↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/28

10.初仕事(漆)(初仕事完結)

今回で初仕事は完結です。今回はいつもより短いので読みやすいと思います。

それでは宜しくお願いします。

「河岸...先生?」

 そう言うと男性はゆっくりとこちらに振り返る。

「先生、そう呼ばれたのは久しぶりです。ところで貴方方は?」

「...。」

 これはどうすればいいんだ...?倒すのか?この人を?こんな無防備で普通の人を?

「露忌...」

 助けを求めて露忌見る。露忌は真剣な顔をしていた。だけどその顔に殺意は無くて、そう思っていると露忌はゆっくりと口を動かした。

「河岸先生、もうこんなことやめてください。貴方は怪異としてこんな風に生きることは望んでいないのではないですか?」

 露忌が敬語で丁寧に話し出す。

「何故、ですか?私の尊厳を踏みにじり、生徒たちは私のことをまるで怪物かのように見て、大人達はそれを見てみぬふりだけでなく加害者にまでなった。こんな辛い思いをしたんです。」

 彼は苦しげに表情を歪めたあと振り切ったかのように表情を変えて続ける。

「最高ですよ。あの恐怖で染まった顔、今まで私がいくらやめてと言っても聞かなかったくせに自分だけは逃れようとしているんだから、ははっ惨めで仕方がない。」

 河岸は狂ったように笑顔になった。

「けれど、その中にだって悪意がなかった人だって...」

 僕はトイレで会った女の子を思い出して言う。しかし

「それが無いからこそ私も悪意ではなく単純な殺意で迎えたまでです。想像したことはありますか?もし私がこのまま幽霊として死ねば怨念だけがここに残りやつらを解放されない地獄に突き落とせる。」

 なにも言い返せなかった。どうしよう、僕は焦るこのまま彼が死んだらこの怪異だけが残る。そうなればここはもうおしまいだ。

「幽霊として死ぬということはあの世に行くこともなく完全に消えるということです、それでもいいんですか?」

 対して露忌は落ち着いている。

「今までのことに比べたら永遠の闇など怖くはありません。」

 はぁ、と溜息をついて露忌は河岸先生に近づく。

「貴方の奥さんはまだ貴方のことを思い続けているのに、本当にそれでいいのですか?」

 どういうことだ?、

「!?...彼女、は、まだ生きているのですか!?だって彼女は...」

 一気に様子が変わった。信じられないとでも言うように瞳を大きく見開く。僕には全くわからない。

「いいえ、貴方の知っての通り病気で亡くなっています。」 

 そう言って露忌はスマホを河岸先生に見せる。そこに写っていたのは若い女性。

「じゃあそれは...。」

 河岸は汗を滲ませて聞いた。

「彼女は今天界で生きている。そこでずっとお前のことを待ってんだよ。」

 河岸は目を見開いた瞬きをして次に見た時彼は泣いていた。それが悲しみなのかどのような感情から生まれたのかわからないが不意に出たようで彼自身も驚いていた。けれどそれよりも先にこみ上げる思いがあったようで

「私は彼女が死の淵にある時、そばにいてあげられなかった...なのに彼女はまだ私のことを待っているのですか!?」

 彼は更に涙を流した。どうやら河岸にも愛した人がいたらしい、彼女は死後も河岸のことを待っていたのだろうか。何年も一人で。

「嗚呼、そうだよ。アンタが帰ってくるんだったら一緒に地獄に堕ちたっていいそこまで言ってお前を待ってる相手がいるのにそれでもお前は死を選ぶのか?」

「でも、もう私は...。」

 河岸はその場に崩れ落ちる。

 露忌は下を見つめ何かを思っているように目を伏せた。

「はぁ、奥さんから手紙を預かっています。読みますか?」

 河岸は黙って頷いて手紙を開いた。

 それになんと書いてあったか僕に知るすべはないが、なにか彼の心に刺さるものがあったのだろう。彼は嗚咽を漏らし地面に伏せた。

「美寿の、美寿の字だ。ああぁあああ」

 そして無きながら彼は続けた。どうやら元々いつ死ぬかわからない状態で床に臥せっていたそうだが、どうやら彼が自殺する直前に病死したらしい、それが彼が行動に出る決めてとなったのだろう。

