表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サムライ×KILL  作者: 45
【一】──黒霧学園──
26/39

【道】×GROWTH 四

「何の為に黒霧(ここ)に来たか思い返せ、お前は誰だ?」

「無駄だ、此奴はもうすぐ──」


頭の中で黒椿が語りかける。

その声は刀真にしか聞こえていない。

煙間の言葉も脳へと入ってきて、混じり合うように刀真の脳を刺激した。


「ぐあぁ──!!」

「斬咲!」


刀真は目の前の木刀を見る。

今、これを振るのは誰だ──この力を使うのは誰だ──。

何の為に戦うのか。何の為に強くなりたいと願ったのか。

その答えを導き出す為にここに来たはずだ。


「何も考えるな、我に心を委ねればいい──」

「黙れ。」


何もないその世界で彼の声だけが響く。


「僕の心は僕のものだと言ったはずだ。」

「それでこの先強くなれるのか──?」

「強くならなきゃいけないんだ。」


刀真は既に解っていた。

いつまでも、“こんなところ”にいてはいけない。

それでは何も変わらない。


「結局は我の力に頼るのだろう? ならば──」

「黒椿、」


言葉を遮り、はっきりとその名を呼んだ。


「僕はいつか君の呪いも超える。 その為には君の力が必要なんだ。」

「随分と勝手な言い分だな──」

「ああ──僕はこう見えて、あまり利口じゃないんだ。」


いつも恐れていた声と世界だが、不思議な気持ちだ。

刀真は黒椿に対して笑顔で話していた。


「──少しの退屈凌ぎだ、そのつもりに思え──」


その言葉を最後に声は聞こえなくなった。

そして、世界の暗闇に光が生まれる。

刀真にはそれが、新たなに続く道のように見えた。


気が付いた時には、電源が落ちたように頭痛が止んでいた。

彼が大人しくなったことをきっかけに、静寂がその場を包み込む。


「斬咲?」


煙間の問いかけに答えず、刀真は木刀を構えた。

黒いオーラを纏って、再び突進する。


「──!?」


先ほどとは比べ物にならないスピード、そして気迫──。

強い力が煙間へと向かってくる。


使うつもりはなかった刀を気が付けば“抜かされていた”。

判断を誤れば、煙間はその力に斬られていただろう。


「お前は──誰だ?」


再び問いかける。

その言葉に彼の口角は上がった。


「出席番号六番──斬咲刀真だ!!」


刀と木刀がぶつかり合った衝撃が爆風を巻き起こす。重心を意識しなければ、飛ばされてしまうほどに強い力だった。


間合いを取った煙間は、刀真の雰囲気の変化に気付いた。


「どうやら使い熟したってことでいいか?」


その表情は満足気に笑っているかのように見える。刀真は首を横に振った。


「刀はまだ抜けませんので。」

「本気じゃないって言いたいのか?」


今度は頷く。煙間は可笑しくなった。

自分の予想以上に、彼は強い侍になるかもしれない。そんな希望を抱いてみても良いかと思えた。


「それでいい、斬咲。」


久しぶりに心を躍らせる。

彼にとってこんな気分になるのは、そうだ。

“斬咲剣義”以来かもしれない。


煙間は刀を真っ直ぐ掲げて、攻撃の態勢に入る。

(ケム)(グサ)”の能力で煙を見に纏い、解き放った。


「全力で来い──!!」


刀真の準備は既にできていた。あとは──刀を振るだけだ。


木刀のオーラが激しさを増して、螺旋を描くようにその身を包み込む。それを力の限り振り下ろした。


「“煙魔殺露儀(えんまこおろぎ)”!!」

「剣戯×(ごう)──“黒刃羅(くろばら)”!!」


技と技がぶつかり合って弾ける。

お互いの力は互角。そう思えたが、それは過信だった。


煙間の煙が隙間を通り、刀真の身を捉える。

無数の刃に斬られたような痛み。ただの煙ではないその刀に、刀真の技は破られた。


「あ、やっちまった!」


倒れた彼の元へ駆け寄る。幸いなことに大事には至っていなかった。


「悪い斬咲、つい本気出してしまった。」

「いえ、大丈夫です。」


刀真は敗けた。

だが──気分が晴れているようなこの感覚は嘘ではない。そう思えたら、自然と笑顔になれた。


「参りました!」

「何笑ってんだか。」


煙間が煙草に火をつけた時に、三組の生徒たちが駆け寄って来た。


「凄い戦いだったぜぇ二人とも!」

「煙間先生強過ぎ!」

「アハハハ! でも斬咲くんもスゴいスゴーい!」

「わかるぅ! 超エモい。」


いつの間にか、周りを囲むように集まるクラスメイト達に少しだけ困惑したが、刀真にはそれも可笑しく思えた。


いつか、侍として認めてもらえるように。

彼の学園生活はこうして幕を開けた。




××××××××××××××××××××××××××××××××




「我を超えるか──」


その声は一人、呟く。

今は刀真にも届いていない。その世界にただ一人だけ。


「お前は必ず我の力を求めて、再び心を委ねる時が来る──」


それは、そう遠くない未来。

そう感じていた。


「それまで退屈させないでくれよ──斬咲刀真」


声もまた、刀真と同じように笑った。

【道】×GROWTH──終──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