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サムライ×KILL  作者: 45
【一】──黒霧学園──
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【道】×GROWTH 弐

「火事じゃねえ、俺の“煙”だ。」


男は堂々と教壇に立っていた。

煙草を五本同時に咥えて、彼は大量の煙を一度に吐いた。


「──って煙たいんだよッ!!」


一年三組の声が揃う。


「なんだお前らもう仲良いな。」


男は感心した表情を浮かべて、煙草をもう一口吸った。


「うめえ。」

「消せッ!」


再び揃う声に耳を塞ぐと、男は嫌そうに手持ちの携帯灰皿を取り出した。


「睡眠中に取れなかった分のニコチンを溜めているというのに。」


生徒たちの呆れ顔に目もくれず、チョークを手にする。

黒板に白い文字で名前を書き終え、彼はもう一度生徒たちの方へと振り向いた。


「今日からお前らの担任を勤める──煙間和磨(えんまかずま)だ。」


誰もが耳を疑った。

煙間の気怠そうな雰囲気は、侍とも教師とも思えない。

刀は装備しているようだが、それを孫の手のように扱って背中を掻いている。

とても信じられなかった。


「教師のくせに学校で煙草吸うなよ。」

「教師だって煙草吸って良いだろう、ストレス溜まるんだよこの仕事。」

「学校で吸うなって言ってんだ。」

「あと俺ガキ嫌い。」

「やめちまえ!」


煙間の態度は、先生と呼ぶには到底相応しくないものだった。

彼は気にも留めず生徒名簿を開き、一覧を確認した。


「ふむ──」

「先生! 初顔合わせだし自己紹介とかしちゃいますかぁ?」


返答せずに生徒名簿を閉じて、彼らの顔を見渡す。


「いや興味ねえ。」


冷たく言い放って続けた。


「お前ら全員表出ろ。」


淡々と告げるその言葉の意味がわからないまま、刀真たちは彼の言う通り校庭へと足を運ぶ。


黒霧学園の校庭は訓練用にとても広い。

通常タイプに加え、実戦を想定した足場の悪い岩場や水辺の訓練場(フィールド)も存在する。


通常訓練場に集められた刀真たちは、煙間と向き合う形で並べられた。


「表に出ろって──ただの剣術の授業ってことですか。」

「まあ、侍の学校だしな。」


そう言うと、煙間は大量の模造刀が入った箱を指差して、一人一本取るように伝えた。


「全員持ったか?」


刀真たちは頷く。


「んじゃ記念すべき最初の授業だ──全員まとめてかかってこい。」

「はぁ?」


刀も構えずに煙間は合図をする。

状況が把握出来ず、生徒たちは動けなかった。


「お前らの今の実力を試す、わかったらさっさとかかってこいよ。」

「いや試すって──先生一人じゃないですか。」


そうだと煙間は相槌を打つ。


「だから、俺対お前ら三組全員だ。」

「いやいやいや──いくら先生でも二十人もいるこのクラス全員じゃあ勝負になんないすっよ。」


その言葉に他の生徒たちも同調し、声を荒くする。

煙間は頭を抱えた。


「あのなァ──お前らは新入生の中でも“落ちこぼれ”! 束になっても俺には勝てねえから安心しろ。」


彼の言葉はその場の空気を変える。

そんなことを言われて、我慢できるほど彼らは大人じゃなかった。


「上等だぜ。」


先陣を切って一人、駆け出す。

一年三組、出席番号一番──嵐山陸(あらしやまりく)は、力強く刀を振った。

煙間は表情一つ変えずに顎を引く。

側から見れば全く動作がないように見えるその動きで、陸の攻撃を避けた。


煙間は素早く切り返す陸の腕を掴んで、彼の体を投げ飛ばした。


「次!」


二番手を催促する。

それに応えて今度は三人、飛び出す。


「だらしない奴。」


出席番号四番の織田那巳(おりたたみ)を中心に、左右を取り囲んで二人が続いた。


出席番号七番の此美羽甘実(このみわあまみ)と、出席番号十番── 星羅未来(せいらみらくる)だ。


「何の為に人数がいると思ってるんだよ。」


那巳の合図で三人は一斉に斬りかかる。

その全てを煙間は素早い動きでかわした。


「当たらない──!」


がむしゃらに振り回す。

手を滑らせた甘実の刀が那巳の頬を掠めた。


「──ッ!?」


模造刀で良かった。

本物の刀なら肌が斬られていたに違いない。


「危ないな!」

「ごめぇん!」

「めんどうだしぃ刀のパワーぶち上げぇ──みたいな?」


未来は刀の柄に触れて引き抜く。しかし全く動かなかった。

彼女の手は、いつの間にか背後に現れた煙間に掴まれていた。


「誰が刀を使って良いと言った?」

「せんせぇ怖──」


投げ飛ばされた未来の体は宙を舞い、那巳と甘実の元へと向かう。

二人は避けられず、頭をぶつけ合ってその場に倒れた。


「すごい──!」


無駄のない動きだ。

刀真は感動していた。同時に考える。

彼を倒すのにどのように立ち回ればいいか、わからなかった。


「次はどいつだ?」


尋ねる彼の背中を捉えて宇佐美が刀を振り下ろす──が、それも片手で簡単に防がれてしまう。

彼は全く攻撃の瞬間を見ていなかった。


「不意打ちのつもりか? 気配が消し切れてないぞ月島。」

「失礼しました、先生。」


背負い投げの動き。

剣術に自信のある宇佐美ですら、いとも簡単に敗北した。

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