16.三瀬ダムの怪(伍)
開いてくださりありがとうございます。
長いので時間のある時にお読みください。
宜しくお願いします。
「と、言ったはいいもののどっちに行けばいいのかしら?」
当然村は一直線に続いているわけではなく、入口のあたりは一本道だったが、今いる地点からだと道がいくつもあった。
「いつ裂け目が閉じるからわからない以上迷っている時間はあまりないですよ。」
そう急かされても、わからないものはわからない。あの女性は村長がどこにいるかまでは教えてくれなかった。僕は必死に思い出す。結果たどり着いたのは村長___の居場所まではわからないが子供達が殺された場所だ。。
「ねぇ、子供達が殺された場所だったら心当たりがあるけど...行く?」
勇気を出して言ってみる。丁度そこの分かれ道には夢で見たらしき階段があった。
「殺されたって...神社じゃなくて家らしき場所でしょ?」
「いや、殺されたのがそこなら忌箱だって近くにあるかもしれない。時間がないなら行ってみよう。」
露忌が少し考え込んだあとそう言った。ここからは道を知っているのは僕しかいない、だから僕が一番前を歩くことになった。なにがあるかわからない。まだ使い慣れてはいないが一応僕も武器を出して向かうことにした。
泥濘んでいた地面と違って階段は石製だった。昔にできたからか横幅や高さが違う。転ばないようゆっくりと、でもできるだけ早く登った。
そうやって階段の中盤まで進んで来たあたりで人がいることに気がつく。見た所、彼らは僕達には気づいていなくて必死になにかを話し込んでいた。
「なに話してるんだろう。」
そう思って僕が足を出した所、僕の前に幽羅が出た。
「なにがあるからわからない以上ワタクシが前に出ます。」
「いや、俺が...。」
「露忌は集団には不向きですし喪模はまだ”それ”を使いこなせていないでしょう?」
後ろでなにかを握り込んだ音が聞こえる。
幽羅はなるべく足音を立てないようにしながら彼らに近づいた。数秒後幽羅が手招きするのが見えた。僕達はそれを見た後、駆け足で近づく。
「幻影です。恐らく忌箱の。」
そう言いながら彼らに触れようとしてそれは貫通した。彼らは先程の女性とは違って洋服を着ている。それらは全員ガタイの良いからだをしていたが、触れないとなるとなんだか投影された3D映像のようだ。近くまでいくと彼らがなにを話しているかが聞こえる。
「どうしたものか...。この村に人が入ったら子供を間引いたことがバレる。」
やはりこの村にはそういう風習があったようだ。するとある男が顔をしかませて言った。
「骨を全部埋めれば...いや、多すぎるか」
「それに最悪こないだ間引いた子供が生きてて見つかる可能性だってある。そうなりゃ俺達は犯罪者だ。」
この間、ということはこの時代になってもまだ間引きの習慣は続いてたらしい。露忌から聞いたがこの辺の土地は不毛の土地らしい。時代が変わっても変わらないものはあるということだ。
「俺の子供も見つかったら俺は捕まるのか、クソッ。」
「あのダム建設さえ潰れれば...。」
「そうだ、忌箱があるじゃないか。」
ある男が思いついたように言った。
「嗚呼、昔先祖が造ったやつか?馬鹿だな、あんなものが本当に効果があるとでも?」
「やってみる価値はあるだろう。」
「そうだな。」
そこで彼らの会話は終わった。その後、彼らの姿が薄れ姿は消えてしまった。
「殺すぐらいなら産むなってわけにもいかないのかね。」
「産んだ責任くらい取りなさいよ。」
二人は怪訝な表情になりそう吐き捨てた。
二人の顔も怖かったが一番怖かったのは幽羅だ。
「死に腐ればいい。」
なんだかこの三人は親子の関係性に怒ることが多いように感じる。もしかしたら彼らとなにか関わりがあるのだろうか。
「いっ行こう...。」
僕はなんとか言葉を発して先に進む。
それから数分なんとか僕は階段を登りきった。皆んなは疲れていないようだけど、僕はへとへとだ。這いつくばりそうな体をなんとか起こして前を見る。
