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episode9 奴隷に困惑する道化

 ギルド男性の職員に連れられ、受付へと戻って来たところで、最初に担当してくれた受付嬢が、こちらを見るや駆け寄ってくる。


「大丈夫ですか!?怪我はされてないですか?どこか痛む所はありますか?」

「いえ、特に怪我はしてないので、大丈夫ですよ」


 こちらの体を見るために、ぐるぐると私を囲むように回っている。

 回る度に、後ろで縛っている青色の髪が、馬の尻尾のように揺れている。  

 ぐるぐると回っている受付嬢を、面白いと思って見ているのだが、目の前で揺れる青色の尻尾を掴みたくなってしまうのはなぜだろうか?


「んんっ!クラウン様。こちらがギルドカードになります。後、ダグラスの全財産は、ギルド職員が全て回収しておりますので、こちらにサインをしてください。回収し終えた後、お渡し致します」


 揺れている髪を掴もうと手を伸ばし掛けた時に、受付嬢の咳払いが聞こえたので掴むのを止める。

 受付嬢がプレートのような物を渡してきた後に、何かが書かれている紙も渡してきた。


「まず、こちらがギルドカードになります。これはギルドがクラウン様の身分を証明している物なので、無くさないようお願い致します。冒険者についての説明は、後程させて頂きますね」

「これが身分証と言われるものですか」


 ギルドカードと言われる物は、銅のような色をしている、子供の拳ほどの大きさのプレートだった。

 プレートには、自分の名前、年齢、種族が書かれている。

 それ以外にも書かれているのだが、後で説明されるので気にしない事にしてポケットにしまう。


 ギルドカードを渡した受付嬢は、受付の奥に歩いていく。

 そして、残ったのは……手元に渡された紙と職員の男性。


「この紙はなんですか?」

「その紙は、受け取り証になります。相手の財産を、全て受け取る際に記入していただくもので、そちらにサインせず受け取ると、窃盗罪になります。ご理解してもらえましたか?」

「なるほど。よく理解できました」


 手元にある紙は、受け取り証というものらしい。

 これにサインせずに相手の物を受けとると、窃盗と見なされてしまうのらしいので、しっかりとサインして男性職員に渡す。

 男は、それを確認してから受付の奥に歩いていき、受付の中の人と少し話した後、直ぐに戻って来た


「全ての回収が終わったようですので、こちらに来てください」


 それだけ言うと男性職員は、こちらを気にせず歩いていくので付いていき、奥にある部屋に案内され中に入っていく。


 部屋の中は、普通の応接間のような空間が広がっている。

 部屋の中央には、ソファーが向かい合うように置かれており、その間に机がある。

 その机の上には、口が閉じられた布袋が3つに、ダグラスが使っていたと見られる武器と防具。

 その他にも生活品があるが、机の上の物で気になるのは、特に無い。

 1番目を引いたのは……ソファーの後ろで、ボロボロの服を着ている女性達。

 3人とも種族が違い、右から人族、獣人族、エルフと並んでいる。

 共通しているのは、3人とも女性である事、この世の終わりのような表情をしてこちらを見ている事、ボロボロの服を着ている痩せ細った体、首に何か黒い物を着けている事だ。


「こちらにあるのが、ダグラスの全財産になります。何か質問はございますか?」


 男性職員は、この状況がさも当然のような顔をしている。

 全財産と言われて見てみれば、武器と防具、生活品などはわかる。

 だが、あの三人の女性が何なのか分からない。


「あの3人の女性は、誰ですか?」


 何故いるのか分からない女性3人について聞いたのだが。

 職員は、何いってるのですか?と言ったような顔でこちらを見ている。

 私からすれば、そっちが何を言っているのか知りたい。


「彼女達は奴隷ですよ。ダグラスが買っていた奴隷です。既に、奴隷商人によりダグラスとの契約は切れておりますので問題ありませんよ?」

「奴隷。ですか」

「奴隷も主人の財産に当たりますからね。回収するのは当然ですよ」

「そう……ですか。わかりました」

「では、これで財産は全てになります。これが詳細になりますのでご確認を」


 奴隷と聞いて、前世での記憶が頭を過る。

 あまりにも、思い出したくもない記憶を思い出してしまって嫌な気分になるのだが、急いで思考を切り替える。

 

 こちらの事など気にせず、当たり前の事を何を今更?と言うようなニュアンスが含まれているような言い方する男性職員。

 特に気にせずに、男性職員が渡してくる詳細表を受け取る。


 私が……奴隷の主となるのか?


「家をお持ちですか?または、泊まる所など決まっていますか?」

「まだ決まっていませんが、何故ですか?」

「金銭以外の物でしたら、王国内であれば、こちらで運ぶ所までやりますから」

「そうでしたか。まだ決まっていないので、後で伝えに来ます」

「かしこまりました。それでは、これで」


 色々と考えていたところに、職員の声が割って入ってくる。

 この世界に来たばかりで、家など持っている筈もないし、宿すら決まっていない。この王国に入って来たのだって今さっきの事なのだから。

 こちらが、まだ宿も決まっていないので、後で伝えに来ると言うと男性職員は了承した後に「失礼します」と言いながら、頭を下げて部屋から出ていった。

 残されたのは私と奴隷である3人の女性。

 この空間から、今すぐ男性職員と一緒に出たかったのだが、逃げるわけにも行かないので必死で考える。


 これは、どうしたらいいのか?

 とりあえず、自己紹介とかのほうがいいのか?


 奴隷である3人の女性は、未だに世界の終わりのような表情をしている。

 エルフの女の子に限っては、目尻に涙が溜まっているのが見える。


「初めまして。私はクラウンと言います。こんな格好していますが、気にしないでくださいね」


 そう言って3人に頭を下げたのだが。

 3人は、何故か驚きと恐怖を混ぜたような表情を浮かべながら、固まっている。


 一体どうしろというか。

 正解なんてあるのか? 教えてほしい……


 固まっている3人を見ながら、どうやって接していいのかがわからない。

 内心で困惑しながらも、思考を巡らせ正解を探しだす。

 悩む事、ほんの数分。一筋の光が見えた。

 この状況を打破する事ができる、正解らしい考えを見つけたかも知れない。

 思い付いたらすぐに実行しなくては、思い付いた名案と思われるものを実行する為の準備に取りかかる。


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