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第8章:「沈黙の目撃者」── パート5


保安官車両のボンネットの上に、黒の油性ペンで番号が振られた茶色い証拠品袋が並べられていた。


雨脚は幾分弱まっていたが、冷たい飛沫(しぶき)が車の金属面を濡らし続けている。クラカマス郡の鑑識係が、ビニール手袋をはめた指先で、プラスチックケースに収められた金色の鎖をピンセットで持ち上げた。

水滴のついたルーペ越しに確認された留め金には、微小な「14K」の刻印と、手彫りの「S.J.」の文字が確かに刻まれていた。サラ・ジェンキンスの父親が捜索願に添付した領収書と特徴が完全に合致する、紛れもない被害者の遺留品だった。


その横には、アカデミーの屋外工具小屋の床下から採取された土壌サンプル、そして訓練小屋の隅に束ねられていた二分の一インチ径のマニラ麻ロープの切れ端が置かれている。

鑑識係が簡易ノギスでロープの太さを測り、現場で撮影されたポラロイド写真と見比べた。


「谷底の遺体──七人目の被害者の手首に残っていた擦過傷の幅と、ピッチが一致します」


鑑識係の淡々とした報告が、ボンネットを囲む男たちの間に伝播した。


「首の索条痕からも、同一の麻繊維片が検出されました。さらに、背部および肩甲骨周辺の広範囲な挫傷は、押収されたダグラスファーの訓練用丸太の角部と寸法が整合します。……これだけの数が揃えば、法医学的には同一犯による同一手口と判断せざるを得ません」


バーンズ保安官が、分厚い手帳をバチンと閉じた。その表情には、地元の名士に対する遠慮や敬意はもはや微塵も残っていなかった。あるのは、管轄内で起きた猟奇的な殺人事件を迅速に処理しようとする、地方警察官特有の事務的で地味な姿勢だけだった。


「これで決まりだな」


バーンズは傍らに立つ州警察の捜査主任に視線を向けた。


「被害者の私物が敷地内の小屋から出た。凶器と合致するロープと丸太が施設内にあり、敷地のすぐ裏の窪地に遺体が埋められていた。さらに、合宿生の一人が不自然に姿を消している。被疑者が『脱走』と主張している件についても、既に殺害されていてもおかしくないと見るのが自然だ」


「待て、バーンズ」


マッケンジーが低く割って入った。

トレンチコートの襟を立てたまま、彼は湿った泥土の上に立ち、ボンネットの上の証拠品を訝しげに見下ろしていた。


「遺体があったのは鉄条網の外側だ。誰かが外部から運び込み、工具小屋に忍び込んでペンダントを落としていくこともその気になれば可能だ。……ポートランドで失踪事件が起きた夜、神崎の足取りを洗ったのか? 彼は当時、遠征資金の調達で市内のホテルに滞在していたはずだが、正確なアリバイの裏付けは取れていないが」


「おい、マッケンジー」


バーンズが苛立ちを露わにして顔をしかめた。


「お前がポートランドで法学生を追い回して、メディアに叩かれて身動きが取れなくなっているのは知っている。だが、ここに転がっているのは『証左』だ。被害者の私物が神崎の工具小屋の中から出て、被害者の首を絞めたのと同じ規格のロープが神崎の施設にあるんだぞ。第三者がわざわざ山奥の鉄条網を越えて、他人の工具小屋の床板の隙間に宝石を隠し、同じ太さのロープで女を絞め殺して捨てていくとでも言うのか? そんな根拠薄弱なストーリー、どこの検事も相手にしやしない」


マッケンジーは奥歯を噛み締めた。

反論の言葉が見つからなかった。刑事としての道義心が頭の中で緊急警報を鳴らし続けていたが、目の前にある「物証の連鎖」はあまりにも整然としており、隙がなかった。

刑事の確信など、法廷では一掴みの泥ほどの重みも持たない。アメリカの司法手続きにおいて、登録された遺留品と一致する凶器の存在は、いかなる心理プロファイリングよりも雄弁に物語っていた。


「……連れてこい」


バーンズが背後の部下に短く命じた。



粘土質のぬかるみに足を取られながら、神崎猛は二人の州警察官に両脇から腕を極められ、引き立てられてきた。

防寒用の分厚いウールコートは背中で窮屈に突っ張り、両肘は関節が軋むほどの高さまでねじり上げられている。背後に回された手首を拘束するスミス&ウェッソン社製の手錠は、二重ロック(締め付け防止機構)が掛けられていないのか、神崎が体勢を崩して身じろぎするたびにラチェットの爪が一段、また一段と深く噛み進み、骨ばった関節の皮膚に鋭く食い込んでいた。

「放せ! 貴様ら、自分が何をしているのか分かっているのか!」


神崎の怒声は、低く嗄(か)れていた。

世界最高峰の岩壁に挑み、氷点下の風雪に耐え抜いてきた男の顔筋が、激しい屈辱感で引き攣っている。彼は大柄な体を激しく捩じり、警官の手を振り解こうとしたが、両脇の男たちに体重をかけられ、泥の中に膝を折られた。


