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サムライ×KILL  作者: 45
【一】──黒霧学園──
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【道】×GROWTH 参

圧倒的な力の差を感じる。

煙間の初授業は黒霧の洗礼だったという訳だ。


目の前の光景を見れば、もう彼に対して油断できる者はいなかった。


「女ばかりに戦わせるな腰抜け野郎ども。」


安い挑発に乗る者もいない。

彼らの態度に煙間は痺れを切らした。


「来ないならこっちから行くぞ。」


一瞬にして、生徒たちの元へと移動する。


「うわっ!?」


一人、二人──次々と倒されていく。

逃げ惑う生徒たち中から一人逆方向に飛び出すのは、出席番号三番──園柳仁。

先程、刀真とのやり取りがあったせいか、彼の機嫌は悪かった。


模造刀を捨てて、彼は拳を放った。

軽々と受け止められたがもう一発──放つ。

それも当たらない。両手を力だけで封じられて身動きが取れなくなる。


模造刀(そいつ)は使えよ園柳。」

「クソったれ──!」


突き出された膝が鳩尾に入っていた。

激痛が襲い、言葉が出せず仁はその場に倒れた。


煙間の視線に刀真が映る。


「──お前も来いよ、“斬咲”。」


言われて構える。

すぐには飛び込まずに、僅かでも隙があれば──刀真は観察するが、そんなものは見つからなかった。


ゆっくりと、確実に間合いを詰めて懐にに飛び込む。

力強く振り斬ろうとするが、動かない。その腕をもう掴まれていた。


「遅いな。」

「どうでしょうか?」


間髪入れず膝を撃ち込む。予想外の動きだったのか、煙間はそれを両手で防いだ。

刀真はその隙を逃さない。


がら空きとなった頭上から思い切り振り下ろす。


「──!?」


その一撃は当たらなかった。

今度も防がれている。

そして動揺のせいで判断が遅れ、煙間の蹴りを受けてしまった。


「斬咲剣義の息子って割には大したことないな。」

「なんだって?」

「血筋が良いからといって思い上がってるんじゃないか?」


過去の自身を思い返してみれば、否定はできない。


「いいか斬咲──この一年三組の中でお前は最も“弱い”。」

「どういう意味ですか?」

「刀が抜けない奴は弱いって言ってるんだ。」


淡々と、当たり前のようにこの男は刀真の弱みを口にした。

別に隠すつもりはない。いずれはわかってしまうことだ。

それよりも、そんな自分を否定されたことの方が苦しかった。


「刀が抜けない──?」


宇佐美が不思議そうに呟く。

彼女だけではなく、他の生徒も同じような反応をしている。

侍を目指している者が刀が抜けないなんて、嘘のような話だ。信じられないのも無理はない。


だが事実だ。

刀真は何も言い返せなかった。


「こんな模造刀やお前の木刀で、カゲロウが倒せるか?」


不可能だ──。

カゲロウの倒すには刀の力を解放しなければならない。


「力が使えないお前が最も弱いってのはそういうことだ、それとも──」


煙間の視線が黒椿に移る。


「力を使い熟すか。」

「──!」


彼の言葉の意味に気付く。

試験で刀真は黒椿の力を引き出して、木刀に纏わせた。

あの時は、光子郎を救いたいという気持ちで無我夢中に力を使った。


もしあれが使い熟せれば──“刀が抜けない侍”だとしても、強くなれる。


刀真はゆっくりと立ち上がった。


もう一度同じことが出来るかどうか、それはわからない。

ただ、強くなる為に彼はここに来た。

やらなくては前には進めない。


「来るか?」


煙間の問いかけに頷く。

刀真は再び構える──精神を集中するのだ。

あの時と同じように。


鼓動が速くなるのを感じた。


「──!!」


歪な感覚に包まれていくのがわかる。

それは、黒椿が目を覚ましたことを意味していた。


「我の力を使い熟すか──」


あの声だ──。


精神空間とでもいうのか、何も存在しない真っ暗闇の世界に刀真はいた。


そしてあの声が聞こえる。


「甘くみられたものだな──」


姿の見えない声の主が嘲笑う。


「いつまでもお前の呪いが怖いと思うな。」

「一度力を使ったぐらいで主人にでもなったつもりか──?」


背中が熱くて、冷たい。


「笑わせるな、今度こそお前を──!」


気は抜いていない。

それでも少しずつ意識が薄れていくようだ。

視界が黒く──染まる。


「斬咲?」


現実世界──俯いたまま動かない刀真に違和感を覚える煙間。

肩に触れようとしたその時、刀真が動きだす。


「──!」


突然の攻撃を間一髪のところでかわす。

刀真は一歩も引かず、間合いを詰めた。


黒いオーラに包まれた彼は無表情に模造刀を振る。


「駄目か──!」


心が飲まれている。煙間はそう思った。

力を引き出せていても、今の彼は斬咲刀真の意思で動いていない。

粗く振られた攻撃を避けて、左足で蹴り上げる。反動で刀真の模造刀が砕けた。


「目を覚ませ斬咲! 力使う度にそうなんのかお前は。」


煙間の声は届いていない。

無表情のまま瞳を紅く光らせて、自分の木刀を引き抜く。


「恐るな──自分の侍魂(こころ)をしっかり持て!」

「こころ──?」


激しい頭痛に襲われた刀真は頭を抱えた。

まだ彼の意識は完全に失われていない。

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