第二十話 レベルアップ2
覗きこんできた実紅に、ステータスカードを見せる。
鏑木健吾『竜胆実紅の敵にのみ使う』
レベル0
物攻SSS(151)物防SS(147)魔攻SS(137)魔防SS(138)敏捷SS(142)技術SS(149)
スキル
『吸収:EX』
→『ゴブッチ レベル1』
→『スラスラ レベル0』
「ちょっと待ちなさい」
がしっとゴブッチの肩を掴む俺の肩を掴む実紅。
実紅さん。肩を掴む相手間違えてない?
「なにしれっとさらに新しいステータス表記を出しているのかしら?」
あ、なるほどそこか。
150を超えたステータスがSSSになっている。これってどうなのだろう? 今後も成長していくとSSSSみたいにどんどんSが増えていくのだろうか。
それは見にくいのでやめてほしいんだけど。
「……いや、それより今はゴブッチじゃないか?」
ほら、スラスラも俺の気持ちを代弁するようにびしびしゴブッチを殴っている。
スラスラがむくーっと膨れ上がっている。
どうやら嫉妬しているようだ。自分より先にレベルアップしてーみたいな感じなのだろう。
その気持ちはよくわかる。俺も同じように頬を膨らませたい。けど、きっと俺がやっても見るに堪えないと思うので、代わりに実紅に膨らましてほしい。彼女ならきっと世界一カワイイはずだ。
「……私としてはどっちもどっちだけど。健吾のステータスに限界がないのはわかってたし、まあ……確かにそうね。何がきっかけでレベルアップしたのかしら?」
どうなんだろうな?
単純に、たくさん戦ってきたからレベルアップしたのか。
それとも、ゴブリン亜種を倒したからレベルアップしたのか……。
はたまた、両方満たしたからなのだろうか。
その辺りどっちがトリガーになっているのか分からない。
「ゴブッチ、どうしてか分かるか?」
「ゴブ!」
わからん、とばかりに首を左右に力強く振る。
それでも、強くなれたことに喜びを感じているようだ。手に持った鉄パイプをぶんぶんと嬉しそうに振り回している。
「……危ないからやめるか、離れた場所でやってくれ」
「ゴブ!」
離れた場所で振り回す。
うん、やめて、と素直に言っておけばよかったね。
「今のゴブッチってどのくらいなのかしらね? 本当、ステータスがあればみたいわね」
「そうだよなぁ。ちょっと気になるけど、さすがにこれから迷宮にいくには時間がなぁ」
「ええ。明日の学校に支障が出ちゃうわ」
……俺としては一日くらいはいいと思うんだけど、実紅は許さない。
俺も実紅を悲しませたくはないので、彼女の指示に従おう。
さくっと吸収で魔石と素材を取り込む。
……だが、スキルは増えない。
「やっぱり、手に入る魔物とそうでない魔物がいるみたいだな」
「みたいね」
ハイ・ゴブリン、プラント、ゴブリン亜種はダメだった。
明日はスライム亜種がいる第七階層まで行きたいものだ。
スライム亜種は難しいかもしれないが、その先にはまだウルフがいる。
魔物を仲間にできるかもと考えるだけで、楽しみで仕方ない。
「第九階層はまたスライム亜種と、ウルフの複合階か?」
「ええ、そうね」
「それじゃあ十階層は何がでるんだ?」
「十階層は……中ボスよ」
「どんな魔物かわかるのか?」
「まだ、今の段階じゃ絶対に勝てない相手よ」
「……そうか」
実紅の表情は険しかった。
迷宮は十の刻みに中ボス、あるいはその迷宮の最終階層ならばボスが出現する。
これらは討伐すると、良い素材を落とすらしいが、二度と、出現しなくなる。
倒したのが最終階層のボスであれば、迷宮内のすべての魔物が消滅し、数時間、あるいは数日後には迷宮が完全に消える。
それで迷宮を攻略したということになる。
「とりあえず、明日はゴブリン亜種とスライム亜種あたりを倒して、ステータスをあげるか」
「そうね……ゴブッチ次第になりそうね」
「ゴブッ!」
ゴブッチが拳をぐっと構える。
やる気満々なようだ。スラスラも、真似するように拳のようなものをつくり、ぐっと固めていた
「うんうん。どっちもこれからも頼むな。それじゃ、また明日な」
俺の言葉に、二匹はこくりと頷いて消えた。
迷宮の外に出た。今日の稼ぎはかなりのものだった。
今後もこの調子で攻略していきたいものだ。
俺たちは手をつないで、家に向かって歩きだす。
しばらく歩いた時だった。ある店がにぎわっているのに気付いた実紅が、そちらをじっと見ていた。
アイスクリームの店だ。俺と同じ高校生くらいの人たちであふれている。
実紅が目を輝かせている。
「……食べたいのか?」
「い、いえ……別にそういうわけではないわ」
そういえば、昨日テレビみてたときも食い入るように見ていたな。
コマーシャルでよく流れていたのだ。今から一週間半額だよっ! みたいなCMだったな。
もしかしたら実紅はひそかに期待していたのかもしれない。
「なんかアイス食べたくなってきたな」
びくりっ! と実紅が反応する。くいくいと服をひっぱり、びしびしと店を指さしている。
「行きましょうっ!」
時々実紅は子供っぽい。けど、それが可愛らしい。
しばらく並んで、二つアイスを購入。
バニラと、チョコクッキーアイス。両方ともコーンにアイスが乗っている形だ。
人通りの少ない道に入り、彼女にチョコクッキーを渡す。
実紅は両目を輝かせ、コーンを持っていた。
「それじゃあ、いただきますっ!」
それはもう嬉しそうに一口を食べ、こめかみを押さえている。
一気に食べるからキーンと来たのかもしれない。
俺も少しずつ食べていく。さすがにコマーシャルをやるだけの店だ。そこらのバニラアイスとはランクが違う。
俺が食べていると、実紅がつんつんと肘をつついてくる。
「一口もらってもいい?」
「……ああ、いいよ」
実紅のほうに向けると、彼女は嬉しそうにかぶりついた。
そしてまたこめかみを押さえている。それから彼女はこちらにアイスを向けてきた。
「はい、一口いいわよ?」
「それじゃあ、いただきます」
まだちょっと慣れない。俺の熱で、アイスが溶けるんじゃないだろうか。そう思いながら一口頂いた。
「顔真っ赤よ?」
「……う、うるさい」
からかうように実紅が俺の頬をつついてくる。めっちゃ可愛くて、それを間近で見てまた恥ずかしくなる。
ひんやりとしたアイスが、俺の火照った体を冷ましてくれる。
それでも、笑顔の実紅を直視できるほどの余裕はなかった。




