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新人VTuberの成り上がり 〜元大手敏腕マネージャーが、底辺の原石美少女たちを独り占めして世界一にプロデュースする〜  作者: 遙 カナタ


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第36話:公表

【特報:業界激震——弱小個人事務所『Vスタ』、大手広告代理店『Minty Agency』とのメインスポンサー契約および、プロeスポーツチーム『Trinity Raid』との電撃業務提携を同時発表!】


 西暦2026年、8月某日。正午12時整刻。

 大手プレスリリース配信サイト『PR WIRE』のサーバーが、瞬間的なアクセス殺到により悲鳴を上げた。

 主要ITニュース、大手経済紙、さらには国内外のエンタメ・ゲーミングメディアが一斉にトップニュースを差し替える。

 画面を覆い尽くしたのは、洗練された黒とシルバーのモダンなヘッダー。

 かつて『Live:CLOWN』を追放された異端のプロデューサー・織田駆が率いる個人事務所『Vスタ』と、業界最大手広告代理店『Minty Agency』社長・桜庭詩織の連名で出された、あまりにも規格外な【公式プレスリリース】だった。


 ──世界を穿つ、5つの弾丸。


 ①【超大型スポンサー締結】

 大手広告代理店『Minty Agency』が『Vスタ』のメインスポンサーに就任。潤沢な資金力と巨大な商業ネットワークにより、Vスタ全ライバーの活動基盤を完全バックアップ。


 ②【プロeスポーツチーム『Trinity Raid』との業務提携】

 格ゲー・FPSの二冠王者・OUKAが専属コーチを務める最強チームと全面提携。VTuberシーンとプロゲーミングシーンの相互送客および合同イベント展開を推進。


 ③【あかぎ蓮、『VTuber×格ゲープロゲーマー』二刀流参戦】

 あかぎ蓮がOUKA直伝の特訓を経てプロ格ゲーマーとして正式デビュー。Minty Agencyの全面支援のもと、世界大会予選へ出撃。


 ④【新技術『バーチャルフィッティング』によるアパレルブランドコラボ】

 神代弦が開発した高精度3D技術を活用し、製造前のリアル服をライバーに着こなさせて受注生産を行う革新的アパレルプロジェクトが始動。


 ⑤【『Vスタ専用個人マンション(新事務所)』建設計画始動】

 防音配信部屋、専用超高速回線、厳重なセキュリティシステムを備えたライバー専用マンションの建設に着工。ボロアパートからの完全脱出へ。


 そして──リリースの最下部、太字で刻まれた「最後の特報」が、ネット界隈の息の根を止めた。


『――歌姫・音無すず × 女王・天月ルナ。最強ユニットプロジェクト始動。ファーストライブおよびタイアップ企画、近日公開』

 

「……おいおいおい、正気かよ!?」

「Vスタ、個人事務所の皮をかぶった怪獣じゃねーか!!」

「すずルナユニット!? 歌姫とカリスマが組むとか、既存の箱全部吹き飛ぶぞ!?」

「蓮くんがOUKAの弟子になってプロシーン殴り込み!? 熱すぎて脳汁出るわ!!」


 SNSのトレンドは、1位から10位までがすべて『Vスタ』関連のハッシュタグで埋め尽くされた。タイムラインは狂乱の渦と化し、まとめサイトのサーバーが次々と落ちていく。

 同刻──業界最大手『Live:CLOWN』の最高経営責任者室。

 重苦しい静寂の中、鬼塚社長は自卓の大型モニターに映し出されたプレスリリースを、苦虫を噛み潰したような顔で見つめていた。


「……プロチームの後背を得るだけに留まらず、大手代理店を抱き込んで自前で『巨大な城』を築き上げたか……織田駆」


 かつて自分たちが切り捨て、潰そうとした男。

 その男が仕掛けた反撃の盤面は、もはや圧力や妨害など一切届かない領域へと到達していた。




 


 一方、西日が差し込むボロアパートの一室。

 埃の舞う室内で、駆はパイプ椅子に深く腰掛け、静かに缶コーヒーのプルタブを引き抜いた。プシュッ、と小さな音が響く。


「織田さん……! Xのトレンド、本当に独占しちゃってます! サーバーの負荷、弦さんが裏でギリギリ耐えてくれてますけど……!」


 タブレットを抱えたみあが、興奮で頬を真っ赤に染めながら声を弾ませる。その隣では、飛鳥が「海外のファンからも……『すずルナユニット楽しみに待ってる』って、ものすごい勢いでメッセージが……!」と涙ぐんでいた。


「フン、世間が騒ぐのは計算通りだ」


 駆はニヤリと不敵に口角を上げると、缶コーヒーを一口あおった。


「だがな、お前たち。真の『狂乱』はここからだ。世間を驚かせた分、突きつけられる期待値は跳ね上がった。……蓮、準備はいいか?」


 部屋の隅でアケコンを抱え、指先にバンテージを巻き直していたあかぎ蓮が、猛獣のような獰猛な笑みを浮かべて立ち上がる。


「言われなくても、OUKAの地獄メニューは全部叩き込んでる。いつでも世界の連中をぶん殴れるぜ」


「良し」


 駆は立ち上がり、窓の外──どこまでも広がる東京の空を見据えた。


「行くぞお前ら。世界に本物の『Vスタ時代』を見せてやる」


 ボロアパートの小さな部屋から、世界を呑み込む反撃の咆哮が、静かに解き放たれた。




 


 ——都内、とある一等地のアパートの一室。

 かつて、まだ誰も「バーチャルYouTuber」という言葉すら知らなかった時代。

 この日本に初めてVTuber事務所という産声をあげさせ、業界の歴史をゼロから創り出したレジェンドたちが、モニターを囲んで笑い合っていた。


「……見たかい? 織田のやつ、とんでもないプレスリリースをぶち上げてきたよ」


 グラスに入ったウイスキーの氷を揺らしながら、創業者の男が楽しそうに目を細める。


「ふふっ……既存の枠組みをブチ壊して、カルチャーそのものを次のステージに引き上げようとしてる。昔からあの男のやることは極端だけど、やっぱり最高に面白いね」


 隣に座る初期メンバーの女性も、スマートフォンの画面に躍る『Vスタ』の文字を見つめながら、満足そうに口角を上げた。


「ビジネスだの数字だのに縛られて膠着してたこの業界に、ようやく本物の“熱狂”を持ち込む奴が現れたわね。……私たちが始めたこの文化、どこまで面白くなるのかしら」


「楽しみだなぁ。……さあ、僕たちもぼやぼやしてられないぞ」


 黎明期を創り上げた開拓者たちは、まるで少年のように目を輝かせながら、Vスタが創り出す新しい時代の到来を、心から祝福するように静かにグラスを傾けた。

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