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サムライ×KILL  作者: 45
【序】──侍と侍魂──
22/39

間章──書き人は鼻唄を口ずさむ──

“「お前は勇者のくせに剣すらろくに扱えん愚か者よ。」

「うるさい──剣など無くともお前を倒してみせる!」


アルスは走り出し、ジャンプして、高く高く跳んだ。

そして一気に突っ込んで、自慢のパンチでドカッと殴った。


「ぎゃあ!!」


魔王は叫んだ。

アルスは着地してガッツポーズを決める。


「やったぜ!」


こうして勇者アルスの活躍により、世界に平和が訪れた。


めでたしめでたし。”



「──これは酷い。」


阿久津は頭を悩ませていた。

もう三時間ほど、自室のパソコンのモニターと睨めっこを続けている。

それだけならまだなんて事はないが、画面に映し出される“吐き気を催す文章”が、余計に彼を苦しめていた。


「没!」


マウスを動かして、ポイントを合わせる。

タイトル『勇者と剣』は完全に消去された。


「なんてことだ! まさか小説を書くことがこんなにも難しいだなんて。」


手元に置いてあった『孤独』を手に取り、ページをめくる。

同じところを何度も読み返してみる。


「ここの表現はこうであれで──」


何度も確認しては、書き進める。

しかし、思った通りの文章が書けずに消去。永遠とこの繰り返しである。


阿久津は頭を悩ませていた。

きっかけとなったのはつい先日のこと。

彼が教師を勤めている、から紅第三中学校の卒業式直前まで遡る。


「入学が決まったんですか!?」


その知らせを阿久津が聞いたのは、事件に巻き込まれていた刀真が、退院した直後のことだった。


「はい! 色々ありましたがなんとか。」


病み上がりにも関わらず元気に答える姿は、先日の彼とは別人のように思える。


「とにかく良かった、おめでとうございます!」


阿久津は自分のことのように嬉しかった。

教え子の成長というものは、教師にとって一つのゴールのようなものである。


「そうだ! せっかくですから何かお祝いの品でも送りましょう。」


帰宅の道のりで彼は考えた。

どんな物なら喜んでもらえるか。

彼の好きな物は?これまでの刀真との記憶を辿ってみるが、阿久津は彼のことをよく知らなかった。

簡単には思いつけそうにない。


「困りましたねえ。」


自宅に入った彼の目に一冊の本が飛び込んだ。

それは最近の愛読書となっている書師走筆彦の二作目、『衝撃』である。


「本──小説?」


彼にはまさに“衝撃”であった。

とても良い案を閃いたと、感動で心を震わせる。

そうと決まれば、早速準備をしなければならない。

阿久津は急いでパソコンの電源を入れた。


「待っていてください斬咲くん、私の超大作をあなたに贈ります!」


それから数日が経つも未だに未完成。

卒業式にも間に合わず、それでも阿久津は書き続けていた。

刀真を祝いたいという気持ちだけを糧にして、彼は書き続けていた。


「漫画にするべきでしたか。」


無論、絵なんて描ける訳がない。

名のある作家達がホテルに缶詰などと聞くが、少しだけその気持ちがわかった気がした。


手が止まってから数十分。

阿久津は『衝撃』を手に取った。


「続き──どこまで読んだんでしょうか?」


またしおりを挟んでいなかった。

適当にページをめくっていると、ある文章に目を惹かれる。


“八木は驚いた。


良子の右手の薬指には、八木が半ば無理矢理渡したプレゼントが付けられている。


「あれはガチャガチャの景品だぞ?」


安っぽいとか、そういった問題ではない。

大の大人の贈り物が玩具の指輪である。


良子はそれをしっかりと、しかも嬉しそうに、薬指にはめているではないか。


「物などどうでもいいのか?」


大切なのは相手を想う気持ち。

八木は以前、良子に言われた言葉を思い出していた。


気持ちがあれば贈り物の中身など関係ない。

それは八木にとって正しく衝撃だった。”



「相手を想う気持ちがあれば、」


阿久津はその通りだと思った。

初めから文才のない素人が出来の良い小説など書ける訳がない。

だが、刀真に対しての気持ちは嘘ではないのだ。


「ありのまま書きましょう。」


阿久津は再び、パソコンと向かい合った。

キーボードを打ち込みタイトルが入力される。


『侍と刀』


“──魔王の技が与七にクリティカルヒットする。

めちゃくちゃ痛かった。


「ぐわっ。」


与七は膝をついた。


「ぐわははは! これで終わりだ。」


その時、与七の刀が光り輝いた。


「何ィ!?」

「これが拙者の本当の力だ。」


想いの力が与七に刀を引き抜く力を与えた。


「そんな馬鹿なァァ!!」

「とどめだ──!!」


超必殺のサムライインパクトレボリューションを放つ。

ドカーン!

魔王を倒した。


「やったぜ!」


こうして世界に平和が訪れた。”


「これは酷い。」


阿久津は頭を悩ませた。

祝いの品を渡せる日はどうやら遠いようだ。

──終──

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