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サムライ×KILL  作者: 45
【一】──黒霧学園──
29/39

【孤独】×FIRE 参

黒霧の入学試験はそのレベルで合格できるほど甘くはない。

だが仁の振る刃には力は疎か、侍魂すら感じないのだ。

煙間は彼を疑う他なかった。


「手なんか、抜くかァ!」


否定はするが、目を合わせようとはしない。

何か思うところがあるような反応をみせる。


煙間は察してため息を吐いた。


「お前、今日は見学でもしてろ。」


そう言って、仁との組み手に終止符を打った。

屈辱だ──出来損ないのレッテルを貼られたような気分で、腹が立つ。

仁は感情任せに模造刀を地面へと叩きつけた。


刀真には、校庭の端へと去って行く彼の後ろ姿がとても悲しそうに見えた。


「余所見しない!」


小突く動作で宇佐美の攻撃が頭に当たる。

少し痛かったがそれよりも仁だ。今日の彼は様子がおかしい。


「気になるんだ?」


宇佐美が問いかける。

刀真はそれに頷いた。


「入学試験の時、園柳くんも同じチームだったのを思い出したよ──でも今日の彼はその時の剣術と全く違うんだ。」

「やる気がない──奴が授業なんて出ないか。」


宇佐美は何か思い出したように手を叩いた。


「“不良”くんは喧嘩の怪我で本調子が出ないのかも。」

「それも少し疑問が残るんだよなあ。」


その時、宇佐美の口角が上がったことに刀真は気付かなかった。


「態度も素行も悪く、悪い噂が飛び交う上に喧嘩の傷だらけの園柳仁は不良じゃないってこと?」


悪意を精一杯込めた言い方。

刀真は首を横に振った。


「それはわからない──でも黒霧に入る人間が本当にそんな悪い人なのかな。」

「力があっても必ずは良い人とも限らないと思うけどな。」


それは納得できる。刀真にも根拠はないのだ。だが、何故だか仁がただの“不良”とは思えない何かを感じている。

それは上手く説明することができない。


「まあ、あいつが良いか悪いかは私にもわからないけどね。」


そう前置きをして、宇佐美は言葉を続けた。


「ああ見えても結構真面目なところあるよ。」


この一週間でのこと。嫌でも目立つような態度を取るせいか、宇佐美もよく彼の姿を見ていた。


朝は遅刻間際に現れることもあるが、遅刻は決してない。

座学の授業では眠そうにしているが、寝たことは一度もない。

登校するのは誰よりも遅いが、下校は誰よりも早い。


それが園柳仁という男の特徴だ。


「──それって、」

「まあそれが全てって訳じゃないけど、少なくとも“不良(わるいやつ)”がやることではないかもね。」


よく観察している、と感心した。

だがおかげで刀真はある可能性に気付く。

それを確かめる為には、園柳仁との接触が必要だ。


放課後になりその時は訪れる。

やはり仁は誰よりも早く教室を飛び出した。


少し時間を置いて刀真も教室を出る。


「斬っち──カラオケ行かない?」


陸の誘いを断り、彼の後を追って学園の外へと向かった。


少し町の方へと出ると、彼は人相の悪い者たちに囲まれていた。

人数はざっと数えて四、五人はいる。


「気に食わねえ(ツラ)だな。」


リーダー格らしき男の言葉に仁は目を背けていた。

らしくないと言えば、そう見える。


「なんだよチキンか?」

「こんな雑魚放って行こうぜ。」


興味を失ったのか、男たちが去ろうと歩き出した。


「あ──」


仲間の一人が足元の石に気付かずに躓く。

その拍子でリーダー格の男にぶつかった。


「痛えなァコラ!!」


男は怒りのままに胸ぐらを掴んで威嚇した。

相手は顔を庇うように手を掲げる。


「ヒッ──すみません!」


怯えた反応、素早い謝罪。

それはまるで、癖になっているかのように慣れた動きだ。

“いつもの”と言えばわかりやすいだろう。


「チッ──トロイ野郎だ!」


手を離すが男の怒りは治らない。

彼は自分の刀を抜くと、それを仲間の首元へと近付けた。


「“いつもの”いくかァ?」

「やめ──」


皮膚の斬れられる音が聞こえた。

流れる血が地面へと滴り、真っ赤に染め上げる。


刀真も男たちもその光景に目を大きく開いた。


園柳仁は、その手で男の突き出す刀を握っていた。


「なッ──!?」


激しい痛みに襲われて余裕のない表情を浮かべる仁。

咄嗟の行動だった。やはり素手で止めるべきではなかったと後悔するが、もう遅い。


「テメェ馬鹿じゃねえのか!」


男は焦る。深い傷をつける気はなかったが、この状況は予想外だ。


「刀をそんなことの為に使うなよ。」

「何!?」

「だから──(そいつ)を弱い者虐めみたいなことに使うなってんだッ!!」


仁は叫び、拳を突き出す。

男の頬の骨に強い衝撃──そのまま地面へと倒れ込んだ。


「こいつやりやがった!?」

「やっちまえ!」


襲いかかる仲間たちに仁は刀を抜かない。

己の拳だけで、彼は戦った。殴るその手はとても痛くて、仁は苦しい表情を浮かべていたことに刀真は気付いた。


男たちを全員倒すのに時間は大して掛からなかった。

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