episode8 道化は嘲笑う
開始の合図と共に、間合いを詰める為に駆け出す。
そのまま接近して、大鎌の間合いに入ったと同時に切りつける。
ダグラスは、迫り来る大鎌の刃を斧で弾き、斧の間合いの距離まで詰め寄る。
こちらとの距離を詰められたと思うと、斧が迫り来る。縦、横、斜め、下からと様々な角度から振られる斧を避けれるものは避け、避けられないと感じたものは長柄で受け流す。
「避けるのだけは上手いみたいだな。だがな!避けてるだじゃ意味ないぜ!」
さらに速さを上げる乱舞だが、特に変わりなく避ける。
何故、冒険者としては格上であるダグラスの攻撃を避ける事が出来るのかと言われると、見えるからだ。
攻撃が来ると思われる場所に、赤い線のような物が引かれる。それに当たらないように避ければいいだけ。
見えていれば簡単に防げるし、避けれる。
「どうしました?攻撃も当てなきゃ意味無いですよ」
「ふんっ!これならどうだ!!」
ダグラスが、斧を振り上げると同時に、斧が淡い光を纏い始める。
そのままダグラスは、斧を振り下ろす。
振り下ろされる斧を後ろに跳んで避けた所で、ダグラスがにやりと笑うのが見えた刹那。
着地すると同時に、地面からいくつもの岩槍が飛び出してきた。
「くっ!」
全てを避ける事は不可能。
すぐに、狩魂の大鎌の刃を仕舞い、長柄だけにしてから岩槍と岩槍の間の地面を叩き付け、棒高跳びの容量でその場から退避する。
素早く回避したので、足を掠るだけで済んだのは幸いだと思う。
避けていなかったら、今頃串刺しとなっていたと思うと笑えない。
「今のを避けるか。あのまま串刺にされてりゃいいものを」
「今のは魔法。というやつですか」
「ちげぇよ。まぁこれ以上教えてやる義理はねぇか。わからないまま負けるんだな」
私が、先程の攻撃を知らない事から自分の勝利を確信したかのように醜悪な笑みを浮かべている。
気持ち悪い。
この仮面の鑑定する力が、人間にも通用してくれれば。
仮面越しにダグラスを見ながら鑑定と念じる。
すると、ダグラスから、白い線が伸びており説明文が書かれる。
☆ダグラス 種族:人族
所持スキル
・斧術Lv5
・身体強化Lv5
斧術Lv5によるEXスキル 解放。
・アースクエイクLv3
斧を地面に叩き付けることで、狙った場所へ岩槍を出現させる。
スキルLvに応じて岩槍の数×5増やす事が可能。
EXスキル。か。
アースクエイクと言われるのは、線が見えないし、どこに出るかは出るまで分からない。
逆に言えば、それ以外は避けれるので警戒すべきは1つ。
腐っても冒険者って事か。
見えた情報から、対策を立てていく。
アースクエイクの発動条件は、地面に叩きつけることなので発動する瞬間は、見ていればわかる。
狙うは、アースクエイクを発動する際の地面を叩きつける動き。
慢心している今ならば、そこを狙えば……簡単に殺せる。
負けなど宣言させる訳がない。この男がしてきた事を考えれば負けを認めて奴隷になるなど許せない。
この男の魂を、刈り取る。
何故、私は勝てると思ったはずなのに、殺せると思った?
まぁいい。勝つも殺すも……同じことなのだから。
「終演にしましょうか」
「てめぇが終われ!敗けを認めても、終わらせてやらねぇぜ!」
「では、私もあなたが敗けを認めても、終わらせないと言うことで」
「ほざきやがれ!」
大鎌を横凪ぎで一閃するが、軽く避けられてしまうが返す刃で切りつけるが斧で防がれ、先程と同じようなダグラスの乱舞が繰り返される。
ダグラスは明らかに狙っているのだろう、こちらが乱舞から抜け出すために後ろに跳躍することを。跳躍すると同時にアースクエイクを発動するはず。
だからこそ、あえてその誘いに乗ってやるのだ。ダグラスが斧を地面に叩きつける行動をした時に決める。
ダグラスの誘いに乗り、後ろに跳躍した時にダグラスが先程と同じようにニヤリと笑う。その目は獲物が罠に掛かったことを喜ぶ狩人のような目だった。
そして、ダグラスが斧を振り上げる。
「終わりだ、仮面野郎!」
「仮面野郎ではなく、クラウンです。筋肉達磨さん」
斧が振り下ろされる。それと同時に、ダグラスとの距離を一気に詰める。
ダグラスの、にやりと笑う顔を横目に見ながらダグラスの横を通り抜ける。
恐らく今のダグラスは茫然としているだろう。
本来、岩槍が出て私を貫く予定のはずなのに、目の前の標的は消え、岩槍も出てこない事を不思議に思っているのだろう。
それもそのはず。斧は、地面に叩きつけられる事無く、地面に落ちているのだから。
ダグラスの手と一緒に。
