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サムライ×KILL  作者: 45
【序】──侍と侍魂──
19/39

【力】×PARTING 五

刀真が纏っていた黒いオーラが木刀へと集まっていく。

黒椿から溢れ出る力が吸収され、彼の元へと流れる。オーラは目に見えてその大きさを増した。


「貴様、我の力を──!?」

「黒椿、あいつを倒す方法ならもう一つあるんだ。」


瞳は真っ直ぐカゲロウの方を見つめたままだ。

でもそれはまるで、“声の主”をしっかりと捉えているように、刀真は口にした。


「お前こそ僕に──力を貸せ!」


力を全開に──。

木刀を鞘に納めるように、持ち直す。

刀真は再び目を閉じた。


カゲロウが唸り声と共に刀真へと襲いかかる。

無数の腕が一斉に伸びて、空を斬る速度で近づいても刀真は目を開けない。


「避けて──!!」


痛みを忘れて叫ぶ彼女の声も遮断する。

避ける必要はない。

目前まで迫ったカゲロウの腕の感覚が伝わり、刀真は柄を握るその手に力を込めた。


「剣戯×居合──“黒咲(クロサキ)”」


彼が呟いたその瞬間には既に、カゲロウの肉体が細切れへと変貌していた。


振る動き、音、全てが見えず聞こえず。

だが確実にカゲロウへと技を放つ。


擬似カゲロウに放ったものと似て非なる一撃が、その戦いに終止符を打った。


「木刀でカゲロウを──?」


全て見ていたはずの時田には、何が起こったか理解できない。


「いやあれはまさか、あの力は──。」


学園長にとっても誤算だった。

彼の持つ刀の力、黒椿のもつ力を引き出す侍魂──それがカゲロウを討ち取ったのだ。


消滅していくカゲロウは断末魔の叫びを上げて、儚く散った。

解放された光子郎が地面へと落下する。

気を失っているが、息はしている。


刀真は安堵の表情を浮かべると、彼も意識を失いその場に倒れた。

黒いオーラが黒椿の元へ還り消えていく。


戦いは終わった。


数分後──ようやく駆けつけた国家組織KILLの部隊によって、救助活動が行われた。


「負傷者は少年二名──」

「“神薙(かんなぎ)隊長”が重傷を負っています!」


男は部下からの報告を受けて、彼女の元へと駆け寄った。


「何を考えているの?」

「どうしたら君へ想いを伝えられるか。」

「ふざけんな、一歩間違えたら取り返しがつかないことになっていたのよ。」


遅過ぎた男たちに怒りの矛先を向ける。


「本当にすまないと思っている。 無事で良かったよナギちゃん。」


ナギ──本名、神薙と呼ばれた彼女は、医療班によって応急処置を受けていた。

興奮状態だったからなのか、先ほどは痛みも堪えられたが、今は気を抜くと倒れそうである。


「でも凄いよね、あのレベルのカゲロウ一人で倒しちゃうんだもん。」

「私じゃないわ。」


ナギの言葉に男は首を傾げる。


「え、じゃあ誰が──?」


ナギは刀真の方に目線を向けた。


これから二人は都内の病院へと運ばれていく。

しばらく安静にしなければ目は覚さないだろう。


愛浦(あいうら) 、治療が終わったら隊長格を召集しましょう。」

「まさか大々的な逆プロポーズ!?」


笑顔になる愛浦の頬をナギは力強く引っ張った。


「全員に話しておきたいことがある。」


街中にカゲロウが現れる、なんてことはそこまで珍しいことではない。

今回の個体は能力が高かった。

死亡者もおらず、民間人への被害も最低限には抑えられた方である。


ただ一つ彼女が気掛かりだったのは、斬咲刀真の事ではない。




××××××××××××××××××××××××××××××××




彼らを乗せた車が赤信号に捕まっていた。


「それで──学園にお戻りなさいますか?」


時田が傷の手当てをしながら尋ねる。


「いや、今日はもう良いだろう。」


窓の外に目を向けて、彼は微笑んだ。

面白いものが見たかったことは嘘ではないが、これは“嬉しい誤算”である。


「思わぬ拾い物だ。」


信号が青へと変わり、進んでいく。




××××××××××××××××××××××××××××××××




見知らぬ天井が目についた。

刀真は自分がいつ眠ってしまったのか、記憶が少し曖昧だった。

まだ頭が回っていない。

起き上がり、周りを見ると、どうやら病室にいることがわかる。


「そうだ僕は──」


カゲロウと戦いの後、倒れてしまったことを思い出す。

治療は既に済んでいたのか、体に痛みはあまりない。

点滴が繋がれているようだが、一体どれだけ眠っていたのかわからなかった。


「あ──矢井馬くんは?」


状況を思い出す。

光子郎も同じ病院に運ばれているのか?彼は無事なのか?色々と確認しなければならない事が多かった。


「一先ずナースコールか。」


受話器に手を伸ばした時、病室の扉が開かれた。


「刀真──!!?」


鋏子が彼の名を呼んで飛びついた。

彼の体を抱きしめる力が普段の何倍も強く感じる。


「痛い──痛いって母さん!」

「あらごめん──じゃなくって!」


鋏子は泣いていた。

その前も泣いていたのだろう、目が既に腫れており、鼻水も垂れている。

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