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サムライ×KILL  作者: 45
【序】──侍と侍魂──
21/39

【力】×PARTING 七

「はい笑って!」


桜舞い散る春空の下、鋏子の手によってデジカメのシャッターが切られる。

我が子の晴れ姿と称して撮られた枚数は数十枚に及ぼうとしていた。


「それじゃあもう一枚!」

「もういいよ、何枚撮るのさ。」


刀真がレンズを手で覆う。

いい加減に鬱陶しいと思っていた。


「まだよ、今度は一緒に撮ってもらいましょう。」

「さっきも一緒に撮ったじゃないか! 僕まだ用があるんだ。」

「あ──待ってよ!」


鋏子の静止を無視して刀真は校舎内へと向かった。

卒業式はとうに終わり、それぞれが別れを惜しむ中、彼にもまた別れの言葉を告げようと思う者たちがいた。


「斬咲ごめん! あの時はさすがにちょっと悪く思ってた。」

「でもやっぱりそんなの関係ないって気付いたの。」

「私──斬咲くんのこと!」


同級生たちが刀真を取り囲み、各々の気持ちを素直に打ち明ける。

彼らは“斬った”とまでしか聞いていないが、想いが変わったのは事実だろうと刀真は受け止めた。


「ありがとう。」


それだけ告げてその場を後にする。

まだ“一人”、話したい人がいるからだ。

刀真は教室へと足を運んだ。


扉を開くと、いつもの席に彼はいた。


「矢井馬くん。」


刀真が名を呼ぶと、彼は振り返ってこちらを見た。


「斬咲。」


しばらくお互いに沈黙を貫く。

先に痺れを切らしたのは光子郎だった。


「元気そうだな。」


刀真には今まで見せてこなかった、優しい笑顔がそこにはあった。


「君こそ──どうして黒霧の入学を断ったんだ?」


確信に迫る刀真に対して、光子郎は変わらない態度をみせる。


「俺はお前をずっと超えたいと思い、追いかけてきた。」


席を立ち、窓際に移動する。

開いた窓から吹き込む春風が少し冷たく感じた。


「その為に己を鍛えてきた──だがお前との実力差は広がるばかりに思えた。」

「そんなことは──」


言いかけてやめた。

今は彼の話を聞こうと、刀真は口を閉じる。


「あの日もそうだ、試験でのお前の活躍を見て俺は思ってしまったんだ──勝てないってな。」


悔しさを思い出して光子郎は拳を強く握った。


「だからカゲロウを倒せばお前より強いことを証明できると思った──結局はお前に助けを求めてしまったけどな。」


悔しいが、後悔はない。光子郎はそう話す。

自分でも不思議なくらい彼は満足気の表情を浮かべていた。


「そりゃ黒霧の誘いは嬉しいし行けば強くなれるだろうよ、でもそれじゃお前を超えることはできない。」

「侍は──諦めるの?」


刀真が聞くと、光子郎はポケットから紙を取り出した。

そこには帝光(ていこう)学園──合否通知書と書かれている。

結果は合格だ。


「実は滑り止めって訳じゃないんだがこっちも受けていてな──俺は帝光に行く!」


帝光学園は黒霧学園に並ぶ侍の名門校だ。

光子郎の実力なら入学もそう難しくなかった。


「そんで強くなっていつかお前を超える。 追いかけるだけじゃ見えなかった答えがわかる気がするんだ。」


迷いがないことは言葉の節から伝った。

刀真は何も言わず頷いた。


「斬咲、俺たちは別々の道をいく。 俺はお前より強くなる! だからお前も呪いなんかに負けるな。」


かつて光子郎はこの教室で刀真に言い放った。

“お前は侍になんてなれやしない”と──。

そう言わないと、勝てる気がしなかったからだ。

本当は謝りたかった。だが彼は謝罪の言葉は口にしなかった。いつか対等の好敵手(ライバル)となるまではその気持ちを閉ざすことに決めたのだ。


刀真にもそれはわかっていた。


「僕も強くなるよ、いつかお互いが強くなったらまた戦おう。」


その時は──。

二人の言葉が重なり合う。


「僕が(俺が)勝つ!!」


二人は別々の道を行く。

進むべき道は違っても、その約束を果たす為に強くなろうと誓うのだった。




××××××××××××××××××××××××××××××××




男はため息を吐いた。

大量の資料──黒霧学園の新入生名簿の確認に時間がかかり、苛立ちを覚える。


「これ全部終わるのにあとどれくらいかかるんですかね?」


隣の席では若い女が同じようにため息を吐いていた。


「知るか。」


男は冷たく答えると、手元の煙草を一口吸って煙を吐いた。

吐かれた煙が空気を辿って女に降りかかる。

女はそれに対しても苛立ちを覚えた。


「いや副流煙! 校内禁煙って忘れたんですか?」

「うるせえな、良いじゃんか一服ぐらい許せよ。」


文句を言いつつ男は煙草を灰皿に押し付ける。

二口ぐらいしか吸っておらず、名残惜しいと感じていた。

女はそれを見て奇妙に笑った。


「とか言いつつすぐ消してくれるところは素敵!」

「黙れ、思ってもないことを。」


彼の苛立ちが増すのは中途半端なニコチン摂取のせいじゃない。

目の前の生徒名簿に書かれた内容のせいだ。


「ああ彼ね、学園長も何でこんな子の入学を許可したのかしら。」

「俺が知るか、あの人の考えはわからんよ。」


そう言うと、煙草を一本取り出して火をつけた。


「いやだから校内禁煙──!」

「うるせえな、それよりこいつ。」


名簿に書かれた名前に目が止まる。

“斬咲”その名字には聞き覚えがあった。


「斬咲剣義の息子か──。」


男は煙草を一口吸って煙を吐いた。


「どんな逸材か見ものだな。」


もう一口吸って、またすぐに消すことで男の苛立ちは更に増した。

【力】×PARTING──終──


序章・完

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