「あった...。」
そこにはそこそこ大きな家があった。夢で見たのと同じ。古いけどかなり立派な造りだ。
「ここが殺された場所ってことであってるか?」
「うん、多分。でも殺されたのは家の中でそれがどこの部屋かはわからないんだ。」
僕は玄関まで歩く。中に人はいるのだろうか。僕が玄関の先数メートルの所まで着た時だった。
「瑠雨!あまり近づかないで!」
幽羅が叫ぶ。
「え?」
引き戸が物凄い勢いで開いた。
「お前ら、なんの用だ。」
そいつは開けたはずの扉から離れていたにも関わらず僕の喉に包丁を向けていた。動きが早い。思わず冷や汗が出る。
皆んなが武器を構えるがそいつは
「動くな、動いたからこいつを殺す。」
と言って更に包丁を近づける。これがもし露忌だったら包丁を奪って押さえつけるくらい苦じゃないんだろうけど、生憎僕にそんな運動神経は無い。喉に冷たい感触が走る。このまま刺されたら僕は死ぬんだろうか。しかしなんで僕ばっかりこんな目に遭わなきゃいけないんだろうか。まぁ僕が先走って近づいたからいけないんだろうけど。
「なっなんでいきなり殺そうとするんだ、僕達が君に何をしたんだ。」
口をなんとか開いて会話を試みる。
「お前らには秘密を知られたからな。お前だけじゃない、お前を殺した後全員殺す。」
どこからそれを知ったんだろう、いや、ここは異界だここの中のことくらい全部お見通しってことだ。
「来い。」
そういうとそいつは僕の頭を掴んで引きずり出した。正直痛い、いや普通に痛い。そいつは老人のような背格好をしているくせに、力はとんでも無く強かった。
「痛っ...」
「瑠雨!」
「ついてくるな!」
そういったそいつの顔は尋常じゃないほどに恐ろしかった。僕は為す術がないまま引きずられていった。
そいつは背を時々振り返りながら僕をある所まで運んだ。
僕にとってそこは見覚えがある場所だった。夢の中で殺された場所。あの狭くて暗い部屋。嗅いだことがあるからわかったが、そこは物凄く死臭が漂っている。鼻が腐るんじゃないかと思うほどだ。部屋についた時そいつは僕の頭から手を離す。
___逃げるなら今だ。
でも、僕は見てしまった。
そいつが持っていた明らかに禍々しい雰囲気を放つもの。
「い、みば、こ...。」
状況的に皆んながいるかわからない。でも僕が今逃げてしまったら別の場所に移されるかもしれない。それに時間もあと何分残っているかもわからない。だったら、やるしかない。でも僕に人を殺せるんだろうか。違う、こいつは人に見えるだけだ。怖い、けど、
僕は息を吐いて、声を殺し武器を手に取る。”それ”が後ろを向いたその瞬間。
僕は首を掻ききった。
鮮血が視界を染める。顔に冷たいなにかがついた。眼の前には落ちた頭、そして未だに血を出し続ける頭の無い身体。
そしてコロンと音がして箱が転がった。
「はぁはぁ...はぁ、はぁ」
力が抜けた。僕はその場に崩れ落ちる。
落ちた頭を見てその口がかすかに動いたのを感じた。
「ぎゃああああああああ」
それは沢山の子供の声、それが大きな悲鳴となって僕の耳に刺さる。それは苦しそうに叫んだあと小さくなって消えた。
「瑠雨!」
そのすぐ後に後ろから声がした。相変わらず足音がしない。露忌が僕の前まで走ってきて僕の前にしゃがむ。
「大丈夫か?なにもできなかった。すまん。」
自分よりとても焦った顔をしていて、自分より焦った人を見ると落ち着くというのは本当らしい。なんだか少し落ち着いた。
「ごめんなさい、瑠雨。今、アンタに人型を殺させるつもりはなかったの。本当にごめんなさい。無事でよかったわ。」
「瑠雨、痛かったでしょう?もっと最善の選択肢はあったのに...。」
「そんなに謝らないでよ。少女漫画の主人公じゃないんだから、」
「ふふっそうね。私達がしんみりしてたら世話ないわ。」
喪模がにこりと笑う。
「そうだな、瑠雨は俺達が思ってるより強かった。すげぇよ。」
