22.堕ちる
開いてくださりありがとうございます。
今回は短めです。
宜しくお願いします。
微かに聞こえた声。恐らく母親の声だろう。
「叫び声しなっかった?」
空耳かとも思ったが対して聞いていない声が空耳で聞こえるはずがない。僕だけに聞こえた声ではないかと思って喪摸に聞く。
「私も聞こえた。なにかあったのかしら...急いだほうがいいかもしれないわね。」
先程の状態を見るにかなり精神が不安定そうだった。それに母親は話すと言っていた。話し合いの最中になにかあったのかもしれない。と思いなるべく急ごうとする。
「堕ちないといいんだけど...。」
ぼそっと喪摸が呟く小さな声だったから聞こえなかった。
「え?」
「なんでもないわ。それにしてもこの家大きすぎてどういけばいいか。」
確かにこの家は広いそれに廊下がぐちゃぐちゃで下手をするとたどり着けないどころか迷ってしまいそうだ。地図でもあったら別だが家の中に地図があるなんてはずはない。
「声が聞こえた位置的に上よね?」
「じゃあ階段を探せばいいのかな?」
立ち止まっていてもしょうがないので取り敢えず歩き始めた。ここまで来た時に階段は見かけなかったからそれ以外の道だろうか。
僕達は広い家の中を歩いた。家の大きいせいか家具や物が少なく感じる。彼らは三人でこの広い家に住んでいたのだろうか。お手伝いさんも見当たらない。これじゃあ家の中の掃除は大変だろうな。
「ねぇ、お姉さん、お兄さん。」
突然後ろから声がした。
「わっ⁉びっくりした。君は誰?」
僕だけ驚いて声を出す。
見た感じ相当幼い。女の子?この家の子供なのか。いや、僕が聞いた限り露忌以外に家に子供がいるなんて聞いていない。じゃあこの子は一体...。
「あたし魔嚥!ねぇお姉さん達なにしてるの?」
可愛らしい声で女の子は尋ねる。手には兎の縫いぐるみを持っていた。
「魔嚥ちゃんっていうの?可愛い名前だね。魔嚥ちゃんはここに住んでるの?」
「うーん。住んでるんじゃなくて、ちょっとだけ預かってもらってる?の。あたしがいると皆んな不幸になっちゃうから…。」
「「?」」
僕らは顔を見合わせた。不幸になるとはどういうことだ。預かってもらってるということは一時的にここの家に住んでるんだろう。どの程度の時間ここの家にいたかはわからないがもしかしたら道がわかるかもしれない。
「魔嚥ちゃん、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「うん!なぁに?」
「僕達二階に行きたいんだけど行き方わかる?」
「わかるよ!あたしこの家のことはなんでもわかるもん。ふふっ博士って呼んでくれてもいいんだからね。」
そういうと付いて来て!と元気よく言ったあと歩き出した。
「よくわからないけど、付いて行っていいのかな?」
「まぁ闇雲に探しても永遠に見つかる気がしないからいいんじゃないかしら?」
かなり楽観的な意見だが状況的にしかたがないか。いや、別に魔嚥という子が信用ならないとかそういうわけではなくて、出会ってから一緒に行動するまでの時間が短すぎてあたふたしているだけだ。
魔嚥は鼻歌を歌い、軽くスキップしながら前を歩く。子供の歩みだけあっていつもより少し遅めだ。まぁ全力で走られると意外と早かったりするから全ての子供当てはまるというわけでもないが。
「ねぇお姉さん達ってなんでここにいるの?」
「友達の付き添い。」
喪摸は即答した。
「ツキソイ?ふーん。そうださっきね。二階にいたら知らないお兄ちゃんがいて遥さんと喧嘩してて、あたしもすっごい怒鳴られて怖いから一階に逃げてたの。だからちょっと怖いんだぁ。」
子供には少し難しかったか。二階、知らないお兄ちゃん…出てくるのは露忌しかいない。遥さんとは母親の名前なのか?
「そっか。怖い思いさせてごめんね。大丈夫、怖いことからは守ってあげる。」
喪摸は優しく言った。ありがとう、と魔嚥は言う。そういえばこの歳なのになんでチョーカーなんてつけてるんだろう。そういうファッションセンスなのだろうか。
「お兄ちゃんは?」
「え?」
僕?
「お兄ちゃんは守ってくれる?」
僕は...