「ごめんなさいっただ、僕は、いくら虐げられようと美寿さえいればっ君さえいれば、ああ、なんてことをしたんだ。僕も死んだのに、もう一緒にいられないなんて...。」

 それから暫く泣き続けて彼はやっと落ち着いたようだった。そこで露忌が声をかける。

「河岸先生、先程も言いましたが、貴方が冥界へと旅立たれるなら美寿さんも貴方と共に行くと、言っています。」

 彼は一瞬固まった。

「そんな...そんなっ美寿を地獄に落とすなんて、僕には...。」

 僕はただそれを黙って見てることしかできなかった。その時どこからか声がした。

『大丈夫、一緒に行こう。維凱。』

 何かが目の前に現れた。薄く光り、少し透けた体。これは...幽霊?髪の長い綺麗な女性が河岸の近くに現れ頭を撫でる。なんだか柔らかい雰囲気の人だ。

「美寿!?、なんで...」

『ごめんなさいね。露忌さん。この人きっと私のこと思って決められないと思うから...。もう、全く、あんたには私がいなきゃ駄目なんだから...。」

 頬に手を当て困った顔した。

「一緒に逝ってくれるのか...?」

『ええ、勿論ですもの。』

 河岸は美寿に縋り付きまた涙を流す。それとほぼ同時に詰まっていた空気が切れた。彼の体が透ける。これで忌者からは遠のいたのだろうか。遠くから喪模の叫び声がした気がする。どうやら向こうで戦っていた怪異も消えたようだ。

「一見落着、か?」

「まだだ。瑠雨。」

「え?」

 よくわからなくてそう言うと露忌は彼らを指さした。

「冥界へ送り出す。」

「それってどういう...」

「はぁ...男子共、可愛い女子達が来てやったぞ」

 バンっと音がして扉が開く、そこには幽羅と喪模がいた。喪模は大鎌を担いでなんだかぼろぼろだし、幽羅も着物に汚れがついている。

「二人共!」

 そう呼ぶと、二人は手を振った。

「お疲れさん、」

 露忌と喪模がハイタッチする。

「あとはワタクシの仕事ですね。」

 幽羅がスマホに手を向けてなにか打った。すると僕がこの間見た広告のようなタブが出現する。それの数は多く何も無いところを囲んで、弾けた。

 すると赤い液体が大量に出て中心に何かが現れる。

___昔の船、に...大鎌?まさか...死神?

「幽羅様、お呼びくださりありがとうございます。」

 それは真っ黒な服を着た。人?で声は中性的でどちらかはわからない真っ黒なフードを被っているいるから顔は見えないが、どこか怪しげな雰囲気があった。それはそこそこでかい木船に乗って大きな鎌を持っている。

「ええ、それでは、」

 幽羅は目を伏せる。

「河岸先生、それと美寿さんも」

 二人は立ち上がってこちらを見て頷くそしてゆっくりと歩みを進め船に乗った。

 彼が乗った途端被害者と見られる人々も船に乗っているが彼らの顔に生気は無くただ立ち尽くしてるようにしかみえない。幽羅や喪模達と散々戦って消耗しきっているのだろうか。

「これで全員でよろしいですか?」

 死神らしき人は尋ねた。

「はい、あとのことは宜しくお願いします...。」

「勿論です。それではまたどこかで」

 死神?は鎌を振って次元を斬る。そこは裂けたように割れ、暗くどこまでも続くような海が広がっていた。死神と船はそこへ入る完全に船が入りきったときその裂け目は閉じた。次第に空が晴れる。見えなかった校庭も別館も見えてどこまでも黒かった景色は眩しいくらいに晴れた。

 隣を見ると3人とも立って手を静かに合わせていた。僕も慌てて同じようにする。そうか、彼らが黒服を着ていたのは葬式のような、死者を見送る為だったのだ。

  

 そうして僕たちは暫く手を合わせて、喪模が手を話し空を見た。

「終わったわね。」

「初仕事にしては、大分重かったな。」

 露忌が軽く笑いながら頭の後ろで腕を組む。

「河岸先生はいつか天界に行けるのかな...。」

 僕は見送った先生を思い出して、呟く。

「地獄にだって終わりはあります。ちゃんと罪を償った後、二人一緒に行けるでしょう。」

 幽羅は空を見て眩しそうに言った。

「今回は大分大変だったわね。皆んなお疲れ様。」

 

 そうして僕の初仕事は終わった。本当に大変だった。学校の壁を破壊したことが伝わればなんと言われるかはわからないがこれでもうこの学校で異変は起きないだろう。

 今回のことについて駄弁りながら僕は三人と校舎を出た___。

読んでくださってありがとうございました。ちょっと無理矢理感強いですかね?

事件が終わったあとの話しが次回チラッとでますが本編では初仕事は完結です。長く付き合ってくださりありがとうございました。次回作も宜しくお願いします。

瑠雨が??になってるのでそこの説明は次回ちゃんとあります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。