7.初仕事 (肆)
今回は短いです。すでに二百人以上の方に読んでいただいてとても嬉しいです。ありがとうございます。短いと言ってもそこそこの量があるので時間のある時にお読みください。誤字脱字がないように頑張ってはいるのですがそれでも生じてしまうのは本当に申し訳ありません。
「あれはもう三十年前のことでした。彼の名前は河岸 維凱 (かし いがい)といいまして、元は優しくて頼りなく、所謂ひょろっちい感じの人間でしたが、けして悪人ではありませんでした。私はそこまで仲が良かったわけではないですが、彼のことはよく覚えています。河岸は、彼は元はただの普通の教師でした。
けれどある時から彼は嫌がらせと言っては甘い被害に会い始めました。」
僕は真剣に話しを聞くなんとなくだけれど映像が出来上がってくる。
「そのきっかけは教頭が変わった時からでした。彼は、昔から河岸のことを嫌っていて、教職の中で立場が上がり調子に乗ったのか彼は河岸のことを必要にバッシングし始めました。
最初は皆な気にせず接していましたが、彼の影響力は強く段々と河岸の周りの人間は河岸のことを下に見て嫌がらせをしました。そこで勢いづいてしまったのか河岸への嫌がらせは、エスカレートしました。」
きっと周りは自分も巻き込まれるのがいやで力が強い側についたのだろう。それに虐げられている人を目にした時、可哀想と思う者もいれば、段々とそれが本当は悪人でなくとも悪人に見えてくる者もいる。
「それでアンタはどうしたのよ?」
「先程言った通り私はあまり仲が良かったわけではなくてただ傍観することしかできなかった、今はそれを後悔しています。まさかあんなことになるなんて...、話しを続けます。」
校長はいつもの調子はどうした、と言いたくなるぐらい後悔に溢れた顔をして話をしている。
「教員内だけならまだ良かったのです。生徒が、それを見た生徒が、彼をそういうことをしてもいいんだと思わなければあんなことにはならなかった。
最初に動き始めたのは高学年の生徒でした。きっと受験や塾でストレスが溜まっていたのでしょう。彼に暴力を振るい始めました。そしてそれが高学年から低学年へ伝わりました。本人たちはそれが悪いということを知らずに嫌がらせに加担していましたが、最終的に河岸は学校全体からイジメを受けたのです。」
「それで、そいつらを殺した、と」
「そうです。そんな状況が長く続き、彼の限界を超えたのでしょう。ある時、特に彼の記憶に強く残った人物たちをチェンソーを持って殺しました。教員達は抵抗しましたが、何故か力がないはずの彼に誰も適わずそれは大人から小学一年生の子供まで、私もその場にいましたが恐怖で腰が抜けて動くこともできず、なんとも酷い(むご)殺され方をしている人たちをただ見ることしかできなかった。」
「それでその教員はどうなったのよ?当然捕まって罰を受けたのでしょう?」
「いいえ、彼は憎むべき全ての相手を殺すとある部屋で自殺しました。」
「...。」
沈黙が走る。
じゃあ彼は...。
「もし、本当に幽霊がいるとしたら彼は彼らのことを憎み地縛霊となったでしょう。」
「成程ね...じゃあ、そいつがここで死んだ幽霊達を現世に縛り付けて怪異にさせたってことで、さっきの奴の話からするとその河岸って奴が怪異になってここの中心核になったというのも間違いなさそうだな。」
露忌は頭に手をやりぐしゃぐしゃと頭を掻いた。
「困ったわねその怨念___怪異化した河岸を倒すのは簡単じゃないことくらいはわかるけれど私個人としてはこのまま放置させて、その怨みが尽きるまで好きにさせるのも手だと思うわ、それが一番楽だし、」
「しかし、我が校に学校を移せるほどの資金はありません。」
まぁ僕みたいな成績底辺が入れる学校なのだから人気高と違って金はない、しかし生徒はそれなりにいるので全員が入り切る場所を用意できるかと言われれば絶対に無理だ。