ダグラスとの距離を一気に詰め、そのスピードのまま横を通り抜けた時に、狩魂の大鎌で斧と一緒に切り落としたのだから。
ダグラスは私が岩槍に貫かれる未来を疑っていなかった。その結末しか見えていなかったからこそ、予想外の出来事に意識が追い付いていないのだろう。
「ぎっ!アァァァァァァァァァ!!!」
鮮血が噴き出している切られた根元を見て、初めて自分の手が切り落とされる事と痛みに気が付いたようだ。
切られた場所を強く握り必死で止血しようとするが、噴き出す鮮血は止まる事を知らない。自分を襲う痛みで、断末魔のような叫び声をあげている。
「ウァっ!はぁ、はぁ」
「さすがですね。伊達に新人狩りをしているわけではありませんか」
「なんでっ!どうして!お、お、俺の手がぁぁ!」
「さぁ?何ででしょうか?」
「ひっ!た、頼む!命!だけは!俺の負け、負けだから!」
顔を青白くさせながらも、必死に頭を下げ懇願する男。
このままなら、出血多量で絶命するだろう。
だが、そんなこと知ったことではない。
「先程、負けを認めても終わらせないと言ったのは、あなたですよ?」
「そのことについても謝るから!だ、だから!命!命だけ……」
「命だけは?ふふっハハッ!アハハハハハハハッ!」
ダグラスの必死の土懇願に、笑いが込み上げてくる。
私が笑っている姿を、ダグラスと周りが恐怖に染まった表情で見ている。それでも笑いが止まらないのだ。
何を言ってるんだ。
許す訳がない。
自分が、何をしてきたのか知っているはずなのに。
命以外の全てを奪われた者、命すらも奪われた者がいると言うのに。
自分が、奪われる側になると許しを乞うたら許されると思っている。
そんな事許される筈がない。
「あなた面白いですね!今まで数多くの新人冒険者を狩っていたのに、いざ自分の番になるとプライドすら忘れて命乞いですか!アハハハっ!」
「それでも!お、俺はまだ、まだ死にたくないぃ!」
「死にたくない?ふふふっ!あなたはとんだ道化だ!ここまで笑いを引き出させる道化とは素晴らしい。私も見習いたいぐらいですよ」
「じゃあ!」
私が見習いたいと言ったことが、どう解釈したのか命が助かると思ったようで、表情が変わる。
そんなこと、ある訳がない。
「あなたがしてきた事が、許されるとでも?」
「それは……」
こちらの見下している瞳を、恐怖に染まった表情で見ながらも言いどもる。
今まで自分がしてきたことが悪であるということは、すくなからず自覚しているようだ。
「自覚はあるようですね。では、さようなら」
「いやだぁぁぁぁ!!」
泣き叫ぶダグラスに向かって振りかぶる狩魂の大鎌は、獲物を刈るべく刃を煌めかせ、ダグラスの首を目掛けて振る。
切り落とされた頭。
空中に舞い散る鮮血が、ダグラスの死を知らせる。
決闘の開始前の騒がしさはもうここにはなかった。ダグラスの死。その事実に、周りはただ絶句している。
冒険者達は、全員が顔を恐怖と驚きを混ぜ合わせたような表情をしている。
決闘の立会人であるギルドの男は、終了を宣言する事さえ忘れている。
「決闘は、終わりでいいですよね?」
「はっはい!勝者、クラウン!」
「「「うぉぉ!」」」
「あの新人がダグラスを殺っちまったぞ!」
「っざけんな!俺の全財産が!!」
「新人が勝つなんて思わねぇよ普通!」
「私の勝ち!私の大勝!!やっば!」
「あの、新人からヤバイ匂いがするぞ」
「あぁヤバイ奴だが、パーティ組んだら迷宮も余裕だろ!」
固まっているギルド職員に声を掛けると、思い出したように宣言する。
その宣言を聞いた冒険者達は、時が動いたかのように沸き上がる。
大半は、賭けた金額を損したことへの嘆きなのだが、数名だけ歓喜の声をあげている者がいる。
おそらく、私に賭けていた者だろう。
「本来なら、負けを認めた時点で決闘は終了となります。今回は、ダグラスの宣言もあったので無罪とします。ですが、次に負けを認めた相手を殺した場合は、殺人罪になります。ご注意ください」
決闘は、負けを認めた相手を殺す事は、殺人罪になるとのこと。
今回は、ダグラスが負けを認めても終わらせないと言った事があったので、無罪となった。
「次があるのなら、気を付けます」
「それでは、ダグラスの全財産の譲渡などの手続きがありますので、受付へと戻っていただきます」
「わかりました」
そう言って、歩きだすギルド職員に付いていく。
未だに収まることを知らぬ冒険者達。
その騒ぎ声を聞きながら、出口へと向かう。
ご覧頂きありがとうございます。
戦闘の描写も、とても難しいです。
次の戦闘までには、もう少し勉強して来ます。




