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8.初仕事(伍)

読んでくださってありがとうございます。今回はほぼ会話しかしないです。短い方ではありますが長いのでお時間のある時にお読みください。

「瑠、雨...?」

 露忌が驚いた表情でこちらを見つめる。一部始終を見ていた生徒もなにが怒ったのかわからないという顔をしていた。

「僕、...」

「すげぇじゃん!めっちゃ助かった!ついちょっと前まで幽羅の後ろでビビってたのとは比べもんになんねぇよ!!」

 そう言いながら露忌は僕の肩に腕をかけたて嬉しそうに言った。なんて言われるかわからなくて一瞬ヒヤッとしたが帰ってきたのは称賛の声で僕は思わず嬉しくなる。

 横目で教室の中を見ると喪模はなにが起きたのかわからないようで放心状態だ。

 露忌は半ば僕のことを押しながら教室へ入る。

「喪模、もう大丈夫だ。瑠雨が倒してくれた。てかお前、怪我しまくってんじゃん、って大丈夫か!?」

 安心したのか後ろに倒れ込んだ喪模を露忌は支える。

「うっうん。はぁ、流石に生身の人間相手じゃ殺しかねないけど、普通に強くて死ぬかと思った...。」

「あいつらは取り憑かれてた。どうやら河岸ってやつは大分お怒りらしいな。あっ喪模、お前は幽羅に見てもらえ」

 やはり彼らは取り憑かれていたらしい、先程のやつらが積極的に僕たちを襲ったのは僕たちが自分を害する可能性が出てきたからかもしれないが、先程の生徒達を襲ったのはただ単に儀式をしたからなのだろうか、それとも怪異の危険度が増したかだろうか。

「おっけい、おっけい。」

 喪模はふらふらと立ち上がり幽羅の方へ歩いていく、それに気がついた露忌は喪模に肩を貸した。

 取り敢えず一見落着か、と思っていたら外から今度は嬉しそうな声がする。嬉しそう、というよりも恐怖が去ってほっとしたよう声だった。怖かった、よかったと口々に言い合っている。僕は皆んなのいる所まで向かった。

「幽羅ごめんね、疲れたでしょ?」

「いえ、ワタクシは平気です、なにしろ今回は戦闘に殆ど参加できていませんでしから、これくらい朝飯前ですわ」

 にっこりと微笑む。

「てか、瑠雨も怪我してたな、一緒に直してもらえ」

「あっうん、でも一気に複数人なんてできるの?」

「ええ、まぁちょっと前なんて...ねぇ、露忌?」

 この顔は何か因縁があるな、なんて思いながら床に腰掛けて傷を幽羅に差し出す、すると段々と痛みが減ってきた。この回復の早さは本当に凄い。

 暫く黙って座っていると生徒を全員直しきったのか女子生徒は立ち上がって丁寧に礼を言ったあと廊下にいる友達のところまで走っていき、友達と抱き合っていた。よかったな、と思っていると喪模が不思議そうに僕に言う。

「というか瑠雨、アンタ武器は一緒だったけど特異異変は変わってたわね、やっぱり記憶がないと能力ってかわるのかな?」

 不思議そうに考え込んでいた。

「特異異変って?」

「私達は半分人間じゃないだから能力も怪異と同じになる。だから当然それで能力を使おうとしたら都市伝説とか異変に関与したものになる。それを特異異変と呼んでるの、簡単に言えばゲームで言う必殺技ね。」

 この前怪異が人間と関わるには都市伝説とか異変に関与して関わる必要があるとか言ってたな、つまりそういうことか。喪模のわかりやすい説明に感謝する。そして必殺技という言葉を知っているならもしかしたらゲームのが好きなのかも知れない、今度話してみようかななんて思った。

 そんなことを話していると廊下の先から走ってくる音が聞こえる。

 怪異か?と思って若干警戒したがそれは必要なく、音の正体は職員室から来た先生たちだった。その中には教頭先生もいる。

 そういえばだがいつの間にか先程持っていた大斧は無くなっていて、僕が怪異と思って警戒した瞬間に出てきた。どうやら自分で自由に使うことができるようになったらしい。一旦要らないから消しておく、

 教頭先生を含む何人かは刺又を持っており、僕を見つけると

「日無気子...」と僕を滅茶苦茶睨んできたが今回に関しては僕はなんにも関与していない。

 僕が違うんですと言おうとした時生徒の一人が言った。

「先生、私達がこっくりさんをやってて、そしたらいきなり一緒にやってた子の様子がおかしくなっちゃったんです。それで、あの人達が助けてくれたんです。それにもう一人おかしくなったんですけど日無気子先輩が助けてくれました。だから、日無気子先輩のせいじゃないです。」

