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ま、いっか。で世界が壊れる件 〜全知全能を田舎スローライフ用スキルだと思ってたら〜  作者: しゅんすけ


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第44話:ソラ、自分用の『サンダル』を作る。~一歩で千里、二歩で創世~


はざま村の朝は、かつてないほどしっとりしていた。


新しく村の住人(加湿器)となった精霊王エリュシオンが、その膨大な魔力を惜しみなくナノレベルの美容ミストとして放出し続けているからだ。


「……あぁ、今日も至高の潤いだ。……我が魔力で、この地の草木も、そしてマスター(ソラ)の肌も、完璧なコンディションに保たれている……」


エリュシオンは、ソラが端材で作ってくれた『高級シェアハウス(鳥箱)』の窓から、銀髪をなびかせて満足げに呟いた。


だが、村を歩くソラには、一つだけ小さな悩みがあった。


「うーん。エリュシオンさんのおかげで畑の育ちはいいんですけど……。少し地面がふかふかになりすぎて、今履いている靴だと泥がついちゃうんですよね」


ソラが足元を見つめる。それは、転生した時に履いていた、ボロボロのビジネスシューズを「ま、いっか」とガムテープ(お手製の粘着草)で補強し続けてきた、限界突破の代物だった。


「そういえば、この前作ったパジャマも快適でしたし、身に付けるものは大事ですよね。自分用に『ちょっと歩きやすいサンダル』でも作ってみましょうか!」


「(……嫌な予感しかしない。ソラさんが『ちょっと』って言う時は、大抵世界がひっくり返るんだ……!)」


アレン(勇者)が胃を押さえながら後をつける中、ソラは鼻歌まじりに作業小屋へと向かった。


作業小屋に入ったソラは、棚に溜まっていた端材を物色し始めた。


「えーっと、ソール(底)は丈夫なほうがいいから、ハクさんを作った時に余った世界樹木の根っこの皮(世界樹)でいいかな。……あ、クッションには、パジャマを作った時の布(天衣無縫)の切れ端を詰めましょう。……鼻緒は、ポチの抜け毛と、アカさんの古い鱗を編み込んだ紐で……よし、これなら丈夫そうだ!」


ソラは全知全能の解析眼を使い、手元の素材をサクサクと加工していく。


彼にとっては余ったゴミの再利用だが、その一工程ごとに万象創造の力がこれでもかと注ぎ込まれていた。


「せっかくですから、歩くのが楽しくなるように、少しだけバネを効かせましょう。……よいしょっと!」


ソラが金槌『万象断ち』の柄でコンコンとソールを叩く。


その瞬間、世界樹の皮は空間を圧縮して反発するという、物理法則を無視した【空間跳躍バネ】へと変質した。


さらに、ハクさんから「マスターの足元を支えたい!」という熱い思念が通信ポスト経由で届き、サンダルの裏側に『自動洗浄・絶対非防汚』の術式が勝手に書き込まれていく。


「よし、完成です! 見た目はただのちょっとオシャレな藁草履ですね。ま、いっか!」


小屋から出てきたソラは、さっそく完成したサンダルに足を通した。


「おっ、軽い! まるで羽が生えたみたいだ。……ちょっと、そこまで散歩してきますね!」


ソラが、軽い気持ちで一歩を踏み出した。

本当に、ただの散歩のつもりだった。


——ドシュゥゥゥゥン!!


