episode13 道化を演じる
「クラウン様。お待ちしておりました」
「お待たせしてしまい、申し訳ございません」
「何かあったのだろうとは思っておりましたが、無事でなによりです」
冒険者ギルドを出ると、その建物の横でずっと待っていた兵士に声を掛けられた。
色々とあって、すっかり兵士にギルドカードを見せる事を忘れてしまっていたのだが、兵士も近くの三人を見て何かあったのだと察してくれたようだ。
「えぇ色々とありまして。それと、身分証はこれでよろしいですか?」
「はい!こちらで問題ありません。確かに拝見致しました。それでは、私はこれで失礼致します」
さっき発行してもらったギルドカードを兵士に見せるとそれを確認したあと、兵士はこちらに一礼し去っていた。
「さて、まずは宿を探しましょうか」
「宿でしたら、私がご案内致します」
「それは助かりますね。では、お願いします」
「はい!」
ミリナが宿までの道案内をしてくれるとの事で、ミリナを先頭に私と手を繋いでいるエレナ、その後ろからアルカが着いてきている。
「ご主人の手温かい」
「?そうですか?」
「んっ何か落ち着くの」
「……いいな……」
そういうとエレナが両手で私の手を掴む。それを微笑ましく思っていると、後ろのアルカが羨ましそうにこちらをみている。
「フフっこちらの手は空いていますよ」
「えっ!?いいの?」
「えぇ構いませんよ」
「えへへっ」
待ってましたとばかりにアルカが空いている手を掴みに来る。
その表情は年相応に無邪気なモノだった。
「本当だ。温かくて何か落ち着くね」
「んっだから言ったの!ご主人の手落ち着くの」
「エレナの言うことは本当だったね」
アルカとエレナと手を繋ぎながら、先頭を歩くミリナに付いていくのだが、周囲の視線が痛い。
仮面を付けた変な服装の男がボロボロの服を着ている女の子三人連れていたら周囲の視線も厳しくはなるよね。今は耐えるしかないかな
そんな視線に晒されながら歩いていくと、大きな噴水がある広場に出る。
そこでは、人で賑わい出店なども出ていて活気が溢れている。
その人混みが溢れる中で、噴水の前で泣いている子供がいるのを見つけてしまった。
その子供は親とはぐれたのか「ままぁ!」と泣きながら蹲っているが、周りは見てみぬ振りをしていた。
「少し待っていてもらえますか?」
「はい?」
「え?」
「ん?」
三人にそう言って、アルカとエレナの手を優しくほどき噴水の前で泣いている子供の前まで行く。
「ママとはぐれてしまったのですか?」
「うっ!ヴァァヴァァ!!ごわいよぉぉお!!」
「いや、これは違うのです!違うのですよ!」
仮面を付けたまま子供に近付いたのは失敗だった。子供は私を見ると先程と比べ物にならないぐらいの大声で泣き叫ぶ。
その泣き声に比例して、周囲の視線は一層厳しくなる。
私にどうしろと……出来るかわからないけど、やってみるしかない!
「ほーらお嬢さん。ここをよーく見ててね」
「ンッ、ヴっく」
「何も無い手の中から~はい!」
「っ!!」
子供の前で手を広げて何も無いことをアピールした後、手を握った後掛け声と共に手を開くと手の中に一輪の花が出てきた。
正直出来るかどうかわからなかったが、何とか出来たようでよかった。
出来なかったら、どうしようかと思ったけど成功した。
周囲の視線が集まり、子供が泣き止んだ今が好機。
そのまま、前世で前座としてやっていたパントマイムを披露した。
目の前に壁があるように演じ、周囲もそこに壁があるんじゃないかと思い込んだ所で、近くにいた大人にこっち来るようジェスチーで伝える。
大人にこの演じた壁の向こうに行ってもらうよう伝える。最初は渋っていたが、しかたなくといったように壁を通るが、普通に通れたことに驚く大人と周囲。ただ壁があるように演じていただけなので、勿論普通に通れる。
そして私が通ろとして、あるはずもない壁にぶつかりオーバーに痛がるという一連流れで、本の少し笑いが出た。
次にやったのも定番のジャグリング。
近くの出店から、果物のような丸い物を六個買いそれを空中に舞わしていく。
二個から三個、四個、五個、六個と徐々に増やしていき六個同時にやると周囲からは驚きと拍手が送られた。
「お兄さん凄いね!格好いいよー!もっとやってー!」
「ハハハっ!こんな綺麗な女性に格好いいなんて言われたら、もっとやりたくなりますね」
「キャーーありがとう♪ッチュ」
近くにいた綺麗な女性からの声に反応し、ジャグリングのスピード更に増していく。
そして女性の投げキッスを貰うと女性に見とれると同時に手を止める。
空中に舞ったままの果物が重力に従い落ちてくる。そう。私の頭にも。
果物が私の頭落ち、べちゃ!と嫌な音をたてる。
その瞬間に周囲は笑いに包まれた。
「女に見とれてるからそうなるんだぞ!」
「いいとこ見せようとするからだー!」
「あんちゃん面白えな!次もやってくれよ!」
「次は男だらけの所でな!」
「ハハハ……男だらけは遠慮しておきますね」
最初に泣いていた子供もいつしか笑顔になっており、私があげた花をギュッと握っていた。
その笑顔を見るためと、周囲への印象と三人からの印象を良くしようと一芸演じたのは成功したようで、ミリナ達も笑顔で拍手を送ってくれていた。
「では、私は体を洗わなくてはいけないので、失礼します」
そういって一礼をする。子供の親も見つかったようで、今では母親と一緒に手を振っているのを横目に見ながら、ミリナ達の方へ戻っていく。
「ご主人様は、やはり優しい方ですね」
「私にはあれぐらいしか出来ませんからね」
「ご主人は人を笑顔にしてくださる。ご主人様となら、きっと……」
「きっと?」
「いえ、何でもありません!さぁ早く宿屋まで行かないと果物の匂いが落ちなくなってしまいますよ」
「フフっそうですね。では、引き続きお願いします」
「はい!」
「ご主人!手っ!」
「あっ!僕も!」
またミリナを先頭にアルカとエレナと手を繋ぎながら付いていく。
周囲の視線は先程までとは違う温かい視線を向けられながら、宿屋へと向かっていく
お待たせしてしまい、申し訳ございません。
詳しくは活動記録にてご報告致します。




