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15.三瀬ダムの怪(肆)

開いてくださってありがとうございます。今回の話は異変の真相に近づきます。

宜しくお願いします。

「さぁやるわよ!ダム異変!!」

 喪模はそう言って武器を構える。

「待って、待って。警察の人がいるから今武器出したら銃刀法違反で捕まるよ!」

 現場は封鎖され外からダムの上の道路は見えないようになっていた。幽羅が言ったからか昨日見た時より封鎖範囲が広い。中が見えないから中に警察がいるのかも何人いるかもわからない。そんな中で大鎌を振り回すのは危険すぎる。

「私武器なんて玩具だと思って見逃してくれないかしら?」

「「「無理!!」」」

 奇跡的に全員ハモった。

「先走りすぎだ。」

「はーい...。」

 喪模は残念そうに武器をしまう。

「でも、どこからやればいいわけ?」

「矢口さんがいればいいんだけど...。」

「別にダムの上だけじゃなくて村に近ければいいんなら普通に山に行けばいいんじゃ...。」

「えー...服が汚れる。」

 確かに服が汚れるのは困るな...どうしたものか考えていると声がした。

「お前たちここで何をやっている?ここは立ち入り禁止だぞ。」

「げっ見張りだ...。」

 確かに事件現場の外に誰も見張りを置いていないわけがなかった。

「いやっ僕達は知らくて...。」

「では先程そこの女性が持っていた物について聞かせていただきましょうか。」

 警察が険しい顔で僕達を見る。しまった、見られてしまった。

「どうしよう...。」

 僕達が顔を見合わせているとその警察に近づく者がいた。

「おい、そいつらは昨日俺は説明した奴等だ。」

 それは昨日の矢口と呼ばれていた人だった。

「刑事さん...。」

 僕には彼が救世主に見えた。皆んなもほっとした顔をする。


 それから僕達はダムの上の道路の中心部まで移動した。

「なんとかなりましたね。」

「捕まったらたまったもんじゃないわよ。」

 やはり中には鑑識含め刑事がいた。普段お世話にならない...というかお世話になりたくないが、そうならない僕はなんだか緊張するし、なんだか向けられている視線が怖い。三人は堂々としていたが、僕はビビリまくりである。

 恐らくの中心に着くと喪模は再び杖(?)と取り出した。

「じゃあ、やるからね。」

 僕達は頷く。

 それを見た喪模は杖を振るうするとガチャリと音を立てながら杖は大鎌に変形した。なんでだろう僕の少年心が擽られる。僕達と同じように喪模を見ていた警察もおぉと小さく言う。やはり物珍しいのだろうか。杖が変形し終えたあと喪模はふう、と小さく息を吐いて大鎌を振るうすると次元が裂けたように空間が切れる。それは以前見た時の真っ黒い世界と違って昔のような世界を映し出した。なんだかそれは鏡のようにも見える。周りは目を見開いていた。僕も凄いと思う。まるで小説で読むファンタジーだ。

「やった!」

 嬉しそうな声が上がる。

 裂け目は大きく人二人分くらいなら余裕で入りそうだ。

「ナイスだ喪模。」

 露忌と喪模はハイタッチした。

「一回でできるなんて凄いです!」

 幽羅は小さく拍手した。

「空間が繋がったということは、やはり原因のこの下にある村にあるということでしょうか。」

「わかんない、けど行ってみればわかるわよ。」

「行くぞ。」

「うん。」

 僕はそういって皆んなの後を付いていく。

 露忌達は裂け目まで近づくとその中に入っていた。僕も入ろうとしたが果たしてこれは大丈夫なのかという不安が走る。一度裂け目の眼の前で立ち止まって恐る恐る指先を入れてみる。一瞬水の中に入ったような、冷たい感触が伝わった。勇気を出して目を瞑って体ごと入った。

