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25.助かった?

開いてくださりありがとうございます。

長いので時間のある時にお読みください。

よろしくお願いいたします。

 空気が重いっ。

 自ら進んで空気を重くしたことに間違いはないがこんな風にするつもりはなかった。自分でもなんで人の怒りを煽るような言い方をしたのかわからない。本来だったら土下座してでもなんとかしてもらうという考えだったのに。

 せめて誰か口を開いてくれ。

 だが残念なことに誰も口を開くことはなく。沈黙が続いたまま家まで戻ってくることになった。

 お父さんは真っ先に降りてさっさと家に帰ってしまった。

「やっぱり怒ってるのかな…。」

「どんな風に接していいかわからないんじゃないでしょうか。ありがとうございます。瑠雨さん。夫があの子のことちゃんと思ってるんだってわかりましたから。」

 本当に大切に思っているかはわからないが完全に愛が無くてただただ利用していたという事実はないということはわかった。本人じゃないから真実はわからないけど遥さんの言うことも一理あるのかもしれない。完全にそうではないと思うけれど何事も悪い方ばかり考えるのもよくないな。

 鍵の開いた引き戸を開ける。そこにはお父さんがまだいて何故だろうと思って背が高いから横から覗き込むとそこには…

「お願いします!露忌を助けてください!!」

 元気のいい声が聞こえる。声が大きくて耳を塞ぎたくなった。

 喪摸だ。まさに僕が想定していた懇願の仕方である。

 何故いきなり土下座をするんだ。

 失礼かもしれないが少し笑いそうである。これが説得もなにも終わっていない段階だったら全く笑わないかもしれないが終わった話だと知ると口角が上がる。

 本人の顔は真剣そのものだった。

「喪摸、実は、」

「その話ならもう聞いた。…お前らにとって露忌はそんなに大事か?」

 僕の方にも少し振り返る。答えは決まってる。

「「当然です。」」

 少し考えこむような顔をした後振り返って僕を押しのけてどこかに行ってしまった。

「あっちょっ、」

「喪摸もう話は承諾してもらってるんだ。」

「えっ?」

 耳を疑うような顔をして聞き返す。

「僕がお父さんのこと説得したんだよ。」

「嘘!?すごいじゃない!あの偏屈親父をよくやったわね!」

 大変喜んだ顔をする。よかった。これは役に立ったということでいいのだろうか。この状況で僕にできることは少ない。できことは物事をできるだけ早く進める手伝い程度。

 方法がどうであれ成すべきことは成せたんだ。

「それにしてもどこに行ったのかしら?」

「さぁ?」

 見た限り敷地から外に出たとは思えない行けるとしたらこの家のどこかか神社の方ぐらいだ。

「お姉ちゃん、お兄ちゃんお帰り!」

 魔嚥がおぼつかない足取りで玄関の方にやって来ていた。

「駄目!」

 魔嚥が外に出ようとした瞬間目の前に何かが降ってきた。それは僕の目の前に落ちる。

 なんだこれ…

 よく見る、いやよく見なくてもわかる。それは包丁だった。

「っ!?なんだ、これ。こんなのどこから飛んできたんだ。」

 僕は驚いて少し仰け反る。

「魔嚥ちゃんお外は危ないから家の中にいようね。」

 遥さんが言う。

 ギリギリで喪摸が止めたらしくそれが誰かに刺さることはなかった。

「うん…ごめんなさい。」

 悲しそうな顔をした。

 どういうことだ。

「魔嚥ちゃんなんだけど、この子本当に呪われてるみたいなの。」

「それってどういう…」

「お伝えした通りこの子は呪われています。それが誰なのか誰も話そうとはしませんがこの家の中だと呪いも少しだけマシになるので極力出さないようにしているのです。」

 遥さんは魔嚥に近づいて首に巻いてあるチョーカーを取る。

 そこには縄で絞められたような赤い線が入っていた。

