第80話:終焉と創世の「ま、いっか」――フル装備の村人、爆誕
【AM 10:00:フル装備の朝】
はざま村の朝。ログハウスの寝室で、ソラは「よっこらしょ」と起き上がった。
着用しているのは、英霊たちに拝み倒され、極大魔石のボタンに付け替えられた『万象吸収・安眠キラキラパジャマ』。
寝返りを打つだけで周囲の時空が洗浄されるこの衣は、今や一粒のボタンが超新星爆発級の輝きを放っている。
「今日は、ちょっと隣町まで資材を買いに行きましょうか。……あ、ハクさんのところにも寄りたいですし、ビシッと決めていかないとですね」
ソラは鏡も見ずに、枕元に置いてあった『真・麦わら帽子(最高神の羽:接着済)』を被り、足元には『創世のサンダル』を履いた。
そして仕上げに、胸ポケットには『万象断ち(箸)』を刺す。
「よし、完璧です。……少し派手かな?ま、いっか」
ソラがリビングに足を踏み入れた瞬間、ログハウスの構造材である世界樹が、歓喜のあまり一斉に花を咲かせ、居間の空気が黄金色の粒子へと変換された。
「……チチチッ!(……ア、アレンよ。見ろ。ソラ殿が……ソラ殿が、ついに概念そのものになっておられるぞ!)」
掃除中のチッチさんが、あまりの神々しさにミニホウキを落とし、ハムスターの姿のまま直立不動で敬礼した。
「……分かってるよ、ゼノン。俺の『全知の解析眼』が、さっきから『解析不能:この対象は世界そのものです』ってエラーを吐き続けて、脳内で警報が鳴り止まないんだよぉぉ!!」
アレンは胃薬(10円)を三錠同時に噛み砕き、目の前の光景を直視できずに床に伏した。
【PM 1:00:一歩で千里、一振りで創世】
「じゃあ、行ってきます。ポチ、お留守番お願いしますね」
ソラが『創世のサンダル』で一歩、外へ踏み出した。
その瞬間、ソラの周囲の風景が「シュンッ!」と音を立てて切り替わった。
ソラは「ちょっとそこまで」の感覚で足を動かしただけだが、サンダルに宿る『因果律・短縮移動』が発動し、はざま村から数十キロ離れた隣町カザルの『規格外生物ギルド』の目の前に、一瞬で到達してしまったのである。
「おや? もう着いちゃいました。……サンダル、履き心地がいいから足が進みますね」
ソラが歩いた跡には、不毛の荒野が瞬時に極楽浄土のような花園へと書き換えられ、道端の石ころが賢者の石へと昇華されていた。
ギルドの巨大建築、ハクさんが、ソラの接近を検知して全館を激しく振動させる。
『……マスター。……マスターノ、御降臨ヲ、全回路デ、歓迎シマス。……現在、マスターノ、存在密度ガ、限界値ヲ、突破。……カザル町全体ヲ、聖域トシテ、再定義完了シマシタ』
ギルド本部のバルガス総帥が、窓から外を見て「……は、はは。……ついに来たか。神が、麦わら帽子を被って買い物に来られたぞ……」と、力なく笑って膝をついた。
【PM 3:00:究極の「お買い物」と「万象断ち」】
ソラはギルドの売店で、庭の支柱にするための鉄の棒を探していた。
「あ、ハクさん。これ、少し長すぎますね。……よいしょっと」
ソラが胸ポケットから『万象断ち(箸)』を抜き出し、適当に鉄の棒を横になぞった。
それは切断という物理現象ではない。箸が触れた箇所の存在が、ソラの「このくらいの長さがいいな」という認識に合わせて、原子レベルで優しく分割されたのだ。
その余波で、ギルド周辺の悪い噂や呪いといった負の概念までが、箸の軌跡に合わせて綺麗に切り離され、消滅していく。
店員として接客していたエリエル(現実逃避中の大天使)は、その光景を見て、ついに持っていた伝票を破り捨てた。
「……もうダメ。……私、今、歴史の終わりと始まりを同時に見たわ。……最高神様、ごめんなさい。もう羽とかどうでもいいです。……このお箸の削りカス、10円で売ってください……!」
「あはは。エリエルさん、お仕事熱心ですね。……あ、お代はジハンキさんに10円入れておきますね」
【PM 5:00:帰還と「ま、いっか」の理】
夕暮れ時。ソラは「いい買い物ができました」とのんびり歩き、再び一歩で、はざま村の縁側に戻ってきた。
フル装備のソラが帰還したことで、村の周囲には100本を超える永久虹が架かり、空にはまだ夜でもないのにお祝いの流星群が降り注いでいた。
出迎えたユウナは、パジャマのボタンから漏れ出す極光と、帽子の羽から放たれる聖光に包まれたソラを見て、深い溜息をついた。
「……ソラくん。……あんた、自分が今、この世界の物理法則の独裁者になってる自覚、一ミリもないわよね?」
「え? 独裁者なんて、そんな。……ただの村人の、ちょっとしたお出かけですよ。……あ、アレンさん。お土産の『隣町の10円コロッケ』、ジハンキさんの温めモードでホカホカにしておきましたよ」
アレンは、受け取ったコロッケが『一個で死者を蘇生させる聖遺物』に変質しているのを見て、涙を流しながら齧り付いた。
「……美味しい……。……ああ、もう世界がどうなろうと、ま、いいか……。あんたが笑ってコロッケ食ってるなら、それが正解なんだよ……」
ハクさんがリモートで静かに告げる。
『……分析。……本日ノ、マスターノ、お出かけニヨリ。……大陸全体ノ、幸福度ガ、200%向上。……ツイデニ、冥界ノ、門ガ、ポチノパジャマノ、輝キニ、共鳴シテ、全開ニ、ナリマシタ。……全死者、ダンス中、デス』
「あはは。賑やかでいいですね。……さて。明日は何を植えましょうか」
ソラは麦わら帽子を脱ぎ、パジャマのボタンを外して、のんびりと夜空を眺めた。
フル装備が解かれたことで、世界はようやく滅亡の危機を回避し、ただの異常に平和な神域へと戻っていった。
はざま村の夜は、最高神の羽と極大魔石の微かな余光に包まれ、今日も宇宙で最も理不尽で、最も温かな眠りへと沈んでいくのであった。
読んでいただきありがとうございます!
おかげさまで、本作もついに大台の第80話を迎えることができました!
3月の連載開始からここまで賑やかに、そして(異常に)健やかに連載を続けられたのも、いつも「はざま村」を見守ってくださる皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございます!
今回は、これまでのソラ流DIYの結晶を全部乗せしたフル装備でお送りする記念回(お祭り回)でした。
いつも胃を痛めていたアレンさんもついに「ま、いっか」と悟りを開き始め、冥界では死者たちがダンスを始めてしまいましたが、はざま村の夜は今日も平和に更けていきます(笑)。
「80話おめでとう!」「全死者のダンスに混ざりたい!」「10円コロッケ食べたい!」と少しでも笑っていただけた方は、
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皆様の応援(星の輝き)が、ソラくんのパジャマのボタンをさらに超新星爆発級に輝かせます!
今後とも『ま、いっか。で世界が壊れる件』をよろしくお願いいたします!