 ゆっくりと目を開ける。

 そこは本来沈んでいるはずの村だった。後ろ振り返るとまだ数ミリだが裂け目が段々と閉じていくのがわかった。閉じてしまったら帰れないのではないだろうか。

「これ閉じたら帰れなくなるんじゃ...。」

「タイムリミット、でしょうか。」

「この異界がなくなったら僕達どうなるの?」

「虚無という永遠の暗闇に放り出される。」

 それって相当やばいじゃ...。

「なるべく早く方を付けた方がいいわね。」

 行きましょ、そういうと喪模は先陣を切って歩いていった。僕は後ろを時々振り返りながら付いていく。


「といっても、なにを見つければいいのやら。」

 雨が降っているわけではないのになぜか地面は泥濘んでいて靴で踏むたびべチャリと歪む。僕は靴だからいいけど幽羅は草履だから相当嫌だろうな。

 村の広さはそこまでなく、ボロい家がいくつも並んでいる。

「家屋はあっても人はいなさそう。」

 そう言った時僕はある家に目線が止まった。なんだか気になってしまう。いや多分、動いたからだと思う。

「あの家、窓が動いたんだけど、人でもいるのかな?」

 僕は動いた場所を指さした。そもそも異界に人なんているんだろうか。見間違えだったら申し訳ない。

 そう言うと皆んな武器を構えた。そういえばだけど幽羅の武器をまだ見たことがない。代わりに手に持っているのはスマホだけ。異界でスマホなんて使えるはずがないが、なぜ持っているのだろうか。

 

 そのまま僕達はその家に向かって歩いた。扉まで着いた時、露忌は扉の正面に立ち、喪模達はすぐには見えない位置にいて様子を伺っている。僕はどうすれば...と思っていると幽羅が手招きする。僕は駆け足で移動した。それを確認した露忌が扉をノックする。誰も出てこない...と思っていると古い引き戸がゆっくりと開いた。

「はい...。」

 中から出てきたのは女性、服装は着物だが幽羅とは違ってボロボロだ。位置的に表情は見えないがそれでもわかるぐらい顔は真っ青だ。

「人...?」

「あれは幻視人よ。」

「原始人?」

「違う、幻想の幻と視るの視って書くの。」

 どうやら漢字が違ったようだ。

「へぇ...?」

「異界の原拠の過去を色濃く受けた実際には存在しない人。」

 なるほど、それは危険ではないのだろうか。


「貴方はここに住んでる人ですか?」

「ええ...まぁ、なんの御用でしょう?」

___この声聞いたことがある。

 どこだったか、夢、夢で聞いたことがある。あの時の女の人だ。露忌に伝えないと...

 なんとか身振り手振りで伝えてみようと頑張ってみるが露忌は、は?というような顔をしただけだった。

「いや偶々通りかかった者で...この辺のことをお聞きしたいな、と」

「そうですか、ですが生憎私は答えられる状況ではなくて、この先に村長がいらっしゃいますのでどうぞそちらへ...。」

 女性の声は暗くどこまでも平坦だった。僕はその様子をじっと見ていた。すると喪模が突然飛び出した。

 驚いて声が出ないでいたが、すぐにその理由はわかった。

 子供が小さい子供が露忌の後ろに立っていてその手が露忌へと伸びていた。

「露忌!!」

 声を聞いて露忌が振り返る。そのまま後ろに下がったことでなんとか触れられずにすんだ。

「あっぶね。」

 すぐ後に喪模が大鎌を振ったことで子供は掻き切れた。

「心大!!」

 女性が叫ぶ。僕と幽羅も露忌の方へと向かった。女性は目を見開いて泣き崩れる。その顔を見て確信に変わった。あれは夢で見た女性に間違いない。

「なんで...なんで殺したの!?」

 女性は狂ったように暴れ出した。すかさず露忌は女性を押さえつける。

「心大っ!なんで...」

「あれはもう人間じゃない、落ち着け!」

「違うっ、心大は生きてる、だってそこに、あれ...いない?」

 落ち着いた。そう思ったが女性は違った。

「あんた達が、あんた達が殺したんだ。また心大が戻ってきてくれたのに...許さない。」

 雰囲気が変わった。

「こいつっ力強すぎだろ!」

 抑えきれなくなった露忌が手を離して後退する。

 女性は長い髪を垂らして、襲いかかる。前と後ろに垂らされた髪の隙間から血走った目が見えた。その女性は這いつくばったあと飛び上がる。それが想像以上に早くて僕の位置からじゃ間に合いそうにない。露忌も体制からして防ぐことはできないだろう。喪模も今は大鎌だから銃を撃つことはできない。やばい、そう思った時。横でなにかの動きを感じた。

