刀真の考えがどうやら正解のようだ。


「どうして?」

「お前だよ。」


仁はゆっくりと立ち上がって告げた。


「最終試験でお前の剣術を見た時、素直に凄えと思った! 煙間と戦った時もそうだ──自分との実力差が身に染みたんだ。」


歯を噛み締める思いだった。

黒霧でのスタートが同じはずなのに、刀真のスピードは全く違う。いくら頑張っても追いつけない。


「だから勝手にお前を目標にして剣術を変えたんだ! もっと強くなる為に。」


やたらこちらに当たりが強かったのはそのせいか、と刀真は納得できた。


「結局は上手くいかないけどよ。」

「無理に型を変える必要はないんじゃないかな。」

「今のままじゃ駄目なんだ! お前は刀が抜けないってのに──」


仁は気付いて言葉を止めた。

失言だったと後悔するが、刀真は笑った。


「気にしないで。」

「すまねえ、誰にでも言いたくないことの一つや二つある。」


自分も同じという表情を浮かべる。

刀真はクラスメイトから聞いた噂を覚えていた。


「例えば四階から突き落とした──ってやつ。」

「アァ──!?」


激しい動揺をみせるが、すぐに落ち着いた様子で仁は俯いた。


「──お前はどう思った?」

「事実なら君は黒霧にはいない。」


刀真の答えに笑って、考えた。

しばらくして彼は、“真実”を口にする。


「いや俺はあの日──この手で親友(ダチ)を突き落としたんだ。」


仁ははっきりとそう言った。

あれは去年の夏頃──。


白銀(しろがね)中学校に通う、園柳仁と与野継大吾(よのつぎだいご)は親友だった。

そして互いに侍を目指す宿敵(ライバル)だったのだ。

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