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episode11 奴隷契約

遅くなってしまい、大変申し訳ありません。

「私は、あなた達に危害を加えるつもらりも、奴隷扱いするつもりはありませんよ。なので、普通に接してもらった方が嬉しいのですが」


 危害を加えるつもりなんて元から無く、奴隷扱いするつもりもない。全てを信用してもらうのは無理だと思うが、せめてこれだけは信じて欲しい。

 

「で、ですが……」

「無理にとは言いませんし、今すぐに全てを信じてくれとも言いません。ですが、貴女達に危害を加えるつもりも、奴隷扱いしないということは、信じてはもらえませんか?」

「……」


 彼女達は、信じられないんだと思う。

 今まで酷い目にあってきたのに、急に知らない人が主となって、自分達を奴隷扱いしない。危害を加えない。と言われても信じられないのだろう。

 彼女達の経験が希望を消してしまったのか、信じると言うことを忘れさせてしまったのか。

 また、同じ事が起きるかもしれない。もっと酷いかもしれない、という思いがあるのだと思う。


「……はい」

「ありがとうございます。今はそれだけ信じて貰えれば十分です」

 

 俯きながらも返事をするミリナ。それに同意するように、首を縦に振るエレナとアルカ。

 三人とも、信じてくれたのかはわからない。それでも、信じようとしてくれているという事だけはわかったので、今はそれだけでいい。後は、こちらの行動と、時間が解決してくれるかも知れない。


「それではご主人様。契約をして欲しいのです」

「奴隷契約……ですか」

「はい。この隷属の首輪に、ご主人様の血を付けて頂きたいのです。そうしますと私達は、正式にご主人様の奴隷となります。それが奴隷契約です」

「ですが、本当に私の奴隷となって良いのですか?今なら奴隷から解放することも出来るのでしょう?」

「ご主人様が望むのであれば、私達を奴隷から解放することも可能です」

「それなら、奴隷から解放された方がいいのではないですか?」 


 それがわからない。

 本当にこの3人は、自分の奴隷となって良いのか。

 確かに、彼女達を奴隷扱いするつもりはない。しかし、こちらが奴隷扱いしなくとも、周りは彼女達を奴隷扱いをするだろう。

 今なら彼女達を、奴隷の身分から解放させる事も出来るのだから、望むならば解放したいと思っている。


「仮に奴隷の身分から解放されたとしても、私達には行く宛がございません。解放されてから、ご主人様とご一緒したとしても、拐われたり、何かの拍子に奴隷落ちさせられるかもわかりません。解放していただいたとして、また違う人の奴隷となってしまうと思います」

「そんな事が……」

「あるのです。奴隷は主人の財産となるので、契約している奴隷を拐ったりすることは罪とされています。なので、このままご主人様の奴隷として生活していく事の方が、私達にとっては良いのです」


 自分達は、奴隷から解放されたとしても行く宛も無く、拐われたり、何かの拍子で奴隷落ちして奴隷となってしまうと言う。

 それなら、このまま解放されずに奴隷のままでいた方が安全なのだろう。


「それに、ご主人様は私達を奴隷扱いしないと言ってくださいましたから」


 アルカとエレナも、ミリナと同じ気持ちなのかもしれない。

 信じた訳ではないが、信じてみたいと思ってくれている。

 なら、このままでいいのでは?と思った。奴隷から解放しても、また奴隷となってしまうという恐怖心を抱いたまま生活せるより、彼女達を守り、幸せだと思える日々を送らせる事こそが、彼女達の主人たる者の役目なのだと感じる。


「わかりました。それでは契約を」


 狩魂の大鎌の長柄から刃を出して、指の表面を軽く切って血が出たのを確認して3人の首輪に血を付けていく。

 血を付けると、隷属の首輪は淡く光ったと思うと、すぐに収まり契約が完了した。


「ありがとうございます。契約は完了したようです」

「これで今日から、私達はおご主人様の奴隷だね」

「……よろしく。です」

「えぇ皆様よろしくお願いします。やはり、ご主人様というのはむず痒いですね」


 奴隷契約が完了したのはいいことなのだが、ご主人様と呼ばれる事に未だに慣れる気配がない。


「どうしたんですか?お兄……すいません!ご主人様!」

「お兄ですか?」


 ご主人様という、慣れない呼び方に落ち着かなかったのがわかってしまったのか、アルカがこちらを不思議そうに見つめている。

 今、確かにお兄と聞こえたような気が……


「あ、いえ、違う!です……その、私たちをあのダグラスから救ってくれて、なんか、えっと……憧れてたお兄ちゃんみたいだと思ってしまいまして……すいません!変ですよね!」

「お兄さんに憧れていたのですか?」

「えっと……はい。私にはお兄ちゃんはいないのですが、何度か街で見たのです。泣いている妹を助けたり、いじめられている妹をお兄ちゃんが助ける所を。もし、私にもお兄ちゃんがいればこの状況から助けてくれるんじゃないかって」


 お兄と聞こえたのは、間違いではなかったらしい。

 ダグラスとの厳しい生活の中で、兄が妹を助ける所を何度も見てきた。妹が泣いている時、助けて欲しいと思った時にいつも助けてくれる存在。それが兄という存在としてアルカの中で認識したのだ。

 だからこそ、願ったのだ。

 いつか自分を助けてくれる。アルカの中で憧れていた兄のような存在を。

 そして先程の言い掛けた言葉、そんな憧れからきた言葉なのだろう。だからこそ


「お兄ちゃんですか。ご主人様以外でしたら、好きなように呼んで頂いて構いませんよ。後、無理に畏まった言葉遣いもしなくて大丈夫ですよ」


 お兄ちゃんと言われる事に抵抗が無いと言えば嘘になる。

 それでも、ご主人様と呼ばれるよりかは幾分かマシに思えたのだ。それにこれからは彼女達を守っていかなくてはならないのだから、アルカにとって兄のような存在になるのだから、問題はない。


「ありがとう!お兄ちゃん!えへへっ」


 お兄ちゃんと呼べることが、それほど迄に嬉しかったのだろう。

 アルカは、少し頬を紅く染めながらも満面の笑み向けている。

 その中でエレナは、アルカの後ろに隠れながらもこちらをチラチラ見ている。


「エレナは、どうしたのでしょうか?」

「あの、その……エレナはご主人って呼んでもいい?」


 可愛いらしい瞳を潤ませながらこちらを見ているエレナ。

 1歩近き、手を伸ばすとビクッと体を震わせ、瞳を強く瞑る。


「いいですよ。エレナが呼びたいように呼んでください」

「っん」


 伸ばした手をエレナの頭に乗せ、優しく撫でる。

 体の震えも徐々に小さくなっていき、閉じられた瞳が開かれると同時に一筋の涙が零れる。それを優しく拭ってあげる


「そろそろ、行きましょうか」

「はい!」

「うん!」

「んっ!」


 この後の予定を考えると、このまま時間を消費するのは得策ではない。三人が後ろから付いて来ていることを確認してから部屋を出ていく。

 まずは、冒険者について色々説明を聞くために、空いている受付へと向かっていく。

 

修正等あるかと思いますが、明日以降修正致します。


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