「赤い部屋は好きですか?」

 小さくそう聞こえた。一瞬時が止まったように感じる。視界の横には幽羅がいた。幽羅はスマホ見てなにかを打っている。

 次の瞬間赤い部屋は好きですか?というタブに女性は囲まれた。それに僕は思い当たる節があった。僕が家で見た光景あれは幽羅の特異異変だったのか。

 破裂音がする。

 女性は内側から弾けてぐちゃぐちゃになった。

「お母さんも、一緒に、行く、から、ね...。」

 もはや原型がなんだかわからないそれは掠れた声でそう言うと灰になったように消える。本気で子供を守ろうとした彼女を殺した。どっちが悪かわからなくなる。せめて死後に一緒になれることを願うばかりだ。それに幽羅のあの特異異変は正直怖い。前回もそうだが人じゃないとしても人型のモノを破壊するのは気分が悪かった。

「...。」

「瑠雨、これは人じゃない。幻視されただけのただ異物だ。」

 露忌はそう言うが僕はそうは思えなかった。

「女性に関しては幻視人だろうけど子供は...」

「怪異か呪いか、まだ検討はつかないな。」

「幽羅?なにやってるの?」

 声につられて僕も幽羅の方をみる。幽羅は先程女性が倒れた場所にしゃがみ込んでいた。

「これ...」

 僕達は幽羅の所まで行く。覗き込むとそこには昔の紙の束のようなものが落ちていた。

「なにこれ。」

「手紙?」

「でもこの辺の人達が文字が書ける気がしないけど。」

「読んでみましょうか?」

 幽羅は昔の字体が読めるらしく、声を出して読んでくれた。


 以下要約

『この村は不作により子供を育てるだけの余裕がない、だから自分の子供を差し出してほしい。差し出した子供は村の為に忌箱として作られ近くの村を滅ぼしこの村に余裕を持たせるための生贄となる。』


 僕達はそれを聞いて黙った。やはり僕が見た夢は関係があったらしい。とすれば、あの時死んだ子がこので手紙に書いてあった贄なのか。

「ねぇ、忌箱って?」

「開けてはならない箱のこと。中には間引いた子供や呪物などを入れて作られる物です。」

「これでこの異変の原因は呪いで決定だな。ダムの建設前、突然土砂崩れが起きて村が滅んだのは、誰かによって忌箱が開けられたと予測が付く。」

「でもこの時からずっと開けられてたわけないだろうし、昔使ったこれを誰かが開けたんだろうね。」

 だとしたら何故開けたのだろうか。

「これだけの異変を起こせる呪いとなると、瑠雨から聞いた通り沢山の子供を使ったのでしょうね。」

 幽羅はそっと手紙を地面に置いた。

「さっき女の人の口ぶりからすると村長がこの村にはいるだろうからその人の所に行ってみない?」

 原因が忌箱というのはわかったがどこにあるかがさっぱりわからない。唯一の手がかり先程の女性が言っていた、村長の所だけだ。

「場所の手がかりは無いからな、行くしかない、か。」

 露忌がそう言いながら伸びをして歩き出した。

「時間がありません、なるべく早く行きましょう。」


 そういって僕達はその家を後にした。

読んでくださってありがとうございました。三瀬ダムのモデルはありますが、そこで実際に何があったかは空想で、土砂崩れによって崩壊したあたりもフィクションです。

次回、忌箱はどこにあるのか。

宜しくお願いします。

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