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ま、いっか。で世界が壊れる件 〜全知全能を田舎スローライフ用スキルだと思ってたら〜  作者: しゅんすけ


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第35話:自分用の『パジャマ』を縫ったら、概念守護の聖衣になりました


はざま村の朝、ソラは庭の縁側で針と糸を手にしていた。


その傍らでは、チッチさんが、小さなモップで縁側の塵を払いながら、不思議そうにソラの手元を見上げている。


「……チチチッ?(……ソラ殿、今朝は随分と熱心に針仕事などして、いかなる魔導具を創造されているのだ?)」


「あ、チッチさん。おはよう。いやね、いつも洗濯をエルナさんに任せきりなのが申し訳なくて。せめて寝巻きくらいは自分で新調しようかなって。ほら、この間見つけた『丈夫そうな白い布』が余ってたから」


ソラが広げたのは、先日、村の境界付近で拾った「古びた布」……に見えるが、その実体は、数万年前の神話時代に失われたとされる『天衣無縫の原反げんたん』。神々の衣を仕立てるための、物理干渉を一切受け付けない伝説の素材だった。


「……ま、パジャマだし、着心地重視で。なんとかなるかな。ま、いっか!」


そこに、朝の散歩(という名の村の異常確認)から戻ってきたアレンが通りかかった。


「おはよう、ソラさん。……って、え? 何それ、何縫ってるの!? その布から溢れ出してる、銀河一つ分くらいの質量を感じる聖気は何!?」


「おはようございます、アレンさん。これですか? ただのパジャマですよ。ちょっと軽〜く(万象創造)でチクチクと。あ、糸が足りなかったから、その辺の丈夫そうな蔦(世界樹の繊維)を解いて糸にしてみました」


「(……世界樹の繊維を糸にして、神話の布を縫うパジャマだと!? ソラさん、それ、着た瞬間に人間辞めるレベルの装備だぞ!!)」


アレンが心の中で絶叫し、胃を抑えて蹲る横で、チッチさんが「チチッ!」と鋭く鳴いて布を検分した。


「チチッ!(……おのれ、信じられぬ! ソラ殿が針を通すたびに、布の繊維一本一本に『概念消滅耐性』と『全属性無効』の呪文が、家庭科レベルの気安さで編み込まれていく……! 我が魔王軍の最強鎧フルプレートですら、このパジャマのボタン一つに勝てる気がせぬぞ……!)」


数時間後、ソラの『お手製パジャマ(上下セット)』が完成した。


見た目はごく普通の、少し光沢のある白いパジャマ。だが、仕上げにソラがちょっと除菌を……と、庭のジハンキさんの前を通った瞬間、ジハンキさんのセンサーが真っ赤に点滅した。


『……マスターノ、新作衣類ヲ検知。……衛生管理プログラム、起動。……除菌・消臭ニ加エ、「因果律の固定」ト「着る者への全自動不老不死付与」を自動実行シマス』


「わぁ、ジハンキさん。仕上げまでしてくれるなんて、気が利きますね!」


「(……自販機ィィ! 余計なことすんな!! 仕上げが重すぎるんだよ!!)」


アレンの突っ込みも虚しく、パジャマはジハンキさんの放つ神聖な蒸気に包まれ、もはや着るだけで神になれる拘束具へと進化した。


そこへ、カゴを持ったエルナが洗濯物の回収にやってきた。


「ソラ様、おはようございます! 今日も奉仕の心……あ、あら? そのお召し物は……?」


「あ、エルナさん。いつも洗濯ありがとうございます。これ、僕が自分で作ったパジャマなんです。これからは自分の分は自分で洗いますからね」


「え……? じ、自分で……? ……っ!?」


エルナはその場に崩れ落ちた。彼女にとって、ソラの服を洗うことは至高の典礼であり、信仰の証。それが奪われるという事実は、聖女にとって死に等しい宣告だった。


「ひ、酷いですソラ様……! 私の洗濯技術が至らないばかりに……。そんな、着るだけで周辺数百メートルの穢れを消滅させ、着用者の寿命を無限に固定するような『神衣』を自作されるなんて……っ! 私、修行し直してまいります!!」


