14.三瀬ダムの怪(参)
沢山の方々に読んでいただいて有難い限りです。
今回も少し短めの話しになっています。
宜しくお願いします。
___ん?どこだ、ここ。
僕はあの後宿に行って疲れたからってそのまま寝ただけのはず。特に夢遊病を持っているわけじゃないから、知らない所に行くわけがなかった。
よく見ればこれは誰かの背中の上、つまり背負われているということになる。何故か自分はこの体は動かせない。なんだか既視感のある光景だった。視界に写るのは沢山の人と森だけ。同じ部屋で寝ていたはずの露忌は全く見えない。ここは山かなにかなのだろうか。不意に声が聞こえる。それは女の人の声だった。
「ごめんね...ごめんね。」
静かに呟いたその女性は泣いているように見えた。大丈夫ですか?と聞こうとする。しかし、
「お母さん?どうしたの?」
口から出たのはその言葉だった。どうやらこれはこの人の子供らしい。声から察するに体は小さくまだ子供だということがわかる。僕はその光景をただ見つめていることしかできなかった。
「ううん、なんでもない。良い?これから貴方は神様の子供なるの。これはとっても凄いことなのよ。」
その女性は涙を必死に堪えたような顔つきでこの子に言った。
神様の子供?この子は凄い子供なのか?違う、これは____。
「間引きの子供の準備はできたか?」
後ろから声がする。嗄れ声...そうとう年を取っていそうな声だ。
「はい...。しかしこんなに殺してもいいのですか?」
「飢饉で子供を育てる余裕などない。それにこれで未来の厄災から村を守れる。」
後ろからまた別の男性の声がする。やっぱりそうだ。このままだとこの子は殺される。こんな堂々と話しても逃げないのはまだ言葉を多く知らないからだろう。この女性が逃げないのはもうそれを受け入れているからで先程泣いていたわけも想像が付く。
___まずどうしよう...
そう思っても女の人が歩みを止めることもこの子供が泣き出すこともなかった。
「お母さん、神様ってどこにいるの?」
それを知らない子供は笑って母に聞いた。
「んーもうすぐ会えるわよ。」
「神社じゃないの?」
「神様はこういう静かな所が好きなの。」
神様ということはここは半神の仕業なのか?でもその可能性はないって言ってたしな...。
それから暫く女の人は階段を登る。
要約付いた頃そこには子供が何人もいた。一、二、三...七人もいる。皆なにされるかなんて全くわからないようだ。
「あっ◼️◼️ちゃん!おーい」
実に楽しそうだった。それを見た女性は子供を下ろして泣き崩れる。それを夫と見られる人が支えて一緒に泣いていた。
「?お母さん?」
「っ!なんでもないわ。ほら行きなさい。村長様後はお願いします。」
「うぬ、こっちだ。」
そう言うと子供達は皆村長と呼ばれた人について行った。
場面が変わる。
___暗い...部屋?
泣き声が聞こえる。隣から右を見る。
「っ...」
同じように息を飲む隣にいたのは首がない子供...いや首が近くに転げ落ちた子供。
声がして前を向いた。
「すまんな。これが村の為じゃ。」
そう言ったのは村長、隣には屈強は男。
僕が最後に見たのはその男が今の自分に取っては大きな大きな斧を振り下ろした瞬間だけだった。
「っ!!...はぁはぁはぁ。」
僕は飛び起きる、死んだ...わけではなさそうだが、今自分が生きているのか怪しくなって、手を握って見る。
ちゃんと動いた。よかった。気づけば汗がぐっしょりとかいていた。
さっきのはなんだったんだろう。前回の異変でもそうだが何故僕は毎回殺されるんだろうか。兎に角死ぬあの一瞬の恐怖感が体を襲う。
時間を見ればまだ朝の四時、隣で露忌はまだ寝ている。
起こしたら悪いし起きなくてよかったけれどちょっとくらいは起きてこの恐怖心をどうにかしてほしかったな...。明日もあるし寝ないとな...
