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サムライ×KILL  作者: 45
【序】──侍と侍魂──
17/39

【力】×PARTING 参

刀真が光子郎を捜し始めて、三十分が経とうとしていた。

町の裏通り、夜のお店が立ち並ぶその場所にも光子郎の姿はなかった。


「あら、可愛い坊や。」


妖艶な雰囲気の女性が刀真に声をかける。


「でも坊やが来るにはまだ早いところよ。」

「すみません、人を捜してるんです、」

「ここでは誰もが何かを探してるわ、自分自身もね。」


どういう意味か聞く前に、女性は刀真の唇に人差し指を当てた。


「答えは自分で見つけるものよ、坊や。」


何が言いたいのか理解できなかったが、光子郎の居場所を知っている訳ではなさそうだ。

刀真は女性に一礼して、裏通りの奥地へと向かった。


奥地に進むにつれて、辺りの雰囲気が変わっていくのが分かる。

派手な化粧に薄着の若い女性たち、素行の悪いスーツの男。

子供が来るには危険が多そうなその場所を刀真は一刻も早く抜け出したかった。


人目に付きづらいこういった場所では、事件も多いとニュースなどで聞いたことがある。

それにしても、その日の裏通りはやけに騒がしかった。

夜ならば店も空いて賑わっている。騒がしいのも納得できるが、今は昼間である。

周りを見渡しても様子が変だとわかった。


「カゲロウが出たぞー!!」


近くで男が叫ぶ。

振り向いたその時──建物が一つ崩壊した。


「うわあああ!!?」

「助けてぇ!!」

「逃げろォ──!!」


人々が一斉に走り出す。

体格の大きなカゲロウが唸り声を上げて、暴れているのが見えた。


「こんな時に──!?」


カゲロウが伸ばした腕が裏通りを襲う。

次々と崩壊していく建物、大地は様はまさに災害そのものだ。


「みんな──さっさと避難しなさい!」


声の主が人波を逆流してカゲロウの元へと跳び立つ。

袖を(なび)かせて中に仕込まれた刀を手に取り、右から斬り裂いた。


カゲロウは悲鳴を上げてその場に倒れ込む。


「さっきのお姉さん!?」

「坊や!? 何してるのさっさと逃げなさい!」


カゲロウから目を離さないまま、避難経路を指差した。


「もうすぐ“KILL”の奴らがやって来る、だから安心して逃げなさい。」

「KILLが──?」


国家組織がやって来る。

安心した刀真だが、何かに気付いた反応をみせた。


「お姉さんは?」

「あたしはこう見えて結構強いから。」


カゲロウが再び立ち上がったのを確認する。

周りに人がいては戦闘の邪魔だった。


「早く逃げなさい!」


もう片方の袖を振り、両手で刀を構える。

気付いたカゲロウが腕を伸ばすと同時に駆け出して、それを弾く。

素早い乱舞でカゲロウを追い詰めていった。


「凄い──。」


只者ではない腕前に思っていた言葉が口から出る。

だが、今はそれどころではないと理解した。


「僕も逃げよう。」


振り向いたその時、刀真は見覚えのある顔に気付いた。

黒霧学園の学園長と、秘書の時田だ。


「学園長っ、時田さん!」


慌てて二人の元へ駆け寄る。

頭部に出血が見られ、切り傷も複数箇所に確認できる。

だが幸い重傷ではないようだった。


「君は確かうちの──」


刀真に気付いた学園長が乱れた息で言葉にする。


「どうしてここに?」

「すまない。」


痛むのか、学園長は頭を抑えていた。


「君の話を聞いてしまってね、私も君の友人を捜そうと思ったのだが──まさかカゲロウに遭遇するとは。」

「私が付いていながら申し訳ございません。」


時田の口からは刺々しい言葉は出てこなかった。

彼女も軽傷だが意識が朦朧としている様子だ。


「それよりカゲロウを見たまえ。」


彼の目線の先にはカゲロウの腕が映っていた。


「奴は先ほどから“片腕”しか使っていない、違和感があるとは思えんかね?」


確かにそうだ。

伸ばす腕は全て右手だったことに刀真は気付く。

左手に注目すると、何かを捕らえている様子だった。


「微かに動いている、生き物か?」

「人──?」


眼を凝らしてよく見てみる。

刀真の心に衝撃が走った。

カゲロウに捕らえられているのは間違いなく光子郎だったのだ。


「いくわよカゲロウ!」

「待ってください! 人が──カゲロウの手に矢井馬くんが!」


刀真の言葉に一瞬動きが鈍る。

カゲロウはその隙を逃さなず、拳を素早く突き出して叩き込んだ。


「──ッ!?」


痛覚を感じるより先に体が宙を舞い、彼女は物凄いスピードで建物を突き抜け、瓦礫へと叩きつけられた。


「お姉さん!!」


砂埃が薄まり彼女の姿を確認できた。

意識はある──だが重傷だ。


「う──ゴホッ!」


吐血を繰り返す。

カゲロウは彼女の生存に気付いて再び唸り声を上げた。


「カゲロウの分際で人質なんてとりやがってェ!!」


強気の口調だが叫ぶほどの力は残っていない。

カゲロウがゆっくりと迫って来る音が聞こえた。

立ち向かおうにも体が言うことを聞いてくれない。

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