第32話:村の学校、ついに開校!……っていうか、教師陣が豪華すぎて国が滅びそうです
はざま村の朝は、ジハンキさんの心地よい電子音で始まる。
『……マスター、ソラ。本日ノ予定ハ、村ノ知的水準ノ向上デス。……登校前ノ『記憶力増強・おにぎり』ヲ推奨シマス』
「あはは、ジハンキさん、ありがとうございます。……あ、アレンさん! 例の場所、準備できましたよ!」
ソラが指差したのは、作業小屋の隣の空地だった場所。
しかし、一晩でソラの『万象創造』が(無意識に)働き、そこは白亜の石材とステンドグラスが輝く、どこからどう見ても「神々の学び舎」にしか見えない学び舎へと変貌していた。
「……ソラさん。これ、ただの読み書きを教える小屋じゃないよね? 入った瞬間に脳細胞が活性化して、過去のトラウマまで浄化されるんだけど」
アレンは、入り口に足を踏み入れた瞬間に全身を駆け抜ける聖なる魔力に、早くも胃を押さえた。
「だって、昨日のエリエルさんたち、自販機のボタンが読めなくて困ってましたから。みんなで勉強したほうが楽しいかなって。あ、机は世界樹の端材で作っておきました。ま、いっか!」
こうして、史上最も物騒で豪華なはざま村学校が開校した。
1時限目:【国語・マナー】 担当:アレン、プリシラ
「いいか、みんな。字を書く時は、剣を振る時と同じように……って、なんで俺が王宮式典マナーなんて教えてんだよ!」
アレンが叫ぶ横で、プリシラがキラキラした目で黒板(実は古代遺産の黒真珠製)に文字を綴る。
「アレン様、落ち着いてくださいまし。ほら、このおでんという文字のハネ! 聖剣の軌跡のように美しいですわ! さあ、エリエル様もご一緒に!」
「は、はい! ……うう、天界の古文書より難しい漢字が並んでる……。でも、これを読めないと、あのお風呂上がりの『黄金コーヒー牛乳』が買えないのよね……!」
エルナも熱心にメモを取っていた。
「なるほど……だいこんとは、奉仕の心……。ソラ様の教えを記すには、この深淵なる文字こそが相応しいですわ。……ふふ、信仰心が深まります」
「(……エルナさん、それはただの根菜の名前だよ!)」
2時限目:【理科・魔法理論】 担当:チッチさん
「チチチッ! チチッ!(……ええい、羽根つき共! 我の講義中に居眠りとはいい度胸だ! 宇宙の真理とは、即ちソラ殿が配合した『特製重曹水』の浸透圧にあると教えたであろう!)」
チッチさんが、小さな指示棒を振り回しながら、机に並んだ天使たちや村の若者を叱咤する。
「(……くっ、魔圧を抑えているというのに、この小娘どものペンが恐怖で震えておる。ソラ殿が用意したこのインク、龍の血でも混ざっておるのか? 浸透圧が凄まじすぎて紙が発光しておるぞ!)」
3時限目:【体育】 担当:ポチ
「ガウッ! ガガウッ!(ほら、腰が高いぜ! 不審者が来たら、こうやって三方向から同時に首を振るんだ! 噛み付く時は、愛を込めてだ!)」
庭ではポチが、村の自警団志望の若者たち(と、なぜか混ざっている帝国のエリート騎士たち)を相手に、実戦形式の訓練を行っていた。ポチの一吠えで雲が割れ、山が震える。
「……最強すぎる。ポチ先生のお手一発で、俺のフルプレートアーマーが粉々になったんだが……これ、生存戦略の授業ですよね?」
授業が一段落すると、生徒たちはジハンキさんの前に集まった。これが、はざま村学校の修了試験である。
『……本日ノ学習内容ノ確認テストデス。……自販機ノボタンニ書カレタ「至高の贅沢・特製おでん」ヲ、正シク読ンデ入力セヨ』
「えっ、えーっと……し、しこうの……。ああっ、読める! 読めるわ! 贅沢の字が、昨日よりはっきり見える!!」
エリエルが涙を流しながら10円を投入する。
『……正解デス。……ご褒美ニ、全属性耐性付与ノおでんヲ授与。……次ノ生徒、ドウゾ』
その様子を、地面の下からぬか床が「ポコポコ」と眺めていた。
「ポコポコ……(……ふん、愚かな人間どもめ。文字など読めずとも、我がエキスに浸かれば全てを悟れるというのに……。おいマスター、この教科書、ちょっと湿っぽくて寝心地が悪いぞ。今度、我の『旨味理論』も副読本に入れるようにジハンキに伝えろ)」
夕暮れ時、ソラは学校から出てくるみんなの笑顔を見て、満足げに頷いた。
「みんな楽しそうですね。これでジハンキさんのメニューもバッチリです。……あ、そうだ。明日は遠足でもしましょうか。近所の裏山に、ちょっと珍しいお花(※全属性無効のエリクサー草)を摘みに」
「(……ソラさん、それ、遠足っていう名の最終決戦になる予感しかしないんだけど!)」
アレンの絶叫が響く中、池のピピさんが「ピピピッ!(……ソラ様、私も読み書きを覚えて、在庫管理表を作ります!)」と張り切り、縁側からはアカさんが「ポポポ!(……我も、火加減の教科書を書くべきか……)」と悩んでいた。
はざま村に誕生したこの学校が、後に全宇宙の賢者が集う最高聖域として歴史に刻まれることを、ソラだけはまだ知らない。
「さあ、夕飯はみんなでお祝いたこ焼きにしましょう! ま、いっか!」
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ソラくんの「ま、いっか」は、まだまだ続きます。