「神崎猛。合衆国憲法修正第5条に基づき、貴様には黙秘権がある」


州警察官が無感情な口調でミランダ警告を読み上げ始めた。


「供述はすべて、法廷で貴様に不利な証拠として使用される可能性がある。弁護士の立ち会いを求める権利があり──」


「黙れ! 俺はあの女たちなど知らん! 顔も見たことがない!」


神崎は唾を飛ばしながら怒鳴り散らした。英語の語彙は正確だったが、その発音には隠しきれない焦燥と思わず母国の訛りが混ざり合っていた。


「誰かが俺をハメたんだ! 工具小屋の床板など、何年も触っていない! 指紋を調べろ! あのペンダントに俺の指紋がついているはずがないだろうが!」


「指紋はこれからラボで精査する」


バーンズが事務的に遮った。



「トビー・ジェンキンスの失踪についても、お前の言い分をそのまま信じるわけにはいかん。敷地のすぐ外から二つの死体が出た以上、あの少年の件もお前が何か隠しているんじゃないのかと疑わざるを得ないんだ。生徒たちがお前に怯えきっている様子を見れば、このアカデミーが危うい状態にあることは明白だ。詳しい話は、郡保安官事務所の取調室で聞かせてもらう」


「バーンズ! 俺を誰だと思っている! シアトルの市長も、州知事の後援会も俺の味方だぞ! こんな無礼が許されると思うな!」


「歩け」


警官が神崎の肩を力任せに小突き、前へと押し出した。

神崎は泥濘に足をとられながら、なおも背後を振り返り、濡れた地面に立つマッケンジーを睨みつけた。その充血した眼球には、制御を失った人間の剥き出しの心境が焼き付いていた。


パトカーのリアドアが開けられた。

後部座席は硬いビニールレザーで覆われ、前席との間には金網の頑丈なパーティションが嵌め込まれている。警官の手が神崎の頭部を上から強引に押し下げ、狭い後部座席の中へと押し込んだ。

重い鉄扉が、バタンと鈍い金属音を立てて閉ざされた。


窓ガラスの向こう側で、神崎が何かを喚き散らしながらドアの内張りを蹴りつけているのが見えたが、厚いアクリルと遮音構造に遮られ、その声は外には漏れ聞こえなかった。ただ、曇ったガラスの向こうで、歪んだ男の表情が霧雨に濡れてぼやけているだけだった。


「撤収だ。鑑識の機材をまとめろ」


バーンズが号令をかける。

パトカーのエンジンが一斉に始動し、吹き出す排気ガスの白煙が濃霧の中に混ざり合っていった。タイヤが濡れた砂利を噛み、赤色灯の光を尾根の木々に反射させながら、護送車列はゆっくりと林道を下り始めた。


マッケンジーは、その場に一人取り残されていた。

彼の足元には、パトカーのタイヤが深く刻み込んだ泥の轍(わだち)が、茶色い雨水を湛えて残されている。


彼はコートのポケットに手を突っ込み、冷たい指先でライターを弄んだ。

神崎猛という男は逮捕された。押収された遺留品、凶器の整合性、そして遺体の発見現場──そのすべてが、この頑迷で粗暴な元冒険家を「オレゴンを震撼させた連続殺人鬼」として法廷に引きずり出すための要件を十全に満たしていた。明日には全米の新聞が一面でこの逮捕を報じ、地方検察局は死刑を視野に入れた起訴状を作成するだろう。


だが、マッケンジーに胸のすくような達成感はあるはずもなかった。

残ったのは、濡れたトレンチコートが両肩に食い込むずっしりとした重みと、二日間の徹夜がもたらす眼球の奥の乾いた痛みだけだった。


足元に目を落とすと、何台ものタイヤで踏み荒らされた黒い泥の中に、捜索隊の誰かが捨てた紙コップが半分埋もれていた。

この山奥で起きたことは、これから数時間のうちに郡保安官事務所のタイプライターでカーボン紙に打ち込まれ、地方検察局へ送る証拠物件目録としてまとめられる。押収された十四金のペンダント、二分の一インチのマニラ麻ロープ、丸太の打撲痕、二体の検視調書。書類の空欄はすべて客観的な符号で埋まり、郡保安官と州警察のサインが揃えば、送致手続きは何の疑義もなく完了する。


その整然とした公文書のどこをめくっても、ポートランドの街で今頃は講義を受け、差し障りのない学生を演じて生活しているはずのクリストファー・ベネットの名が入り込む余地は一行たりとも存在しない。


マッケンジーはポケットから取り出した煙草が湿気て折れているのに気づき、火をつけることもせず、泥の上に落として靴底で踏み潰した。

風が吹き抜け、アカデミーの正門に残された黄色い規制線テープが、侘びしい霧の中で乾いた音を立ててちぎれそうに揺れている。

彼は泥で鍵穴の詰まりかけたシボレーのドアを開け、きしむ運転席へと重い腰を落とした。


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