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とどかずとらず  作者: 飛鳥恵佳


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7/12

とりあえず

 今日はおじさんの家に入った瞬間に何かおじさんが気まずそうにしていた。珍しい。

 おじさんはとても口下手でたまに確信めいたことを言うけど私とは積極的にコミュニケーションをとろうとは思わない人だ。いや、なんだろ、コミュニケーションはする。話はする。けどなんていうか。

 言葉にするのが難しいけど、……そう、踏み込んだ話をしようとはしない。私がこの家に初めて上がった日も、そして通っているときでも、「なんで?」とか一言も言ってこない。ただ私のいる場所を作ってくれていた、と私は感じている。おじさんがどう思っているかは別として。ただ、その予想はおそらくあっている。今日はおじさんがそわそわして何かを切り出そうとしている。鈍感な私が気付くぐらいだから……。もしこういう機微に敏感な人だったら別人に変わったのかと思うぐらい、本当にわかりやすいぐらい何かを言いたそうにしていた。

 とりあえず無視をした。

「あ、あのさぁ」

 ようやく話しかけてきたのは私がいつも帰る時間の10分前だった。おじさんはいつもにらめっこしているパソコンを閉じて私の方を向いてきた。

「なにぃ?」

 スマホの画面に顔を向けながら目線と耳だけをおじさんの方に向ける。

「はぁ、あんま言いたかないんだが」

「うん」

「ここに来るなら今の時期は勉強をしてくれ……」

「へ?」

「だから、テスト期間、別にここに来るのは構わんが、できれば勉強してくれ……」

「……。なんで?」

「はぁ、何でもだよ……」

 なんでそういうことを急に言ってきたんだろ?

 んー、分からない。

「まぁ、やる気があれば……って感じで」

「はぁ。今はそれでいいか」

 今は、ね。

 なぁーんで急にそんな事言い出したんだろ……。

 まぁ何でもいっか。

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