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ま、いっか。で世界が壊れる件 〜全知全能を田舎スローライフ用スキルだと思ってたら〜  作者: しゅんすけ


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第78話:二人の巨頭、縁側にて悟る――10円おでんと神域の休日


【AM 10:00:神域の駐車場(馬車の行列)】

 はざま村の入り口には、今日、大陸の歴史を揺るがす光景が広がっていた。


 白銀の装飾が施されたアトラス帝国の最高級馬車と、ギルド本部のSSS級魔導騎士団を従えた総帥バルガスの重装馬車が、のどかな田園風景の中で並んで駐車されていたのである。


「……おやおや。これはバルガス総帥ではありませんか。ギルドのトップが、こんな辺境に何の御用で?」


 馬車から降り立った皇帝ルシウスが、自販機の前で『10円おでん』のボタンを押そうとしていたバルガスに声をかけた。


「……フン、皇帝陛下こそ。帝都の政務はどうされた。……私は、ソラ殿から授かった『絶対不可侵・神域指定区域』の定期巡回に来ただけだ。……決して、ぬか漬けのおかわりを貰いに来たわけではないぞ」


「(……嘘つけ。バルガスさんの目が、さっきからソラさんの作業小屋の方を獲物を狙う古龍みたいな目で見つめてるじゃないか……)」


 二人の巨頭を迎えに来たアレンが、胃を抑えながら心の中で毒づく。アレンの『万能翻訳』は、二人が纏う威厳の裏にある「ソラさんに会いたい」という切実な渇望を120%受信していた。


【PM 1:00:縁側の首脳会談】

 ログハウスの縁側。かつてない豪華なメンバーが、ソラが用意した『ゴザ』の上に座っていた。


 ソラは「親戚のおじさんが二人も来た」と言わんばかりののんびりした顔で、急須からお茶を注いでいる。


「さあ、ルシ公さんも、バルガスさんも。今日は天気がいいから、外でお茶にするのが一番ですよ。……はい、お徳用味噌で漬けた『銀河チーズおはぎ(味噌仕立て)』です」


「……ルシ、公……?」


 帝国の騎士たちが「陛下への不敬だ!」と剣に手をかけようとした瞬間、バルガスがそれを手で制した。


「……よせ。……ソラ殿がそう呼ぶなら、陛下は今、この瞬間から『ルシ公』という存在として定義されたのだ。抗えば、因果律ごと消去されるぞ」


「……ははは。構わんよ、バルガス。ソラ殿に呼ばれると、なんだか帝国の重圧から解放されて、本当にただの親戚のおじさんになったような清々しい気分だ……。……ムグッ!? ……な、なんだこのおはぎは!! 脳内に直接、銀河の誕生が再生される……!!」


 皇帝ルシウスが、おはぎを一口食べた瞬間に「ま、いっか」の波動に呑み込まれ、目が完全に幸せな近所の隠居老人のそれになった。


「……やっぱりだ! ソラさんの言霊のせいで、皇帝の定義が上書きされて、ただの気のいいおじさんに退化した……!!」


 アレンの叫びが響く中、ソラは「あはは、気に入ってくれて良かったです」と微笑んでいる。


【PM 2:30:魔王の教育的指導】

 そこへ、掃除担当のチッチさん(元魔王ゼノン)が、ミニホウキを持って現れた。


「チチチッ!(おい、皇帝に総帥! 飲み終えた『10円おでん』のカップをそこに置くな! 我の清掃経路に障害物を置くとは、不浄の極み! 万死に値するぞ!)」


「ひっ!? ゼノン閣下! 失礼いたしました!!」


 皇帝と総帥、大陸の支配者二人が、体長数センチのハムスターに向かって同時に土下座をした。


「(……この光景、絶対に外の人間には見せられねぇ。魔王に怒られて謝罪する皇帝と総帥……。世界の勢力図が、この村の10円単位の価値観に負けてる……!)」


 ソラが「チッチさん、そんなに怒らなくても。おじさんたちも、つい忘れちゃっただけですよ」と、チッチさんの頭を優しく撫でる。


「……チ、チチィ……(……ソラ殿がそう仰るなら、今回は掃除の刑(床磨き100往復)で許してやろう……)」


 ソラの手の下で骨抜きになる魔王を見て、バルガスは冷や汗を流しながら呟いた。


「……ルシウス陛下。やはり、この村は我々が管理しようなどと考えてはいけない場所だったようだ。……ここにいる間は、我々はただのお客様……いや、ソラ殿の親戚として振る舞うのが、生存への唯一の道だ」


【PM 5:00:お土産とリサイクルの絆】

 夕暮れ時。二人の巨頭は、ソラから渡された『空き缶』と、ジハンキさんが特別に排出した『10円・概念浄化カイロ』を手に、馬車へ戻ろうとしていた。


「ルシウスさん、バルガスさん。またいつでも遊びに来てくださいね。あ、その空き缶はジハンキさんに返すと、いいことがあるみたいですよ。リサイクル、大事ですからね」


「……は、はい! 帝都に戻ったら、全土にリサイクルを義務付け、この空き缶を『帝国の守護聖遺物』として祀りますぞ!!」


 ルシウスが、ゴミ(空き缶)を命より大切に抱えて馬車に乗り込む。


『……毎度。……ルシ公様。……次回ノ来村時ハ、10円玉ノ、在庫ヲ、1000枚ホド、用意サレルコトヲ、推奨シマス』


 ジハンキさんのバリトンボイスに見送られ、二台の馬車は猛スピードで去っていった。


 その後ろ姿を眺めながら、ソラはのんびりと麦わら帽子を直した。


「いやぁ、アトラス帝国の親戚のおじさんたち、本当に律儀ですねぇ。……ま、いっか! 今日も賑やかで楽しかったですね」


「……ソラさん。あのおじさんたちが帰った後の帝都、間違いなく『10円玉』が通貨の最高位になって、ゴミ拾いが国教になるぞ……」


 アレンは、ジハンキさんから出てきた『胃薬・超(服用すれば悟りの境地に至る)』を飲み干し、今日もまた、はざま村の圧倒的な平和(と定義の崩壊)を受け入れるのであった。


読んでいただきありがとうございます!


もし面白かったら【★★★★★】やブックマークで応援していただけると嬉しいです!


ソラくんの「ま、いっか」は、まだまだ続きます。

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