「となると学校を取り壊して、地縛霊として消すって方法も無理か...。」
それが俺的にはいいんだけどな、といいながら露忌はげんなりとする。やはり先程倒した男性教師が言っていた通り彼らは河岸を倒すのではなく放置するとう決断を取ろうとしていた。
「でも、このまま放置したら関係ない人たちまで死ぬんだろ?、だったら僕は倒すのがいいと思う。」
「けどそうしたら彼は確実に地獄に堕ちるわよ?」
地獄なんてものが本当にあったことにまず驚きたいが、今はその話をしている場合ではない。そもそも何故地獄に堕ちるのかがよくわからないが予想できる範囲だといくら可哀想な目に遭っても人を殺すことは重罪、ということだろうか。
「じゃあ殺された人たちは?」
「悪意が有った人に関してはわからないですけれど悪気が無かった低学年の子達は天界へ行くでしょう。」
残念ながら、そう言いながら幽羅は目を伏せた。残念ながら、そう言ったということは幽羅も河岸に被害を与えた者達を地獄に落としたいという意見なのだろうか。僕はこんな状況で言えることじゃないがどっちもどっちなのだからどちらも地獄に堕ちるべきだと思う。人によって意見が違うのはやはり人間なのだなと感じた。
「じゃあその人達を地獄落とすことができれば河岸さんはまだ納得するんじゃないかな?」
「悪意が有無かった人はどうっても地獄に堕とすはできない、仮に方法があるとしてそれはどうやってやるんだよ。」
すかさず露忌はつっこむ、僕は固まってしまった。確かにそうだ。僕は考える、どうにか彼を少しでも楽な方法であの世に送ることができのか。そして僕はある台詞を思い出した。
___そうだ、なんかの漫画で読んだことある人型を使えばそれを被害者の代わりとして連れて行けるのではないだろうか、と。
確か露忌の実家は神社と言っていた。もしかしたらそういうことができたりするんじゃないか。
「露忌、確か君の家は神社だったでしょ?だったら人型を作れたりはできない?」
「いや...できないことはないけど...」
そう、露忌が何かを言いかけた時だった。
「きゃーーー」
どこかから甲高い悲鳴が聞こえた。
校長に一言言って僕たちは声がする方へ走った。場所は二階の教室、僕たちが先程通り過ぎた場所だった。
僕たちが駆けつけるまでに数回男女両方と取れる悲鳴が聞こえる。僕より皆の方が走るのが早くて僕はついていくのがやっとだった。これでも僕はクラスで一番速いのだが...。
「なにがあった!?」
教室に着くと廊下に沢山の人が居て野次馬もいればそこの教室から逃げ出してきたような者もいた。皆、教室を見つめ、恐怖に染まった顔をして教室内を見つめている。
露忌はそこに居た男子生徒に声をかけた。
「わっわかんない。ただ女子がこっくりさんをやってて、そしたら急にその子達の肌が切れて...。」
教室の中を見る限り動けなくなっている生徒が沢山いて、彼らは泣き出していたり、蹲っていたり、そして先程の生徒が言ってた通り中心にはいくつもの大きい切り傷を負った生徒がいる。
「でも、あれは...!?」
僕が指さした方にいたのは一人の女子生徒、彼女は机を蹴飛ばして人間じゃありえない声をあげてこちらを睨みつけていた。
「こんな所でこっくりさんなんかやったらこうなるのは必然、だけどまずはあの子をどうにかしないとよね。」
喪模は黙って杖を取り出した。
「どうにかって、彼女は人間だろっ」
喪模は冷や汗を垂らす、そうしてる間に様子のおかしい生徒はこちらに走り近づいてくる。
「彼女を教室から出しては駄目です!!」
幽羅が叫ぶ、喪模は教室へ走り込んだ。なんとか抑えようとしたが、喪模は腹を蹴飛ばされた。すると有り得ないくらい飛んで壁にぶつかる。なんと壁が凹んだ。受け身を取ったようだが苦しそうに目を開けて今度は彼女の首に杖を横にして反対側の壁に押さえつける。そこまで移動する速度は一瞬だった。
抑え込んだ!そうほっとしていると喪模が叫んだ。