 その女子生徒はきっぱりと言い切った。嬉しかったが、僕たちが変な能力を使っていたことについて何も言ってないというか、なんにも驚いてなくてそっちの方が驚いた。だから僕は近くに居た幽羅にこっそり聞いてみた。そうすると

「別に半人外なんて珍しくないのですよ。だから能力を持っている人が、少なからず彼らの周りにいるのでしょう。逆にワタクシは瑠雨がそれを知っていないことの方が驚きました。ここはそういう世界なんですよ、瑠雨。」

 記憶がないなら兎も角その世界の常識まで忘れているなんてこれじゃまるで忘れたというより新しい人格が生まれたみたいじゃないか。

「本当か?」

「はい、そっそのこっくりさんやる様子をネットに上げようと思ってスマホで撮ってた子もいて、だから本当です。」

 撮られたってことは僕が写ってるってことではないか、そんな僕の中では厨二病臭いことやってた様子が写ってるだなんて恥ずかしくて悶絶しそうだ。どうか僕の姿が写っていないことを願おう。

「わかった。その映像は後で提出するように、一応このクラス全員分救急車を呼ぶ。野次馬は戻れ。」

 そう言うと先生は僕たちの方に近づいてきた。

「すみませんが我々は来るのが遅れてしまったため状況がわかりません。なにがあったかお伝えいただいてもよろしいでしょうか?」

 先生は悲鳴を聞いたから来たわけではなくどうやら幽羅が逃がした生徒が呼んだようだ。

「ええ、勿論。それと学校は一度休校した方がよろしいと思います。」

「はい?」

 どういうことだ、というように返す。

「これは偶然起きた出来事でも瑠雨が原因で起きたことでもありません。これ以上生徒に被害が出るとワタクシ達では守り切れませんし、生徒の安全の為にも休校させてください。」

「その原因というのは?」

 成程、校長はまだ先生に一連の出来事の経緯について話していないようだ。

「それは校長先生が一番おわかりになっていると思います。そうですよね?」

 僕が首を傾げて奥の方を見ると話している生徒に隠れるようにして校長は立っていた。

「校長...!」

「校長、これは一体どういうことですか!?」

「そっそれは...」

 ここまで来ても校長はまだ沈黙を貫くようだ。

「なぜこんなにも被害が出ているのです!?」

 表情の必死さから伝わる。恐らく教頭は本気で生徒たちの身を案じているのだろう。先程までは単純に僕が気に食わないだけかと思ったがどうやらそういうわけでもなさそうだ。

「...。」

「やはり、日無気子は退学にするべきです!これ以上生徒に被害が出たらっ」

 教頭が叫んだ。

「校長、保身に走るのは結構ですが、このままでは死人が出ます。」

 続けて喪模が鋭い声で言う。学校の事情について口を割るまでは良かったが校長は生徒の安全より自分の給料の方が大事なようだ。いや、もしかしたら臆病なのかもしれない、河岸先生が被害に遭っていた時も恐らく自分が攻撃されるのが嫌だったからなにも言わなかったんだ。どちら側についてもどちらに攻撃されるかわからないだからあえて双方に加担しないという選択肢を選んだのだろう。

 しかしその保身にしかはしらない態度には腹が立つ、そしてどうやら怒っているのは僕自身だけでもなければ喪模だけでもないらしい、二人とも校長を批難するように見ていた。

「ですが、それだと学校の評判に...。」

「アンタは学校の評判と生徒の命どっちが大事なんだ!人が死ぬのと学校に来る人が減るだけどっちが重い!」

 言ったあとであっと思ったがどうやらそれは遅かったようだ。これが抑えきれない怒りというやつなのだろうか、校長相手になんてことをと思って思わず口を塞いだ。けれど喪模はそれに続いて

「校長、もしアンタがこのまま放置することを選ぶなら私達はこの件から手を引く。もう一度言うわ。教員達と被害に遭った生徒たちに事情を説明した上で休校にして」

 そう言っても校長は下を向いて黙るばかりだった。そして暫く待った上でなにもないとわかると

「もういいわ、幽羅、露忌、瑠雨、行こう。あとはお好きに、アンタみたいなの勝手に死に腐ればいい」

 そう言って喪模は立ち上がるとスタスタと歩いて行く。見る限りもう傷は直っていてよかった。露忌も幽羅も立ち上がって喪模についていった。僕も後に続こうと立ち上がる。

 教室も廊下も教頭が叫んでからはシンとしていたが喪模がそう言い放った直後廊下にいる生徒達は軽くパニックになった。

「どうゆうことまたこんなことが起きるの!?」

「やってらんね、こんな学校やめてやる」

「怖いっ怖いよ死にたくない」

「帰りたい...」

「なんで私達がこんな目に遭わなきゃなんないの」

「いやああああ」

「校長のせいで僕たち死ぬかもしれないのかよ」

 これは生徒たちは一度精神科に見てもらった方がいいかもしれない。そうして生徒は口々に校長を批難する。僕は気になって軽く振り返って、前を向いて帰ろうとした時、視界の端で覚悟を決めた顔を見た気がした。