そう思って寝ようと思ったが、また寝たら殺されるんじゃないか、と思うと僕はその後一睡もできなかった。
「おはよう、ってもう起きてたか。」
気がつけば空は日は昇って窓からは光が燦々と降り注いでいた。露忌は寝転がっていた僕に立ったまま声を掛けた。浴衣姿の彼の服は少しはだけていて女子に見せたら大変モテそうだ。もっとも本人は狙ってやっているわけではないだろうが。
「嗚呼、おはよう...。」
時間は八時を指している。
夢が怖すぎて一睡もできなかったから、声というか、物凄く暗くなってしまった。
「大丈夫かよ...。なんかあったか?」
露忌が心配そうに声を掛けてくれる。
「実は...」
僕は夢で見た内容を話した。
「瑠雨、お前いつから霊媒体質になった...?」
僕の眼の前に座って真剣に悩んでいた。
「いや、今回の件とは関係無いかも知れないし...。」
そうだ、ただの悪夢の可能性だってある。普段と場所が違うんだ環境に適応できなくて見ただけの可能性だって多いんだから。
「それはそうだが...瑠雨は大丈夫か?前回のこともそうだがトラウマにならないといいんだけどな。」
そういうと彼は僕の頭の上に手をぽんと置いた。
「あはは...ありがとう。」
すでにトラウマだが悪夢を見た際に痛みが無いのが唯一の救いだ。
その後僕達は服を着替えて宿の入口に集合した。
「おはよ〜って瑠雨、顔色すっごい悪いけど大丈夫!?」
喪模が近づいて顔をまじまじと見る。そんなにじろじろと見られる小っ恥ずかしい。
「寝らませんでしたか?」
「いや、別に...。」
可能性だけの話しをするのはよそう、と思って会話を躱そうとするが、露忌がちゃんと話した方がいいと言われたので僕は二人にも夢の話しをした。
「なるほどね...。でもあそこから近い神社なんて三峯神社くらいしかないわよね?」
「話しを聞く限りそこは神社とは言えない作りだったらしいし、ただの建前で所謂姨捨山みたいな感じなんじゃないか?」
「だとしたら何故その場で殺す必要があったのでしょうか?間引きだったら山の子供だけでは戻れない場所まで連れて行って置いていき餓死させるの通常でしょう?」
三人はうーんと唸った後一度考えるのを放棄したようだ。
「謎は深まるばかり....取り敢えず行きましょう。できれば今日中にでも片を付けたいわ。」
そういって喪模が先導して駐車場まで歩いた。駐車場は宿の眼の前でこんな山奥にもかかわらず車は結構止めてある。そういえば近くに川があるようで窓から遊んでいる親子の様子が見えた。こんなことになっていなかったら自然の川というものを見てみたかった。
そう思いながら僕は車に乗り込んだ。車に乗るとあっそうでした。と言ってなにかを渡された。
なんだろうと思って見るとそれはおにぎりだった。
「ありがとう。」
「申し訳ありません、実は予約する時に食事を付けるのを忘れてしまって...。」
幽羅が頬に手を当てて困ったように言った。
「じゃあ、出すぞ。」
それとほぼ同時に車が動き出した。
僕は窓の外を見る。一度見た景色ではあるが見慣れてはいない僕に取っては新鮮なものだった。それとついでにおにぎりを噛じる。
「ていうか瑠雨。服着てくれたのね。」
喪模が言っているのはこの間借りた服のことを言ってるんだろう。
「というか、僕私服が無くて...。」
「!?」
喪模が信じられないといった顔をした。
「信じられない、どうやって生きてるの...。」
そんなこの世の終わりのような顔をされても...。
「喪模、瑠雨はお金が無いんですよ。それに貴方のように月何十万も服につぎ込む人は稀です。」
幽羅は指を立ててそう言った。というか今何十万って言ったか?そんな大金どこから出ているのだろう。
「まぁ給料が良いからっていうのが一番だけど、やっぱり好きな物は好きなの!」
きっぱり言った。具体的な給料についてはなにも聞いていないがそんなに時給がいいのだろうか。それはちょっと楽しみである。しかし、全く雇用制度も時給も知らないまま入った僕は考えが足りなすぎる気もするがそこは気にしたら負けだろう。
それから暫く喪模の服オタクの話しが続いて気がついた時には昨日のダムについていた。
僕達は車を降りる。
「さぁやるわよ、ダム異変!!」
読んでくださってありがとうございました。このダムの真相は一体?
ちなみに喪模は300着以上服を持っているらしいです。
次回も宜しくお願いします。