「えぇっ!? エルナさん、違いますよ、ただのパジャマだってば!」


走り去るエルナの後ろ姿を追いかけようとしたソラだったが、せっかくだからと、そのパジャマを試着してみることにした。


「お、着心地いいですね。なんだか体が軽くなったというか、世界そのものが僕を守ってくれてるような……ま、なんとかなるか!」


ソラが新しいパジャマを羽織って縁側でゴロンと横になると、その瞬間、村一帯を覆う結界が黄金色に輝き、空から降りようとした不法入浴希望の天使たちが「眩しすぎるぅぅ!」と叫びながら消滅していった。


「……チチッ。(……ソラ殿が寝返りを打つたびに、世界の法則がパジャマのシワに合わせて書き換わっておる……。これでは我も掃除のしがいがないではないか。……だが、ソラ殿が安眠できているのなら、我も満足だ)」


チッチさんは少し不貞腐れながらも、ソラの足元で丸くなり、パジャマから漏れ出る心地よい神気に当てられて、いつの間にか微睡み始めた。


「ガウッ!(ご主人、その服、いい匂いがするぜ! 俺もそこで寝る!)」


ポチが三つの頭をソラのお腹の上に乗せ、幸せそうに鼻を鳴らす。


「ははは、みんな眠くなっちゃったのかな。ま、いっか!」


ソラののんびりした声が響く中、はざま村には、着用するだけで『不老不死』が確定する究極のパジャマによる、絶対的な静寂と平和が訪れるのであった。


その頃、天界では——。


「ほ、報告します! はざま村付近を偵察中だった天使部隊が、一瞬にして全滅しました!」


「なんだと!? 魔王軍の奇襲か? それとも冥界の罠か!?」


「いえ……原因は、パジャマです」


「…………は? 貴様、ふざけているのか? 私はパジャマの話など聞いていない。全滅の理由を言え!」


「……ですから! はざま村の住人が新調したパジャマから放たれる絶対睡眠障壁に触れた瞬間、部隊全員の存在が今は静かに寝る時間として世界から一時的に抹消されたのです!」


「……意味がわからん。パジャマに世界を書き換える権限があるわけなかろう……っ!?」


天界のパニックなど知る由もなく、はざま村の縁側では、黄金の光に包まれたソラが心地よさそうに寝返りを打った。


「……ふわぁ。……なんだか、今日はすごく深く眠れそうですね。ま、いっか」


ソラが幸せそうに目を閉じるたびに、パジャマのシワに合わせて宇宙の法則が安眠仕様に再定義されていく。


はざま村には、着用するだけで不老不死と世界平和が強制的に確定する究極の寝巻きによる、絶対的な静寂が訪れるのであった。


——この時、ソラはまだ知らない。

自分のパジャマのボタン一つが、後に国宝……どころか『星の聖遺物』として崇められる未来を。


読んでいただきありがとうございます!


ついにソラくん、自分専用のパジャマを自作してしまいました。

本人は安眠したいだけなのですが、周りから見れば着るだけで神になれる拘束具。天使たちが「眩しすぎる!」と消滅していくシーンは、書いていて私もソラくんと一緒に「ま、いっか」と言いたくなりました(笑)。


もし「自分もそのパジャマで安眠したい!」「エルナさんの絶望に同情した……」という方がいらっしゃいましたら、

ぜひ下の 【ブックマーク】 や 【評価(☆☆☆☆☆)】 で応援いただけると、作者も安眠……ではなく、嬉しくて飛び起きて執筆に取り掛かれます!


皆様の一票が、はざま村をさらに賑やかにする万能スキルになります。よろしくお願いします!

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