「まっ待ってください。わかりました、言う通りにしますですからどうかっ手を引くのだけはっ」

 出会った時はあんなにも鼻高々だった校長が深く頭を下げている。

 喪模は立ち止まって振り返った。その表情は怒っているのか呆れているのかよくわからなかった。そして深い溜息をついて校長の前まで歩く、

「わかりました。では、この場にいる人に事の経緯を説明して、明日は休校にしてください。嗚呼、それと他の生徒への休校と騒ぎの説明は任せます。」

 一見冷たく見える口調で喪模は言ったが、他の人への説明は任せる、ということは多少なりとも喪模にも思うことがあるのだろう。

「でも、明日アンタはこの学校に残って。ていうか明日はアンタと私達以外は誰もこの学校には入れないで、」

「わっわかりました、ありがとうございます。...あの、なぜワタクシはいないといけないのでしょうか?」

 校長は恐る恐る聞く。

「それは明日説明するから気にしないで、今日はもう日も暮れるし、他の生徒も帰る時間ですから、私達は一度帰ります。これ以上事を大きくはしたくないし....それに、やらなきゃいけないことができたから。」

 淡々と喪模は話して会話を切った。

 なんだろう僕は一見偶然のようにして全てこの会話は考えられたものな気がする。偉そうだった校長を僕と周りの生徒達を使うことで一気に丸めこんだ。僕の怒りも本当は手のひらの上だったりするんじゃないか、そんな考えが頭を過る。もし仮にそうだとしたら喪模が少し怖いけれどそんなことじゃないことを祈ろう。


 その後僕たちは先生達に事情を説明するのを見届ける。その頃丁度救急車が到着した。こうなった以上校長はいくら隠そうとしてもニュースぐらいにはなるだろがそれはしょうがないだろう。

 全員を見送ったあと僕たちは別れて僕は家路についた。


___今日はマジで疲れたな...。

 露忌達と別れた後僕は体の力が一気に抜けて徒労感に駆られた。一歩一歩が重い。思えば今日はいろんなことがあった。まさか自分が通っている学校にそんな過去があるなんて思わなかったそんな人がたくさん死んだ場所で普通に生活していたことが恐ろしい、それに今日はバトル漫画かと思うくらい戦った。お陰で自分を守れるくらいのことはできるようになった。これでぎりぎり足手まといにならないと思いたい。授業に関して全く出ていないがあれは欠席扱いになるのだろうか、それは嫌だな。

 それにしてもあの一瞬聞こえた声はなんだったんだろう。

 僕のくせにってことは僕は僕ってことだよな、それじゃああれは昔の僕___?

 明日はきっと河岸先生の所に行くんだろうか。あんなに怖かった怪異よりも強いらしいのだから僕の想像できる範囲は超えていると思う。

 色んなことを考えていたその時、スマホに通知が来た。誰だ?と思ってポケットからスマホを取り出して内容を確認する。

『明日7時校門前集合ね』

 異変解平社からだった。そういえばいつ集合みたいな話しはしていなかったことを思い出してわかった、と返信しておく。そしてまたポケットに突っ込んだ。

 僕は前を向く、

 今日は頑張ったんだ色々考えるのはやめて取り敢えず明日に備えよう。

 夕飯なんにしようかな、そんな事を考えながら僕は歩みだした。


 そうして初仕事の一日目は終わった___。


 次の日

 僕はなんとか遅刻せずに起きて校門前に向かう。遠くに人影が見えた。恐らく喪模達だろう。姿が見えてからは軽く駆け足になって近づいた。この距離まで来るとなんとか顔が見える。露忌が僕に気がついたのか大きく手を振った。

「おはさん、瑠雨。」

「おはよう、露忌。」

 そう言って全体を見回す、昨日と全く同じ顔ぶれだけれど一つ違うことがあった。

「なんで皆んな黒い服着てるの?」

 思った疑問をそのまま声に出した。

「それは見てればわかるわよ」

 僕は首を傾げる、なにか意図でもあるんだろうか。

「さあ、全員揃った所ですし、片を付けに行きましょう。」

 黒い振袖の着物を来た幽羅が軽く笑顔になって校門に手を掛けた。

 ギイと音がして校門が開く。


 僕は足を前に踏み出した___。

読んでくださってありがとうございます。ようやく一日目が終わりました。長かったですね。いよいよ初仕事は終わりに近づいています。河岸先生と戦うのかそれとも...次回も宜しくお願いします。

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