露忌が僕の頭の上に手を置いてぐしゃぐしゃして笑った。そういえば前の異変の時もこうやって言ってくれたことを思い出す。
「でも、僕、人を...。」
「それは過去の残影!アンタは人を殺してなんかいない、よく見て。」
喪模がきっぱりという。
さっきまで人だったそれは子供が造ったようなガラクタになっていた。横たわる体も、飛んだはずの首も、それは全部偽物だった。僕は安堵する。現実感がない。けどあの体を断ち切った瞬間の感触を覚えてる。
いつかこれが当たり前になる日が来るのだろうか。例え事実が違えてでも、人を斬る感触を覚えてしまえば、人を殺すことに躊躇いなんてなくなるんじゃないか。そう思うと怖くて堪らない。
「どうした?なにか思うことでもあったのか...?」
露忌が普段と全く違う優しい声で言った。それは心配しているような少し怖いと思っているような声だった。
「僕は...、ううんなんでもない。」
「そうか、いつか話してもいいと思える日が来たらちゃんと言え。」
優しい声でそう言った。僕はなんだか完全に気が抜けてしまった。この仕事をしている以上、いつかは立ち向かわなきゃいけない問題なんだ。話せる日が来たらいつかちゃんと言おう。
「うん、あんたらいい感じの仲になったじゃない。」
喪模が肩に大鎌を肩に担いでケラケラと笑う。
「これは恋愛小説の始まりですかねふふっ」
「ちょ、俺は...」
「まぁまぁ瑠雨が無事でよかったわ。うーん、それで忌箱はどこにあるのかしらね。」
「嗚呼、それならそこに、」
僕は転がった箱を指さす。それはまだ同じ形をして転がっていた。
「ええっ!?」
「なんで...。」
「多分さっきのお爺さんが僕を殺そうとして出したんだと思う。」
恐らくだけど。
「...これ、触って良いの?」
「いやですが、持ち帰らないとですし...」
「じゃあ持ってくわね。」
喪模は片手でそれを掴んで、持ち上げる。中に一体なにが入っているのかは考えたくない。それを手に持った時、喪模ははっとした顔になる。なにかあったのだろうか。
「どうしたの?」
一呼吸置いて喪模が言った。
「やばい、閉じるっ」
喪模がいきなり走り出した。僕達は慌てて喪模に付いていく。
「ちょ、どうしたの?」
喪模が早くて僕は全力で走る。先程の階段で酷く疲れていたから、本当に苦しい。
「あれが、裂け目が凄い勢いで閉じ始めたのっこのままだと帰れなくなる。」
「急いで!」
僕は転ばないように極力注意しながら全力で走る。
やっと階段を降りきった時には僕の体力はとうとう限界を迎えた。ここから入口まで走るのかと思うと地獄のようだ。
目の前の状況を見て息を飲む。
僕達は半狂乱した人間らしきなにかに囲まれていた。今にも襲いかかろうとしている姿を見て僕は気を失いそうだ。
「嘘だろっ!?」
「止まってなんかられない、走りに抜けるわよ!」
先頭は喪模が大鎌で裂きながら走る。僕は段々と皆んなに追いつけなくなっていた。すると、
「瑠雨、すまん。」
え?と言おうと思った時には僕は露忌の脇に抱えられていた。遅いのはわかっていたがこれじゃ完全に足手まといだ。
「喪模、露忌が瑠雨を抱えた為、動けなくなりました。横はワタクシがなんとかします。ですから喪模は先頭で薙ぎ払ってください。」
「りょーかい、やっと本領が発揮できる。」
喪模は得意げに言った後、まるで体重が無いかのように動き回った。くるくると体や大鎌を回してまるで踊っているかのようだった。しかし、当人達にそんな余裕はないだろうがあれは必死なのだろう。横を見れば幽羅は走りながら何かを打ち続けている。それと同調するように横から来たモノが破壊されていった。
「見えた!」
視界の先には前に見た時より大分小さくなった裂け目があった。僕達___三人はそのまま走り抜け人一人が通れなくなるぎりぎりで裂け目に飛び込んだ。
読んでくださってありがとうございました。
ちょっと展開が早すぎたかもしれないですがなんとか書き切れました。
緊迫した状態が伝われば幸いです。
次回も宜しくお願いします。