「この印からして新佛に関係してるとは思うのですが何がというのはまだわからなくて、取り敢えず呪いが軽減される家の中に入れるのですがどうにもできなくて。」

 僕も首が取られる前兆とかそういう話を友人から聞いたことがある気がする。

「これは相当やばいわよ。いきなり電気が消えたり棚が倒れたり、地震のはずもないのに家が揺れたり、あと家具が勝手に動いたりで大変だったんだから。」

 はぁ、とため息を喪摸は吐いた。顔からみるに相当疲れて良そうだ。というかそんな心霊現象みたいなことが本当に起こるのだろうか。

「どうにかはならないんですか?」

 この呪いがどのぐらい怖いか僕はまだ実感はしていないが、知らない所から刃物が飛んでくるというのは、大分殺意が高めの呪いのようだ。

「夫がどうにかしようとしたのですがあの状態でこれをどうにかはできないでしょう。

 そうなると家に帰せるのは大分先になると思います。」

 魔嚥は何を話ているかわからないのかきょろきょろとしていたが最後の言葉を聞いて、目に涙が浮かんできている。

「遥さんあたしお家帰れないの?お母さんに会いたいよ。」

 悲しそうに俯いた。

「ねえ瑠雨。」

「なに?」

 この状況で聞くとしたら思いつくのは一つしかない。

「幽羅とかにも聞かないとだけど魔嚥ちゃんこと私達でどうにかしてあげられないかしら。」

 やっぱりだ。

 僕は正直なことを言うと全然良いと思う。僕には詳しくはわからないけれど喪摸が動きたいと思うほどの事態ならば協力したい。それに完治するまでこの家にずっといるのは可哀そうだ。

「僕は賛成だけど、”二人”に聞いてからにしようか。」

 少し驚いた顔をした後真剣のような笑っているような顔になって

「ええ!」

 と頷いた。

「まぁまずはあいつをどうにかしないとだけどね。」

「あっ幽羅に報告しないとだ。」

 忘れていたわけではないが後回しになってしまった。申し訳ない。終わりが見えない中一人で能力を使い続けるのは大変だろう。

 僕は靴を脱いで床に上がる。

「魔嚥ちゃんのことは私が見ておくので、息子のこと宜しくお願い致します。」

 遥さんは靴を脱いで上がり僕らに深く頭を下げた。

 それを見て一応僕も頭を下げる。

「お姉ちゃん達またね。」

 魔嚥は軽く手を振った。僕も振り返す。

 喪摸は家の構造をある程度覚えたらしく。先を歩いて案内してくれた。

 ちなみに僕は全く覚えていないので喪摸がいて助かった。

 二階に上がって扉を開ける。そこは先ほどとほとんど変わらない。変わったことと言えば日が落ちて窓から見える景色が夕焼けになっていることくらいだろうか。

「お帰りなさいませ。」

 幽羅はこちらを向く。僕は固まった。顔が只得さえ白いのに今は真っ青だ。とても普通には見えない。

「顔真っ青だけど大丈夫?」

「はい…大丈夫ではあるのですがかなり抵抗が激しくて。もしこのままワタクシが倒れて一瞬でも離れれば即怪異になると思います。」

 そんなに大変な状況だったのか。目に見えない所で戦っていたんだ。大丈夫とは言っているがとても大丈夫には見えない。あとどのくらい持つのだろう。

「あとどのくらい持つの?」

「頑張って二時間ほどだと思います。」

 二時間以内にお父さんは戻ってくるのだろうか。


 僕は幽羅に状況を説明した。

「よかった。ではあとはお父様が来るのを待てばいいのですね。それにしても完全に愛されていなかったことがなくてよかった。」

 ほほ笑むが顔色のせいで無理をしているようにしかみえない。

 お父さんはいつやってくるのだろうか。どこに行ったかはわからないが残り二時間。それまでに帰って来てくれるといいのだが。


 僕らはその場で待った。それから暫くも経たないうちに階段を上る重い足音が聞こえた。

 来た。

 それは地下ずくと静かに扉を開けた。

 間違いなくそれは露忌のお父さんだ。ただ恰好は神社の人がしている格好に酷似していて、手にはそこそこ大きな筆が握られていた。他にも何か持っていたがじろじろ見るものでもないかと思い目線を逸らした。

