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21.父と過去

開いてくださりありがとうございます。

そこそこ長いのでお時間のある時にお読みください。

宜しくお願いします。

次回の投稿はちょっと難しいので一日、日を置きます

 ドスッと音がした次の瞬間、男性は反対の壁まで吹っ飛んだ。壁にぶつかって下にずり落ちる。なにが起きたのかわからなかったが頭を必死に動かしてなんとか状況がわかった。男性が露忌を殴った後間髪入れずに露忌が男性の腹を蹴ったんだ。先ほどの発言から察するに男性は父親なのだろう。年を取ってはいるがかなりがたいが良く、背も大きい。それが軽々と吹っ飛んだ。

「いい加減目を覚ませ!」

 男性は崩れた体制のまま露忌に向かって叫ぶ。その表情に焦りが見える。その後すぐ下に俯いた。

「目なら覚めてる。お前こそ状況がわかってるのか?まぁいい。お前の人生はここで終わりだ。あの世で母さんに謝るんだな。」

 母さん?先ほどの女性ではない?

 露忌は少しふらつきながらも着実に男性に近づいていく。男性は首を絞められたのが苦しいのか咳込みながら蹴られた箇所を抑えている。先ほどの声は必死に出したものだったのだろう。苦しそうに悶えているのがその証拠だ、僕はその手になにか握られていることに気が付いた。先ほどまでは持っていないなかったはずのものがそこにはあった。それは初めて見るものだ。

___刀?いつも見たいに出したのか?いや、でも露忌はギターだったはず...

 左手に握られていたのは歴とした日本刀。初めて見るけど歴史の教科書で見たそれにそっくりだった。

 露忌は男性の近くまで来ると柄に手をかける。それを抜こうとしているのか刃と鞘がこすれる音がして、僕は本当にこの男の人が死ぬのだと思った。その時の僕の中には止めるなんて選択肢は無く、ただ目の前の声に圧倒されるだけだった。しかし、その音は途中で止まる。

「アンタ、自分が何しようとしてるかわかってんの?」

 喪摸だ。喪摸が鞘から抜けようとしてるそれを止めた。露忌は喪摸を睨んだ。喪摸は喪摸で表情に焦りと怒りが見える。冷たい空気の中暫く沈黙が続いた。

 暫く睨み合った後折れたのか溜息を吐く。

「はぁ...命拾いしたな。クソ親父。」

 そう言うとスッと刀が消える。目は今まで見たことが無いほど冷たかった。露忌はそのまま部屋から出て行ってしまった。追った方がいいのだろうか。でも目の前の男性のことが気になる。それに怪我をしているかもしれないし、放置して警察を呼ばれたら困る。この場合は警察を呼んだ方がいいのかもしれないが。

 すると廊下から誰かが走ってくる音がした。露忌ではない、軽い足音だ。

「アナタ!?大丈夫!?一体なにが...。」

 先ほどの玄関で出会った女性だ。心配そうに男性に駆け寄る。何があったのかはこっちが聞きたいところだが、それを知るためには目の前の男性に聞くしかない。

「お前には関係ない。」

「露忌と二人で話がしたいと言ってから大きな物音が何度も聞こえました。それをなんでもないと言えるのですか!?手もこんなに真っ赤になって...。」

 先ほど殴った時の手だろう。確かに真っ赤になっていた。

「やっぱりあんな怪しい会社に預けるんじゃなかった。何故理解しないんだ。あいつほどの才能はそうそうないというのに。」

 男はそういうとまた苦しそうにした。

「あの、」

 恐らくだけど蹴られた箇所は骨が折れているんだと思う。女性には僕達が見たことを伝えた方がいいかもしれない。

「貴様らいきなり入り込んできて、誰だ?」

 ようやく僕たちの存在に気が付いてくれたようだ。初対面の人間をいきなり貴様呼ばわりとは相当横柄な奴だな。

「あんたの言う怪しい会社の同僚で、露忌の友達よ。」

「そうか、お前らがうちの息子をあんな風にしたんだな。親に逆らうとはどんな環境に入れやがった?お前らのせいで露忌は変わっちまったんだ。あいつのせいで俺らが変な目で見られるんだぞ。今すぐ出ていけ。」

 男性は大変起こった様子で僕達に言い放った。僕は高圧的な態度に体がすくむ。しかし喪摸はふっと馬鹿にするように笑った。

「それが命の恩人に対する態度かしら?別にあのまま死んでくれても良かったのよ?」

「は?」

 喧嘩する時は同じ土俵に上がらないのが筋だがどうやら喪摸は同じ土俵に上がって真向勝負をするらしい。

 男性は喪摸の態度が癇に障ったようで怒りを露わにする。その横で女性が目を白黒させていた。

「お前らがあんな風にしなければそもそも起こらなかった問題だろ!」

「私達がいなかったらアンタはとっくに死んでるわ。そもそも助けてもらってありがとうの一つも言えないなんて道徳心が欠如してるんじゃないの?」

 理不尽な怒りに対して確実に相手を煽りにいくスタイルだ。

「なんだと?」

「嗚呼、昔の人だから教育が足りてないのね。それは仕方がないわ。」

「喪摸...。」

 前にも似たようなことを言った気がするけど昔の人ごめんなさい。これは喪摸の独断と偏見です。現実には一切関係はありません。

「アナタ、そこまでにしてくださいっ。」

「お前は黙ってろ!」

 男性が強い口調で言う。まるで昭和の親父だ。

「黙るのはアンタだ。お前には関係ないじゃなくて、まずは心配してる奥さんになにがあったか言うことだろう。」

 こういう感情的に逆行するタイプはプライドがあるからこういうことになるんだろう。逆立てすぎると手が出てくる可能性がある。そうしたら本当に警察沙汰になるかもしれない。感情に感情でぶつかるんじゃなくて冷静になれる一言を言うのが一番良い。だといっても下手に出すぎると調子に乗るからある程度怒りを持っていると伝える。お互い冷静に話し合うのが一番なんだ。