「……え?」


ソラが瞬きをした瞬間、目の前の風景が激変していた。


さっきまではざま村のログハウスが見えていたはずなのに、今、目の前にあるのは……切り立った崖と、雲海。そして、見たこともない巨大な怪鳥が空を飛んでいる。


「……あれ? ここ、どこだろう。……あ、もしかして、アトラス帝国の裏山かな?」


「……違うよソラさん!! そこ、ここから三千里離れた絶望の断崖だよ! 伝説の魔獣しか住めない秘境だよ!!」


アレンが解析眼でソラの行き先を見ながら絶叫する。


ソラの影に潜んでついてきていたクロさんが、あまりの速度に三半規管をやられ目を回していた。


ソラが履いたそのサンダル——後に伝説となる『創世の足跡ガイア・ステップ』は、着用者が「あそこまで行こう」と意識した瞬間に、目的地との距離をゼロにする【因果律・短縮移動】を発動させていたのだ。


「うーん、ちょっと遠くまで来すぎちゃいましたね。……ま、いっか。戻りましょう」


ソラがはざま村を思い浮かべて、二歩目を踏み出した。


「ただいま戻りましたー! いやぁ、このサンダル、すごく足運びがスムーズですよ!」


村の入り口に、一瞬で戻ってきたソラ。


だが、彼が歩いてきた足跡を見た住民たちは、腰を抜かしてひっくり返った。


「な、なんなのこれは……!? ソラ様が歩いた場所だけ、冬なのに花が咲き乱れているわ!」


エルナが驚愕して叫ぶ。


ソラが踏みしめた地面は、サンダルに宿る世界樹の生命力と、ハクさんの浄化能力、そしてエリュシオンの加湿ミストが融合し、【永劫の豊穣地帯】へと作り替えられていた。


ただ歩くだけで、砂利道は最高級のベルベット芝に変わり、道端の雑草は万能薬草へと進化していく。


「おーい、ソラさん! 急にいなくなるなよ!? 一瞬で消えたと思ったら、村の周囲にエデンの園みたいな防衛ラインができてるぞ!」


アレンが駆け寄ってくるが、ソラの輝く足元を見て硬直した。


「え? 防衛ライン? ……あぁ、不審者が来ないように、少しだけしっかりした足跡を残したかもしれません。……あ、エリュシオンさん! このサンダル、すごく蒸れなくていいですよ。あなたのミストとも相性抜群です!」


「……あ、あぁ。……そうか。……我が加護を、そのサンダルは『肥料』に変えているのだな。……精霊王の魔力が、サンダルの脱臭成分に使われるとは……。……ま、いっか。……私は加湿器だ……」


エリュシオンは、もはや驚くのをやめ、鳥箱の中で静かにミストを放出し続けた。


その日の夕方。


ソラは新しいサンダルを脱いで、玄関に綺麗に揃えた。


「いやぁ、いい作り物をしました。これなら隣町カザルのハクさんのところまで、歩いて一秒もかかりませんね。……あ、でもそれだと運動不足になっちゃうかな? ……ま、いっか!」


ソラが笑いながら家に入っていく。


玄関に残されたサンダルは、夜の闇の中で淡く発光し、家全体の結界をさらに強固なものに書き換えていた。


一方、その頃。


天界の万象記録書を管理する天使たちは、阿鼻叫喚の地獄絵図に陥っていた。


「報告します! 北の果てから南の果てまで、一直線に『聖域化された謎の道』が出現しました! 世界の地図が、一人の男の散歩によって塗り替えられています!」


「馬鹿な……! それは神ですら数万年かかる創世の御業だぞ!? それを……ただのサンダルの試着で行ったというのか!?」


そんな天界のパニックなど知る由もなく。


はざま村では、ソラが焼いたサンダル完成記念のお餅(食べると全能力値が永続的に+999されるかも)を囲んで、みんなが賑やかに夕食を楽しんでいた。


「ニャア(……この男、次は『帽子』でも作るつもりか。……その時は、世界の『空』が別の色に変わるかもしれんな)」


クロさんが、サンダルの横で丸くなりながら、心地よい神気に包まれて眠りについた。


村の夜は、新調されたサンダルがもたらした究極の安定によって、どこまでも静かに、そして非常識に更けていくのであった。


読んでいただきありがとうございます!


もし面白かったら【★★★★★】やブックマークで応援していただけると嬉しいです!


ソラくんの「ま、いっか」は、まだまだ続きます。

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