別に大した質問じゃないしこれからなにかあるわけでもない、だけど一瞬答えに詰まってしまった。
前回、その前もなにもできなかったわけじゃない。少しは役に立てたと思う。
でも結局は足手纏いだ。僕がいなかった方が解決するのだって早かった可能性だってある。
、違う。変なことは考えるな。僕なんてまだ入りたてで経験した年月が違うんだ。戦い方だって教わってない。ちょっとずつでいい。なにもできないから変えていけばいいんだ。
「うん、頼りにならないかもしれないけど頑張るよ。」
だから調子には乗らない。できる限りのことを言う。
「うん!じゃあ、あたしにしっかりついて来てね。」
魔嚥はそう言うと今度こそ振り返らずに歩いた。
入口から階段は意外と近かった。かなり角度が急だがなんとか登りきった。
「こっち。」
二階もそれなりには広いが一階ほどぐちゃぐちゃした構造じゃない。
もうすぐだ。露忌にあったら何があったのかちゃんと聞こう。
そう思って踏み出したの同時。
「きゃあああ!」
悲鳴が聞こえた。高い、女の人の悲鳴。それと一緒に物が壊れる音も聞こえる。
これはやばい。絶対になにかあった。
魔嚥は驚いて耳を塞いでいる。
鈍感な僕にもどこから聞こえたのかわかる。今度は止まってるだけじゃない。ちゃんと走りだす。
二階は洋館みたいになっていて扉がある。
喪摸も一緒に来ていて。僕は扉を開けた。
開けて一番に見たのは荒れた部屋。子供部屋らしき部屋の家具や物はずたずたに切り裂かれていた。無造作に置かれていた紙が飛び散っていくつもの紙が宙を舞っている。中心には人が二人、うずくまる女の人とそれを呆然と見つめる少年。
「アンタっまさかほんとに...。」
喪摸が焦る。状況がまずいのはわかる。なにがあったのか詳しくはわからないが状況から察するにこの部屋の現状の原因は恐らく、露忌だ。
「俺は、なにを...」
焦点が合わない。僕らを見ているはずなのに全然違うところを見ているようだった。一言で言ってしまえば様子がおかしい。いつもの彼じゃない。場所のせいかもしれないが瞳は元の色がわからないほどい黒かった。
「違う、俺じゃない。本当に?、母さん。なんで、嘘だ。」
頭を抱え込んでぶつぶつと呟いている。とても正気には見えなかった。
露忌は本当に大丈夫なのだろうか。
僕は近寄ろうとしたけど喪摸に止められた。喪摸は歩いて露忌に近づくと首を手で打った。するとふっと意識が抜けたようにその場に倒れる。床に着くギリギリで受けてめて床に寝かせた。
またなにもできなかったし相変わらず喪摸はすごかった。
僕は恐らくもう大丈夫だと思い。部屋の中心へと向かう。
「大丈夫ですか?怪我とかはされていませんか?」
僕は遥さんに尋ねる。
「はい…けれど息子が、」
うずくまっていた彼女は顔を上げた。特に怪我などはなさそうなので怪我のことは安心だ。
遥さんは心配そうに露忌を見る。
「あの、息子はどうなっているんですか?」
露忌が心配なのだろう。不安が顔ににじみ出ている。
「怪異になりかけています。まずいわ、どうにかしないと。目が覚めるまでは時間がかかるから今のところは大丈夫。私達には状況が全くわからないから、なにがあったか説明していただけると助かるのですが。」
怪異になりかけている?怪異って僕が見た怪異ってことか?人間が怪異になることなんてあるのだろうか。しかし思いついてしまった。河岸先生だって幽霊から怪異になっていた。ということはあり得ることなのかもしれない。怪異になってしまったらどうなるんだろう。
聞きたいことはあれどここは一度話を聞くべきだろうと思い話を聞く姿勢に入った。
「遥さん?」
「魔嚥ちゃん!?」
入口には除きこむように魔嚥が来ていた。そうだ。彼女を置いて来てしまったんだ。やってしまった。誰か残らなきゃいけない時に残らないで、行かなきゃいけない時に行けない。最低だ。
「おっきい音がしたから来たんだけど…怖いよぉ。」
魔嚥は遥さんに駆け寄る。遥さんは魔嚥に抱き着いた。
「ごめんね。怖かったね。」
「ねぇ倒れてるお兄ちゃんは大丈夫なの?」
「うーんあんまりよくはないの。」
「やっぱりあたしがいるから皆んな不幸になるんだ…。」
魔嚥は悲しそうに言った。少し前から気になっていた。あの子がいるから不幸になるなんて、一時的に預かっていたと聞いている。なにか事情があるのかもしれない。
「それは違うよ。っ、すみません。あの後私は___。」
遥さんは重そうに話し始めた。
読んでくださりありがとうございました。
露忌は大丈夫なのか魔嚥ちゃんは何者なのか
次回もよろしくお願いします。




