24.説得
開いてくださりありがとうございます。
長いので時間がある時にお読みください。
よろしくお願いいたします。
「あの、すみません。僕もついて行っていいですか?」
「「え?」」
「迷惑なのはわかってるんです。でも、心配で…だからできるだけ早く話したいんです。」
記憶にある限りで過ごした時間は短いかもしれない。だけど一緒に行動して大事だなって思えたんだ。そんな仲間が危機に陥っているならすぐにでも助けたい。僕は笑ってる露忌が好きだから。早く元気になってほしんだ。
「露忌のこと心配してくれてありがとうございます。一緒に行きましょうか。」
遥さんはニコリとほほ笑む。
「立派になったねぇ。」
と喜んでいるが君は僕のお母さんなのかと突っ込みたくなったのは言わないでおこう。
「?どういうこと?」
魔嚥は不思議そうに聞いた。
「ええっと遥さんはお出かけしちゃうからその間はお姉ちゃんと一緒に遊ぼうか。」
「わかった!」
満面の笑みを浮かべる魔嚥は可愛らしかった。
そうして遥さんと僕は家を出て、喪摸と魔嚥は部屋から離れて一階に行った。幽羅は残ってもいいと言ったが邪魔したら悪いからと言った結果こうなった。
僕らは入り口を出て遥さんの後についていく。
「車で行くんですか?」
この辺の人は皆んな車を持っているのだろうか。
「はい、田舎ってほどでもないですけれど郊外ではあるのでこの辺の人は大体持ってますよ。」
確かに闘夜の車の中から見たところではかなりの確率で家に車が止まっていた。まぁ東京だって多いんだから持っていたって不思議ではない。
「そういえば幽羅とあった時車見ませんでしか?確か知り合いが待ってて、待たせたら悪いなって。」
「車?嗚呼、あの子を降ろした後何処かに走っていきましたよ。」
最初に待ってると言ったのは幽羅を迎えに行くために待っていたのだろうか。でもそもそも連絡先も交換していないのになんで幽羅の場所がわかったんだろう。
「そうですか…」
付いて行って着いたのはそこそこでかい車。見るからに高そうだ。色は黒で無難と言ったら無難だった。
遥さんは運転席に僕は促されて後部座席の右側に乗る。
「そういえば雰囲気が大分変っていらっしゃったから気づくのが遅れてしまいましたが貴方は瑠雨さんですよね?」
着物で運転をするのは大分雰囲気に合わないが運転の仕方がとても丁寧で運転って意外と性格が出るなとも思う。車は発射して近づくとシャッターが開いた。
「はい。僕のこと知ってるんですか?」
僕の昔のことを知っている人には彼ら以外で初めて会った。
「ええ。閉じこもった性格の息子に一生懸命話していて、それであの子久しぶりに笑ったんです。だからよく覚えていますよ。大分雰囲気がお変わりになりましたね。」
そんなことがあったのか昔の僕のことはわからないから興味が出てくる。今の僕はそんな人に話に行けるタイプではない。昔はどんな性格だったのだろうか。皆んなは僕の昔のことを話そうとしない。今の僕のことを思って言わないんだと思うけど気にならないことはないのでいつか聞いてみたいものである。
「あはは…実は僕二年前からしか記憶が無くて…。」
変わったと言われてもなにが変わったのかを知ることはできない。原因はわからないけど言っておいたほうがいいと思った。
「そうだったのですか…。異変解平社に同年代の男の子は一人しかいなかったから息子と貴方はとても仲が良さそうで見ていてここなら大丈夫だと思えたんです。お礼を言えなくてすみません。ありがとうございます。」
「っそんな、正直お礼を言われても今の僕にそれを受け取る資格があるとは思えなくて…兎に角露忌が元気になったのならよかったです。」
身に覚えがないことにお礼を言われても素直には受け取れない。いつか記憶が戻った時にちゃんと受け取ろうと思う。
「…本当なら息子と連絡を取りたかったのですが、家族円満で息子を送り出せなくて、むしろ無理やり送ってしまったことを少し後悔しているんです。」
「え?」
先程より少し声のトーンが落ちる。
「夫も息子と離れて暮らしているうちに息子に対して申し訳ないと思っていたようで、もしかしたらもうちょっと時間を置いて家族で話し合っていたらこんなことにはならなかったんじゃないかって。」
言動から見るにそんな感情は感じられなかったが本当はそれが全部じゃないのか。
