episode10 道化と奴隷娘達
名案だと思っていた物は、名案などではなかった。
それはもうすぐに実行した。笑って貰えれば少しはこの空気も何とかなるかもしれないと思ったから、必死で頑張った。
刃をしまった長柄だけになった狩魂の大鎌を、昔団員がやって、笑いを呼んだ行動を思い出した。やっていた通りに、長柄を振り回しながら途中でわざと頭にぶつけて、頭を押さえて蹲ったり。立とうとして、蹲った時に落とした長柄を踏んでしまって盛大に転んだりした。
何故か、踏んでしまった狩魂の大鎌の長柄が少し赤く発光したように見えたのは、見間違いだろう。
「「「……」」」
結果的に、3人とも笑う事は無かった。何をしてるんだと言う目に、警戒の色を更に強く滲ませて見ているだけだった。
今思うと、何をしてるんだと自己嫌悪に陥りそうになる。笑いを呼んだのは、相手が観客だったからだ。冷静に今の彼女達の心情を考えれば、突然棒を振り回して頭にぶつけた痛い人だと思われる行為だとわかったはずなのだが。それほど心に余裕がなかったのかもしれない。
確かに、目の前で急にこんな事をされれば、そんな目をしますよねー仮面を外すというのも1つの案なのだが。
しかし、素顔見せたら皆固まってしまう程に酷いみたいだし……それでも今は、仮面よりかはいいかもしれない。
素顔を見せた人達は、こちらを見ては固まってしまう程に酷いものだから、あまり見せたくないと思っていた。
だが、素顔を見せずに接するよりは、少しぐらいは警戒を解いてくれるだろうと思ったので仮面を外す。
「「「……」」」
「少しは、安心してくれましたか?」
「……っ!は、はい!あの、先程頭をぶけつられたようですが、お怪我はございませんか?」
「それは良かった。それと、怪我はしていないので問題ないですよ」
「それはよかったです。あっ……着けてしまうのですね。い、いえ!申し訳ありませんでした!」
仮面を外すと、やはり固まっていたが。予想通りの反応だったので、気にしない。
こちらの問い掛けに、一人の女性が返事をしてくれた。こちらを心配してくれているのは嬉しいのだが……今はその心配が、一番心を抉っていくのだと察してほしい。
返事をしてくれた女性は、人族の女性。
歳は18ぐらいに見え、髪色と瞳が同じ茶色。髪は長すぎず短すぎずで彼女のおとなしそうな雰囲気に合っている。
痩せ細っていなければかなりの美人だと思われた。
その女性が、仮面を着けようとした事を、残念そうな表情と声音で呟いた。その言葉に気づいたようで、謝りながら頭を下げている。
見ていてそんなに面白い顔なのだろうか?彼女達が普通に話せるのならば、このまま外してても良いのかもしれない。
「着けない方が安心するのならば、今は外しておきますよ?」
「あ、ありがとうございます。そのままでお願い致します」
「わかりました。それでは、そろそろ名前を教えてくださいますか?」
「失礼致しました!私はミリナと申します。よろしくお願い致します。ご主人様」
反応をしてくれた茶髪の女性は、ミリナと言うらしい。
私を、ご主人様と言ってから頭を下げる。ご主人様と言われるとむず痒い感じがするのだが、それは後回し。
「ありがとうございます。次はあなたの名前は教えて下さい」
「ひゃっ、ひゃい!」
「慌てないでいいですよ。ゆっくり話してください」
「は、はい!ぼ、私の名前はアルカっていいます。犬じゃなくて、狼です!よろしくお願いします。ご主人様」
次に指名したのは獣人の少女。
歳は15ぐらいに見え、橙色の瞳に髪色が白い。髪形は、狼を思わせるタテガミのような言髪形をしている。
頭に白い狼耳が生えていて、後ろでズボンを突き上げるようにしているのが尻尾だと思われる。
アルカと言う少女も、ミリナと同じくご主人様と言ってから頭を下げる。
「わかりました。それでは最後はあなたですね、名前を教えて下さい」
「あ、あの……エレナって言います」
最後に指名したのはエルフの女の子。
歳は10ぐらいに見えるほどにかなり幼い。
瞳は青く髪は黒い。髪は長く、前髪が目に掛かるかどうかと思えるほど。
エルフの象徴である長い耳が垂れており、ずっとアルカの服の裾を掴み半身を寄せている。不安からくる行動なのだと思う。
3人とも、服から覗く腕や足には大小様々大きさの痣が点々とついている。
服の下にも同じく痣があると思うのは当然だろう。
痩せ細っている事や痣があることから、ダグラスに毎日のように暴行を受けていたのだと思ってしまう。
しかし、今はまだその事に触れてはいけないい。
今触れてしまえば彼女達は、私とダグラスを重ねてしまいそうだから
今は、気づかなかった振りをするのが一番良い。
「ありがとうございました。これで皆様の名前が聞けましたね」
また最初と同じように頭を下げる。やはり、ミリナとアルカが驚いた表情をしている。最初と違うのは、その表情に恐怖が無くなっている事。二人が驚いている中でエレナだけは、ぼーっとこちらを見ている。
「そんなに驚いて、どうかしましたか?」
「そ、そのですね。奴隷に頭を下げたりお礼を言うのは、本来ならあり得ないことなのです」
遠慮がちに挙手をして発言するミリナ。
一番の年長者だからなのか皆の代表として発言してくれているのだろう。
奴隷達側からすれば、お礼を言われたり、頭を下げられたりする事自体があり得ない行動なのだ。それを平気でするこちら見て驚いたのだろう。
確かに、奴隷に頭を下げる事など前世でも異常と思われる行為として見られていた。
しかし、道化として生きて来たので奴隷だろうと、一般人だろうと関係なく接して来た。なので、頭を下げることなど特に普通だと思っていたのだが、こちらでも異常行為と見みられるのは変わらないようだ。
「そうですか。それで驚いていたのですね」
「はい、その通りです」
「では、驚いたついで。ではありませんが、ご主人様というのを止めましょうか」
それを聞いたミリナとアルカは、困った表情をしている。やはりエレナは、先程と変わらずぼーっとこちらを見ている。
そんなに見ていて面白い顔だろうか?正直、先程からじっと見られると落ち着かない。
そんなことより今は、ご主人様と言われるのはむず痒いので止めて欲しい。
「で、では何とお呼びすればよいのでしょうか?」
「呼びやすい呼び方でいいと思いますよ?あと出来れば敬語止めて頂けますか?むず痒いので、話しやすい話し方でいいです」
「そ、そんな!ご主人様にそのようなこと……」
ご主人様と呼ぶ事と敬語を使うを止めて欲しいと言ったのだが、どうやらすぐには納得して貰えないようだ。
自分達の主人となる人に対して、ご主人様と呼ばず敬語すらも使わないというのは難しいようだ。
しかし、これからもご主人様と呼ばれ続けるのだと思うとむず痒くて落ち着かない。
どうすれば、彼女達に普通に話すようにして貰えるかを考えるのに必死だったようで固まってしまっていた。
固まって一言も話さないこちらを、遠慮がち見ている三人の視線に気づくまでに時間を消費したのは言うまでもない。
間違えて書き途中の物を投稿してしまったので、削除致しました。
ご覧頂いていた皆様、申し訳ございません。