「こいつ力強すぎて抑えられないっ、今のうちに動けなくなった子達を外に出して!」
二人は一瞬で頷いて行動に出た。慣れているのだろうか動きも理解度も僕より全然早くて気がついたときには二人は教室の中に入って各々行動を取っていた。
___僕もなにかしないとっ、
せめて足手まといにならないうちに、そう思って僕も動けない生徒を外に出すのを手伝おうとする。立ち上がったとき背中げ痛んだ。
なんだ!?、そう思って後ろを振り返ると先程の男子生徒が何故か伸びた爪で僕の首の後ろを掻ききったのが見えた。
「痛っ」
すると露忌が一瞬でこちらに飛んできて、ギターで男子生徒の頭を殴る。殴られた生徒は白目を剥いた。
「大丈夫か!?」
振り返って僕に言う。生憎急所は外れているが痛い、手を見るとそこには血がべっとりとついていた。しかしそんなことよりも、先程殴って白目を剥いたはずの男子生徒は起きて露忌に攻撃を入れようとしている。
「露忌、前!!」
ギリギリのところでなんとか露忌は攻撃を防いだ。
「俺が攻撃するとこいつを殺しちまう、一旦逃げてこいつを教室に入れるからっ、生徒達を別の場所にっ、くそ」
僕は頭が混乱して動けなくなった。痛いのと露忌が言ったことそれと喪模が抑え込んでいた女子生徒とまた戦っていること、幽羅の逃げろという声、生徒たちの悲鳴。しかも喪模は傷をいくつか負っていてみるからに痛そうだった。幽羅は攻撃を受けた生徒達を最低限直しながら生徒達を避難させている。
僕は聞こえなかった、露忌が『瑠雨』と叫ぶ声を、
目の前に迫ってくるのは男子生徒の長い爪を持った手、それは丁度目に刺さりそうだった。露忌が攻撃を上手く受け取れなくて流した、そしてその先に僕がいて、きっと流れ弾的な感じで僕に来たんだ。それは一瞬の出来事だった。でもなぜかゆっくり見えていて
___なんだろう、遅いな。これ走馬灯見る感じか?
一体何回こんな目に逢えば気が済むのだろう、いやもしこの先僕が生きていれば、何回もこんな目に遭うんだろうか。そんな現実逃避をやめて現実に戻る。それはもう刺さる所まで来て、目をつぶることもできなくて、
その時だった。
『なんだよ、お前。僕のくせになんかい死にかけてるんだ。しかたない、仲間と自分くらいちゃんと守れよ。俺の大事な仲間なんだから、』
どこかから声がした。その声はどこかで聞いたことがあって、でも僕とは違う声だった。誰だろう、そう思っていて、
次の瞬間には、僕は動いていた。
僕が見た光景はただ目の前にいた男子生徒が廊下の遠くの方まで吹っ飛んだこと。
「えっ??」
僕は驚いて手を見る、そこには大斧が握られていた。後になって思い出す。
そうだ、僕はあの時、これの刃の付いてない方で彼を全力で刺したんだ。
遠くの方でかはっ、嘔吐く声が聞こえた。動けたことがびっくりしたけれど、僕はそんなことは考えていなくて、何故だか僕はこうすれば取り憑かれた様な彼らを傷つけることなく助けられるとわかっているようで気づけば僕はこう言っていた。
「螟ゥ蝟ェ貊?」
自分でもなんて言ったかわからない、多分この世の言葉ではないんだと思う。そしたら彼らの下に教室一個分くらいありそうな大きな目玉で出てきた。それは紫色に光っていて、周りにには魔法陣のように紫色に光る線も現れる、それは眩しく光った。そして次元が裂けたようにパリンと割れた。
それが消えた直後二人は力が抜けたようにその場に倒れ込んむ。
やったのは僕自身の筈なのになにがなんだかわからなかった。
「瑠、雨...?」
露忌が驚いた表情で僕を見つめる。その場の空気が時が止まったように固まった____。
読んでいただいてありがとうございました。ついに瑠雨覚醒しましたね。戦闘シーンの書き方含めまだまだ発展途上ですが次回作も宜しくお願いします。それと、この初仕事はもう暫く続きます。飽きず付き合ってくださると嬉しいです。




