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サムライ×KILL  作者: 45
【序】──侍と侍魂──
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【力】×PARTING 弐

小さな町でも駅前大通りになると、人集りも増えて賑わっている。

駅前には喫茶店や遊戯店の他、複数の雑貨屋と大きなスーパーがあって買い物には困らない。

最近だとショッピングモールを造るという計画があるらしく、都市開発が進んでいるようだ。


修行ばかりしてきた刀真にとっては、ちょっとした遊園地のように思えた。


「しかし、こうも人が多いと捜すのに苦労するな。」


闇雲に捜しても時間がかかるだけなのは百も承知だ。

刀真は目撃情報を集める為に、人混みへと飛び込んで行った。


「あの──。」


聞こえなかったのか、スーツ姿の男は顔も合わせず去っていく。


「仕事中は忙しいよな。」


ならばと、次は主婦らしき女性に声をかけた。


「僕と同じ制服の──」

「こんな時間に学生が彷徨いて、不良ね!」

「違っ──僕は受験で来ていまして、」


女性は話を全く聞かずに警察官を呼び始める。


「まずいッ!?」


刀真は一目散にその場から走って逃げた。

冷静に考えれば、学生が昼間から街中にいたら怪しまれてもおかしくはない。


「──ってことは目立たない裏通りにいる可能性もあるな。」


どの道、この場にいれば警察官に補導される心配もある。

刀真は裏通りへと足を進めた。


同じ刻、光子郎は拳の痛みに耐えていた。


「いや痛いいや痛い痛いイダイッ!!?」


苦しみを訴えるが街の音に消えていく。

始めに痛みを感じたのは約五分前だった。

気持ちがようやく落ち着いてきた所に、痛覚を思い出したのだ。


「こんだけ痛いと試験に支障が──」


言いかけたところで光子郎はあることに気付いた。


「今何時だ!?」


手の痺れを堪えてスマホを取り出し、時間を確認する。

表示された時刻によると、午後の部の予定時間を三十分も過ぎていた。


「しまったァァ!!」


ようやく我に返った気分だった。

今日この日は黒霧の入学試験の為に来ている。

そのことを光子郎は怒りで忘れてしまっていた。


「早く学園に戻らないと──」


そう思ったが彼は動かなかった。


「いやもう遅いな、二度目の遅刻はねえ。 それに──」


刀真の強さが頭に思い浮かび、光子郎は肩を落とした。


「今の俺には勝ち目はねえ。」


このままサボってしまおうか、と考える。

考えながらふと、天空星に目が移った。


「お前ならどうする?」


返事はない。

光子郎は当然だと笑った。


「刀が答えを知ってるわけないな。」


光子郎は壁に背を向けて歩き出した。

入って来た道を辿れば路地裏からは出られる。

帰るなり、サボるなり、一先ずは出てから決めることにしよう、と歩き出した。


「なんだか天気良くなってきたな、陽が強いぞ。」


手で眩しさを防ぐ。

強い日差しが光子郎を照らすことで、彼の影を大きく伸ばした。

影は少しずつ大きくなる。とてもとても──大きくなる。光子郎の影だったそれは、元の姿を捨てた。

牙と爪が鋭く尖り、体はより巨大に。

禍々しい瞳を光らせて、影だった部分から実体が外に出る。


光子郎も違和感に気付く。

振り返ると、カゲロウが彼を見下ろしていた。


「え──?」


カゲロウは腕を大きく振り上げる。

刃物のような爪を伸ばして、斜めに振った。

光子郎は咄嗟に身を引く。

重たい斬撃が光子郎の腹を掠めた。


「──ッ!?」


制服の破片が舞う。

あと少し反応が遅れていたらと思うと──光子郎は安堵の表情を浮かべた。


「擬似カゲロウか?」


少し考えたが、有り得ないとわかった。

ここは学園の外だ。擬似カゲロウがいる訳がない。

それは紛れも無い“本物のカゲロウ“だ。


「クソったれ──!」


歯を喰いしばって、再び湧き上がる怒りを抑える。

今日は本当にツイていない。

光子郎は運などに身を任せたりはしない性格だが、彼にとっては良くないことばかりが起きる。

運が悪いとも思いたくなるものだ。


だが待てよ──と光子郎は何かを思い付く。


「もしこの本物のカゲロウを倒すことができれば──」


試験で相手をするのは所詮、ニセモノ。

だが自分がホンモノのカゲロウを倒せば、黒霧学園の生徒として相応しいのではないか。

光子郎の中で僅かな光が生まれた。


「斬咲ですらカゲロウは倒していない、あいつを超える方法があるとすれば──」


ゆっくりと天空星を抜き、構える。


勝てるのか?そんなことはわからない。

だがこれが最後のチャンスだと、光子郎は悟った。


「やってやるぜ。」


天空星の刃先を光らせて、カゲロウの足元から力強く振り上げる。


カゲロウが左手を伸ばした。刃先を掴まれて動きが止まる。


光子郎は掴まれた刀を重心にして、両足で地面を強く蹴った。体を宙に浮かせて、更に回転を加える。勢いのまま踵を振り下ろした。


「よっしゃァ!」


確かな手応えを感じる。

しかし喜びも束の間だった。

カゲロウの右手が光子郎の足首を掴む。


「──ァガ!!?」


足首の骨が軋んで言葉にならない。

人とは比べ物にならないほどの力で、掴まれたその痛みは想像を絶する。


カゲロウは光子郎の足首を掴んだまま振り下ろし、彼を地面へと叩きつけた。

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