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サムライ×KILL  作者: 45
【序】──侍と侍魂──
11/39

【試練】×ABILITY 壱

から紅町という小さな町には似つかわしくない巨大な学園施設こそが黒霧学園。

全国四十七都道府県各地に存在する侍養成学校の中でも、最も多く優秀な侍たちを世に輩出してきた。

ある者は語る。


「侍になる為には侍の学び舎へ通え、より強くなる為には黒霧に通え。」


力を求める若き者たちは皆、黒霧学園を受験するのだ。

しかしその為には先ず、最難関といわれる試験に合格しなければならない。


一次試験は筆記──侍と言えども知識は必要であり、義務教育にて必須となる学に加えて侍としての知識も求められる。


二次試験は実技──模造刀を使った剣術の腕前を試される。

学あれど、ここで実力不足を痛感する者も多いとされる。


そして、最終試験──求められるものは技。

侍としての侍魂があるか否か、それが黒霧の生徒として相応しいかどうかを決める。


会場は黒霧学園。

入り口となる巨大な門を前にして刀真と光子郎の二人は息を飲んだ。


「ついに最終試験か。」


光子郎は学園の校舎を見上げる。

その大きさは物理的なものだけではないことが感覚を通して伝わった。


「誰かいる。」


刀真が門の方を指差して呟く。

門を背後にして立ち塞がる一人の男がそこにいた。

眼鏡をかけた中年の男性、その名を黒霧学園の教頭──雅山宮義(みやびやまみやぎ)という。

雅山は二人の姿に気付き、眼鏡を小さく上げて定位置へと戻した。


「行こう。」


二人は雅山の元へと近付いて一礼をする。


「最終試験の受験者です、よろしくお願いします。」


鞄から受験票を取り出して見せる。

雅山は二人の受験票を確認すると、小声で何かを呟き、手元のボードに何かを記入し始めた。


「聞いてます?」


光子郎の問いかけに対して雅山はボードを見せて応えた。


「斬咲刀真くん、矢井馬光子郎くん、君たち不合格。」

「え──!?」

「何ィ!?」


突然の通達に二人は驚きを隠せない。

雅山は構わず続けた。


「とっくに最終試験は始まっているんだよ。 君たちは遅刻した、即ち不合格。」


光子郎が慌てて時刻を確認すると、確かに予定時間を五分過ぎていた。


「待ってください、たった五分じゃないですか!」

「遅刻は遅刻だろう。」


そう言って雅山は一枚の用紙を取り出した。


「“本試験に受験者が遅刻・欠席した場合、如何なる理由であっても再試験等は認めず、受験者を不合格とする”。 君たちの元にもこの規定書は届いているはずだが?」


確かに、読んだ記憶があることを刀真は思い出す。

光子郎も言い返す言葉が無く歯痒い表情を浮かべた。


「そこをなんとかお願いします! 遅れたのは全部こいつのせいです。」

「えぇ!?」

「やめたまえみっともない!」


雅山が二人を突き飛ばす。

その拍子に眼鏡がずれてしまい彼の苛々が募るもすぐに平静を取り戻して、眼鏡を定位置へと戻す。

彼の癖のようだ。


「侍を目指すなら先ず時間厳守は絶対だ! それすら出来ない者を黒霧(うち)は受け付けていない。」

「そんな──。」


こんな形で道が途絶えることを刀真は予想していなかった。

俯く二人を無視して雅山は腕時計を確認する。


「私は君たちに構っている暇はないのだ、もうすぐ学園長が──」

「学園長?」


光子郎が何かを思いついたような仕草をみせる。

刀真の腕を掴むと雅山から離れた位置まで彼を連れて行った。


「何?」

「いいかよく聞け。」


耳打ちをする形で光子郎が提案を出す。


「学園長に直談判しよう。」

「随分とシンプルな──だけどそれが良いかもしれないね。」


お互いに目を合わせて笑う。

だが光子郎はすぐに気付いて彼から距離を取った。

これじゃあまるで仲良しみたいだ、なんて言い出しそうな表情を浮かべていた。


「あの車は──!」


雅山の言葉に振り向くと、黒い高級車がこちらへ向かってきているのが見えた。


「もしかしてあれが学園長の?」

「ああ、間違いないぜ。」


高級車は学園の前に停車すると、後部座席から美しい容姿の女性が出てくる。

周りの安全を確認し、反対側のドアを開けた。

出てきたのは身長百八十センチはあろうかという大柄な男だった。

逆立った短髪も蓄えた髭も真っ白で、サングラス越しに見える左眼の傷痕。

強面といえるその面立ちに加えて、オーラと呼ぶべきものを放っているのが二人にはわかった。

間違いなくこの男こそが黒霧学園の学園長なのだ。


「遅いですよ学園長、すでに試験は始まっております!」


雅山が怒ると男は笑った。


「渋滞に巻き込まれたのだ、文句があるなら時田に言え。」


彼は目線を続けて女性に向けた。


「申し訳ございません。 ご主人様がもう少し早く起きてくだされば良いものを、寝坊癖は若い時から未だに直っておりません故。」


淡々と喋る言葉の中にはどこか刺がある。

時田と呼ばれた女性は冷たい雰囲気を纏っていた。

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