「邪魔だからあいつを一旦どけろ。」

 何をするんだと思ったら第一声がこれだ。本当にこいつにできるんだろうか。ただ頼みの綱なので僕は言われた通り露忌を部屋の中心から移動させる。

 するとお父さんは中心までやって来てガラスの入れ物に入った墨らしきなにかに筆をつけると畳に直接なにかを書き始めた。

 直接書いていいのかはわからないがここは彼らの家だから僕が気にすることではないか。

 お父さんは迷うことなく筆を進めていく。

「幾何学模様?なにか意味でもあるのかしら。」

 喪摸が呟く。幾何学模様というのは数学的な計算や規則性に基づいて描かれたもので意味はないはずだ。てっきり喪摸のことだから知っているだと思っていたがなんでも知っているというわけではないのか。

「幾何学模様と一般的には呼ばれていますがあれは神を尊重する記号で、力を持つ者が権限を行使する時に使われます。神ごとに記号が違ってそれぞれに意味があるらしいです。」

 幽羅説明を加えた。

 要は魔法陣という認識であっているだろうか。この世界には魔法は無いがそういう変な力とか記号はあるようだ。言われてみれば幽羅が先ほど能力を使っていた時に現れた模様とも似ている。

 お父さんはそれを書き進めて良き最終的には大きな陣が出来上がった。

「そいつをここに持ってこい。」

 自分でやればいいのにと少し思うが助けてもらっている側だそんな贅沢は言えない。

 僕は露忌抱えて中心に置いた。そういえばだけど軽い。ふざけて同級生を抱えた時よりずっと軽かった。本当に食べているのか不思議になる。

 僕が露忌を置いてその場を離れると彼は何かの液体を露忌にかける。ばら撒くようにかけた。なにをかけたのかと彼の手元を見るとそれは日本酒___御神酒というものだろうか。

 その時幽羅が苦しそうな顔をした。それは何らかの効果を発揮したようだ。

 お父さんは人型のような紙を持って何かを言い始めるなんて言ってるのかは聞こえないしそもそも僕が知っている言語ではない。

 言い始めたのに少し遅れて陣が薄く光る。

「螟ゥ縺ォ蜷幄?縺吶k謌代i縺檎・槭h縺昴?閨門錐縺ョ蜉帙r雋ク縺励◆縺セ縺医?ら樟蝨ィ陦御スソ縺ァ縺阪k蜈ィ縺ヲ繧呈?縺梧?蟄舌↓縺九¢縺輔○縺溘∪縺」

 なんだか耳がおかしくなりそうだ。どこで発音したら音が鳴るのだろ。ただその言語には聞き覚えがある。最初僕が特異異変を使った時同じような言葉を話した気がする。

 言い終わると紙から白と黒のなにかが吸い取られるように出てきた。段々と大きくなる。

 同時に電気が消える。停電なんてわけないからこれは何かの現象だ。

 天井に達しても収まることのない大きな体。上から見下ろされるような感覚。顔はわからない。顔らしき所にはぐるぐるとして渦巻いていてそれがなにかは認識できない。僕が今まで見たような怪異のような異形の見た目。炎のように揺らめいている。見た目こそ不気味だが何故か怖いという感情は出てこなかった。だがこれは人間の領分を超えたナニカだと言うことは伝わる。

 それらは棒のような骨のような手を露忌に重ねる。するとそれらは入り込むように露忌の中に消えていった。

 体が薄く光る。

 一瞬部屋を覆いつくように壁や天井、床に文字が現れる。

 そのすぐあと陣は溶けるように消えて、電気が付いた。

「なにが…。」

「後は勝手にしろ。」

 そういうと彼は再び扉を開けて外へ出て行った。

 こんな現象を初めて見た。

 神事を行う人というのはこれほどまでに凄いのか。

 あっけにとられてしまったが本当に露忌は助かったのだろうか。

 僕達は露忌に駆け寄った。

読んでくださりありがとうございました。

本当に露忌は助かったのか。

次回もよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
お父さんの使う技、すごいですね。神秘的な感じがして良いと思います。映像で見てみたいです。
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