「お父さんは露忌のことを利用しようと思っていたわけじゃないんですか?」
「最初は多分そうだったと思います。時間を置いて一人で向き合っていくうちに変わったのではないかと考えています。強制的に連れ戻そうとしたのも本当は謝りたかったんじゃないかなと私は思うんですけど夫はぶっきらぼうですから会って話をしようとしても引けに引けなくて、というか自分の気持ちの整理がつかなくてパンクしちゃったんだと。それにしても首を絞めたり殴ったり絶対にしては駄目ですけどね。だからいつか家族で笑い合う日が来るといいなと願っているんです。」
物語というものは人の数だけあると聞いたことがある。これが遥さんからみた物語。喪摸から聞いたのと大分違う。それに疑問として無理やり連れ戻そうとしたという点がある。喪摸はそんなこと言っていなかった。
やっぱり主観によって話は大分変化するようだ。事実はわからないけれど多分遥さんは家庭円満を願っていてどうしてもそう考えたくて仕方がないんだろう。だからお父さんに言われたことに素直なのかもしれない。色々な意味で優しい性格な人だと思った。
「そうだと、いいですね…。」
僕はなんて答えたらいいかわからなかった。本当にそれだけだったら露忌があそこまでなるとは思えない。結局真実はわからないものだった。
それから特に会話はなく無事に病院に着いた。
かなり大きい病院だ。思ったより大きい怪我をしたのかもしれない。
駐車場に車を止めた後僕達は車を降りて病院内に向かった。
僕の戦いはこれからだ。できれば喪摸達の手を煩わせることなく僕だけでどうにかしたい。
頑張れ、僕。
遥さんはスマホを確認する、どうやら連絡が来ていたようだ。
病院はかなり大きくて人も沢山いる。
辺りを見渡すと何かを見つけたように待合所に向かった。
「アナタ。怪我は大丈夫でしたか?」
心配そうに駆け寄る。待合所でその人は待っていた。がたいがいいから見ればすぐわかる。様子からみて良い人間だったとはとても思えない。スマホを見ながら貧乏ゆすり。餓鬼か?
「肋骨だから入院は無いらしいがかなり酷いらしい。ったくあいつ親に手を上げた上に大けがまでさせやがって…。」
こんなことを言って笑ってられる彼女は少し優しすぎる気がするが。露忌を守ろうと逃がしたのだからその辺の区別はついているのか。
「こんにちは、露忌のお父さん。」
なるべくこう、高圧的?みたいな感じを演じようと勇気を出した。僕の勇気なんて小さいものだけど何としてでも願いを聞いてもらうんだ。
「誰だ。お前は。」
出会っていきなり睨んでくるとは。本当にこの人に頼んでいいのか。いや、これしか方法がないんだ。頼む他ない。少し怖いけどこれで怯むわけにはいかない。
「僕は瑠雨。露忌の同僚で友達です。」
「あの五月蠅い餓鬼か。おい、なんでこいつを連れてきた。」
「それは…。」
「お願いがあってきました。周りくどいことを言えるわけではないので言います。露忌を助けてください。」
「はははっなにを言ってるんだ。こっちは殺されかけたんだぞ。警察に通報したっていいぐらいだ。助ける?馬鹿なことを言うな。」
状況的には不利だな。
でも、まてよ?本当に通報したいなら病院に行くと言った時に通報できる。なんでしなかったんだ?
僕は推測に過ぎないがある仮説が思いついた。遥さんの言う無理やり連れ戻そうとした。露忌だけが襲われた京都タワー、そしてそれを見て露忌の様子はおかしくなった。つまり僕らが襲われたことになにか関係があるんじゃないか?
「でもすぐに通報しなかったのはそれをすると後ろめたいことがあるからじゃないんですか?」
「なんだと?」
表情が変わる。真偽のほどはわからないが向こうにとって都合の悪いなにかがあるのは間違いない。
「助けられなければ露忌は死にます。貴方の力が必要なんです。」
少し大げさだがこのぐらいいわなければこの人は動かないだろう。僕自身も怪異堕ちという言葉の意味を深くは理解していないが様子から言って相当大変な事態なことに間違いはないはずだ。様態を知ることなんてできないだろうから多少盛ってもバレることはない。
「死ねばいいじゃないか。産んでやった恩も返さず家にとって利点なんてひとつもないんだからいったっていなくたって同じだ。」
は?