 僕がそう言うと男性は黙る。

 僕達は自分が見た限りのことを伝え、男性の怪我についても軽く触れておいた。

「そんなことが…。」

 女性は口元を手で押さえ悲しそうに声を出した。何について悲しんでいるのだろう、露忌にそこまでさせた父親の行動なのか、親を殺そうとした息子へのショックか。

「あの、僕たちはそこまでしか見てなくて何故そうなったのか。僕達にはわからないんです。」

「教えてくださり、ありがとうございます。少し息子と話してきます。」

「どこに行ったかわかるんですか?」

「これでも一応母親なので、少しはわかっているつもりです。御二方は縁側で休んでいてください。本当にありがとうございます。」

 男性に比べて女性は驚くほど丁寧だった。この男性の言いなりになってしまわないか心配になるほどに。

 女性がどこかに去り、男性は病院に行くと言って出て行ってしまった。人がいなくなると驚くほどに静かな場所だ。

 僕らは縁側へ移動する、そこからは綺麗に整えられた庭が見えた。

「あの人本当にお母さんなのかな?全然似てないし、共通点みたいなのがあんまり感じられないんだけど…。」

「あの人は本当の母親じゃないわよ?」

「えっ?」

 まさかとは思っていたが本当にそうだとは。

「あいつの家は昔から色々あってね。あの親父は昔はあんなんじゃなかったらしいんだけど…」

 小さい頃からあれでは大分苦労するだろう。僕は彼の過去について聞いてみることにした。

「ねぇ、露忌って昔なにがあったの?」

「私も全部知ってるわけじゃないけど、いいわよ。あいつは昔___」



 喪摸が最初に出会ったのはまだ小学校中学年の頃だという。その頃の彼は子供ではあったものの子供らしい顔つきは全くなかったそうで、誰のことも信じてない、信用しない。無気力で無口そんな雰囲気だったそうな。初対面の印象は本当に人間なのと疑ったと笑いながら言った。

 そんな露忌の事情を知ったのは小学六年生の時。

 彼の家は神社で祀っているのは絶対神。神社も物凄く大きく、父親は相当の神託を授かっていたが神社を運営するうえでさらに上の人達からは馬鹿にされ屈辱的な気分を味わっていた。母親は人外。その二人から生まれたのが露忌で。母親は出産後すぐに死亡していて現在の母親は再婚した人。この時父親はかなりショックを受けた。

人外の特殊能力と神託持ち、これ程望まれた子供はいないと信者や普段見下す上の人たちは高ぶった。そこで父親は気が付いてしまったのだろう。

 父親はそのプレッシャーから段々今の性格になっていく。最中で神託の強さに父親が気づいた。僕には神託がなにかわからないが神社や神を祀る際に関しての才能だとか。

 いつの間にか父親はストレスでおかしくなり、今の性格になった。息子に後を継がせるだけじゃなく上の連中を見返して自分が上に行くためにに幼かった露忌には耐えられないほどに厳しく育てた。結果、彼の精神は限界になって、半分死んでいるような状態になり、母親がそれに気が付いて逃がすように東京にあった異変解平社に入れたらしい。

 しかし露忌は今の母親を母とは認めていない。

 本当なら高校生になったら家に帰す予定だったが本人の意思で今も異変解平社にいると喪摸は話した。最初は尖っていたらしいが月日が流れるうちに今の彼になったと懐かしそうに言っていた。

 そして父親は今でも彼を宮司にしたがっていて意見の食い違いでああなったのではないかとも。

 僕はその話を聞いて息が詰まる。いつだって楽しそうな彼にそんなことがあるなんて思わなかった。ただ見ただけではなにもわからないんだ。

 父親だって最初からあんな性格じゃなくて元はもっと優しかったのだろうか。誰が悪いのかわからなくなる。大雑把にまとめたから伝わらないかもしれないが僕が聞いたのはもっと重苦しくて暗い話だった。喪摸が話していなかったらお通夜状態になっていただろう。

 僕の顔を見て喪摸は笑ってあいつ結構昔のこと気にしてるから言わないであげてね。と言った。


「で、あいつは今好きなことやって生きてる。私は今の方が好きだし。実家からは帰ってこいって言われてたらしいけど無理やり突っぱねてたから仲は相当悪かったでしょうね。特に親父さんとは。」

「摸喪はどうやってそれを知ったの?」

「ん?えーっと先輩が教えてくれたのよ。第一、露忌を連れてきたのだって先輩だし。嗚呼、なんでうちに連れてきたかって言えばうちは神社と繋がりが深いからなんだけどそれも先輩の功績よ。」

 喪摸は凄いでしょと言った。

 先輩は死んだと聞いていたからもっと重い感じなのかと思っていたがそんな気軽に言っていいのだろうか。

「私も受け売りだから全部を知ってるわけでも正しいわけでもない。それは直接本人に聞くべきだわ。」

 喪摸は縁側から立ち上がる。

「結構時間も経ったし私達も探しに行きましょうか。」

「うん、そうだね。」

 僕も立つ。どこからで露忌の名を叫ぶ音がした。

読んでくださりありがとうございました。

過去もっと重くしたかった…。いつか露忌視点の話も書きます。

次回もよろしくお願いします。


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