表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サムライ×KILL  作者: 45
【一】──黒霧学園──
31/39

【孤独】×FIRE 五

「また喧嘩か、仁?」


いつも通りの姿に大吾は笑いながらそう言った。


「だってよォ、あいつらまたイジメみたいなことやってんだ。」


中学三年生の夏、仁の喧嘩騒動は日常茶飯事だった。

相変わらずの行動に大吾は酷く呆れた様子をみせる。


「もうすぐ黒霧の試験だぜ? いい加減にしとけよ。」

「わかってるって、俺たちには夢があるからな。」


幼なじみの二人にはかつて交わした約束があった。


「“世界一の剣豪になる!!”」


世界一なのだから二人でなれる訳なんてない。そんなことは解っているが、それは紛れもなく“二人の夢”だった。


「一次試験は筆記らしいが、大丈夫かお前。」


大丈夫じゃない、と仁は首を横に振った。


「なんだよ。 しゃあねえ、俺が教えてやるか!」

「さすが親友(ダチ)だぜ! 恩に切る。」


当たり前だ、と返す大吾。

夢の為に彼らは二人揃っての黒霧学園入学を目指す。

だから互い力を合わせ、助け合うのだ。


今までもそうしてきた。

だから今度だって同じだと思っていた。


数日後──二人の道は分岐する。

一次試験通過と書かれた通知書を握り締めて、仁は大吾の家へと向かった。


「やったぞ大吾! 一次通ったぜ、お前が勉強教えてくれたおかげだ!」


心から喜び跳びはねる仁とは対照的に、大吾は微動だにしなかった。


「おい──大吾?」


仁が異変に気付く。大吾の口元が少しずつ歪んでいくのがわかった。


「俺は──落ちたよ。」

「え──?」


耳を疑う。いつもの冗談だと笑うことを待っていても、無駄だということを知った。


「お前に勉強を教えるのに集中し過ぎて、自分の方を怠ったわ〜。」


次は明るく振る舞っているが、声は震えている。


「悪いな! 俺の夢はここまでかぁ──」


とても楽しそうに笑う、笑い続ける。

そして──自制は崩壊した。


「ふざけんなァッ!!!」


仁の胸ぐらが強く引かれる。


「なんで、お前だけが受かって!! 力を貸した俺が落ちるんだ!?」


何も答えられなかった。

泣き崩れる友を前に、彼の心は前を向くことが出来なかったのだ。


数日後──いつも通り教室へと向かった仁は、大吾に刀を向けられた。


「何の真似だ大吾!」

親友(ダチ)に裏切られたんだッ、全部どうでも良くなってよ。」

「俺は裏切ってなんか──」


弁明は届かない。

突きつけられたのは刀ではなく、その現実だった。


「お前は俺のことを──俺の心を利用したんだろ!?」

「違う!!」


それでもまだ、手が届くとすれば──。

仁はその可能性を信じた。


「約束を守りたかったんだ! 俺だって落ちたくないから頑張って──」


言い終える前に大吾は悲しそうに笑い、泣いた。

可能性は無数の分岐点であり、結果とはならない。


「そうだ、お前はそういう奴だよ。 わかってた、わかっていたんだ。」


一歩、二歩と彼は後ろへ下がる。


「でも、認めたくないんだよ──。」


夏空を舞う爽やかな風。暑い日差しの眩しさに目を瞑って、大吾は教室のベランダから飛んだ。


その時、彼は──笑っていた。


すぐに手を取ろうと駆け寄ったが、その手は掴めなかった。

届かなかった。


その日、園柳仁は親友を絶望へと突き落とした。


仁は全てを話し終えて、目を開いた。

全身が震えている。あの日の光景を思い出すのはとても辛くて、苦しかった。


自分が今こうして普通でいることに苛立ちを感じることもある。


「大吾もわかってたんだ、俺があいつを蹴落とすなんてことしないって。」


大吾は幸いにも一命を取り留めた。しかし、全治一年の大怪我を負って、現在も入院生活を送っている。進学も一年先延ばしとなった。

仁は彼の見舞いに何度か足を運んでいたが、二人の間に会話はなかった。


些細なきっかけで崩れた友情は簡単には取り戻せなかった。


「俺を裏切っちまった、そう思ってるんだよ。」


その事実が申し訳なくて、辛くて仁を責めてしまった。彼は悪くないとわかっているのに。

仁は自分が否定したことは間違いじゃないと思っている。だが同時に後悔もしていた。その選択が友情を壊してしまったのかもしれない。


「罪滅ぼしってワケじゃねえが、今の俺に出来るのは二人の夢を叶えることだ。」

「夢の為により強く。」


刀真の言葉に仁は頷いた。

彼らの夢は終わった訳じゃない。そう信じて、黒霧学園へと進んだ。


「そうすりゃあ、あいつとまた親友(ダチ)になれっかなって。」


彼もまた刀真と同じだ。

約束があるから、強くなりたい。

そのように思えた。


「悪いな変な話しちまって。」

「いや、話してくれてありがとう。」


彼はまだ過去に迷っている。

それが今の仁の刀に表れていることを理解した刀真は、彼の力になりたいと考えた。


「強くなりたいと思うならその剣術はやめた方が良いよ。」

「何?」


仁が聞き返すと、刀真は真剣な表情をみせた。



「今から慣れない型を極めるより、自分らしく刀を振った方が良いと思うんだ。」


強くなる方法は人それぞれだ。彼には彼のやり方がある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