ふざけるんじゃない。お前を産んだ親だって子供の頃は利点なんて無いだろうに。それともなにか?お前は小さい頃からずっと親の役に立ち続けていたのか?例えそうだったとしても親が言っていい台詞じゃない。
頭に血が上った。ここまで怒りが湧いたのは初めてだ。
「勝手に産んだのはお前だろ。」
「あ?」
本音が漏れる。怒りは状況をいい方へと持って行った試しがない。落ち着くことを優先した方がいいかもしれないな。
「アナタ、ちょっと落ち着いて...」
流石に駄目だと思ったのか口をはさむがこんな奴がそれを聞くわけがない。僕は頭を必死に回して言い返す方法を考えた。喪摸からの話を思い出す。
「あるじゃないですか。利点。息子さんは大変期待されて生まれたそうじゃないですか。ただえさえ貴方の立場は弱いというのに死なせてしまっては貴方の地位はどうなるかぐらい想像できますよね。今の貴方の態度は立場を悪くする一方です。それでも今なおその地位が保てているのは息子さんのお陰、ですよね?」
「生意気なこと言ってんじゃねぇよ。」
良かった。あまり相手は頭が回らないみたいで。ここでそれ以上の不利な点を言われたらなにも言い返せないところだった。
「生意気もなにも事実を言ったまでです。それで貴方に聞きたいのですが、本当に息子さんの死を望んでいらっしゃるのですか?貴方は前の奥さんを愛していたんですよね。今の貴方を見たら奥さんも悲しむのではないですか?」
「お前が刺事過のことを知った風に言うな!」
怒鳴る。周りの人が驚いて僕らに視線が集まった。
確かにその通り僕は露忌の本当のお母さんのことは何一つ知らない。だとしたらこの発言から推測できることがある。知った風に。そう言うということは何かしら苦難があったのだろう。
「はい。その通り僕は刺事過さんのことは全く知りません。刺事過さんがどんな風に考えて生きていたのかも、”どんな気持ちで産んだのかも”。」
「…。」
黙った。推測は当たったらしい。ここからは最早賭けだ。
「どんな形で産んだにしろ、殺すために産んだんじゃないんでしょう?生まれた時から貴方は息子さんに今と同じ感情を向けていたんだすか?生まれてきた瞬間からこいつなんていなければと思ったんですか?そんなはずないですよね。だって…」
殺さなかったんだから。
厳しく育てられたと聞いたが虐待をしたとの話はなかった。もし虐待をしていたなら彼らに預けるんじゃなくてもっと行くべき場所があるから。
それに高校生になったら戻ってくるという約束だった。単純に利用したからかもしれないが本当にそれだけだったらそもそも家から絶対に出さないし学校にだって僕は行かせない。発言は許せないものだったが彼にも彼なりに事情というものがあるのだろう。
「…わかった。悪かった、だからそれ以上は言わないでくれ。」
怒りが覚めたのかわからないが、もうそれ以降上から話すことも怒鳴ることもなかった。
「露忌謝って、ちゃんと助けてくれたらいいですよ。」
僕はなるべくニコリとほほ笑む。確実に張り付いた笑みに変わりはないが取り敢えずはいいだろう。
勝った。
皆んなやったよ。最善な形ではないかもしれないし、主人公みたいにかっこいいことなんて一ミリもなくて、ただただ必死に受け答えしただけだけど、どうにかできた。
後は帰ればいいだけ。
遥さんが帰ろうと言って僕らは病院を出る。病院という場所で会話するには少し適さない話だった。患者さん方には申し訳ないと思う。どうか他の音に埋もれることを祈るけど目立っていることに間違いはない。思い返すとなんだか恥ずかしくて顔が真っ赤になりそうだ。本当なら病院で話すんじゃなくて車の中とか家に帰ってからという形で話したかったのになんでこんなことになってしまったのだろう。
まぁ兎に角協力してもらえることになったんだ一旦はそれでいいことにしよう。
少しだけ気まずい雰囲気になりながら車で病院を後にした。
読んでくださりありがとうございました。
頭を使うのは難しいですね。無理矢理な感じじゃないといいのですが、無理矢理感がありましたらすみません。
次回もよろしくお願いします。




