第5章:「スポットライトの魔力」── パート9
生放送の翌朝、ポートランドの空は冷たく澄み渡り、オレゴン大学のキャンパスは黄金色に染まった落ち葉で埋め尽くされていた。
ブレザーの襟を立て、教科書を抱えてキャンパスの正門をくぐったとき、クリスは周囲の視線がいつもと異なっていることに即座に気づいた。
時計塔の前、いつもなら学生たちが静かに談笑している芝生広場に、異様な人だかりができていたのだ。その大半が、カラフルなニットやベルボトムのジーンズを穿いた、若い女子学生たちだった。
(……来たな)
クリスが歩を進めると、人だかりの中から甲高い悲鳴のような歓声が上がった。
「クリスよ! 本物が来たわ!」
「クリス! 昨日のテレビ、本当に素敵だった!」
一瞬にして、数十人の女性たちがクリスの周囲を取り囲んだ。彼女たちの瞳に宿っているのは、連続失踪事件の重要参考人に対する恐怖や嫌悪ではなかった。それは、スクリーンから飛び出してきた映画俳優に向けるような、純粋で狂信的な「崇拝」の熱だった。
「サインをくれる? ここに、お願い!」
「私たちはみんな、あなたの無実を信じているわ。警察の嫌がらせに負けないで!」
差し出されるノートの切れ端、キャンパスの新聞、色鮮やかなペン。彼女たちの安っぽいコロンの香りが、朝の冷たい空気の中で混ざり合い、クリスを包み込んだ。
「ありがとう。みんな、本当にありがとう」
クリスは立ち止まり、少しだけはにかむように微笑んで、一人ひとりの目を優しく見つめ返した。その丁寧で謙虚な振る舞いは、彼女たちの熱狂をさらに煽り、耳をつんざくような黄色い歓声を呼び起こした。
だが、その「謙虚な法学生」という仮面の裏側で、クリスの脳内はこれまでにないドーパミンの奔流によって完全に沸騰していた。
脳髄が痺れるほどの、圧倒的な全能感。
これまでは、暗闇の中で獲物の首を絞め、その命の灯が消え去る瞬間を支配することだけが、彼にとっての唯一の快楽だった。一人を殺し、一人を支配する。その狭く、暗い世界での支配が、彼の万能感を満たしていた。
だが、今は違った。
テレビの電波を通じて、自分の「顔」と「存在」が社会の中心に躍り出た。ただここに立ち、微笑みを見せるだけで、何十人、何百人もの女性たちが自分を神のように崇め、奉っている。
(僕が、社会を支配している……)
クリスは、サインを書き進める長い指先が、狂おしいほどの悦びで微かに震えるのを感じていた。
さらに極上の皮肉は、この場所が他でもない「オレゴン大学のキャンパス」であることだった。
サラ・ジェンキンスを、そしてリンダ・カーターを誘拐した、まさにその「狩り場」のド真ん中で、獲物であるはずの若い女たちが、自分を「守るべき悲劇の主人公」として熱狂的に囲んでいるのだ。捕食者が、被捕食者たちに守られ、崇拝されている。この歪んだ構図が生み出す欺瞞的で他人を弄ぶような愉悦は、かつてのいかなる殺人の瞬間をも遥かに凌駕していた。
「ベネットさん、こちらを向いて!」
女子学生の一人が、インスタマチックカメラ(簡易カメラ)のシャッターを切った。まばゆいフラッシュの光が、クリスの澄んだ瞳を白く染める。
クリスはその光を、自分を祝福する聖なるスポットライトとして全身で浴びた。
マッケンジー刑事の執念も、自分を利用してのし上がろうとしたケイトの野心もすべては自分のこの偉大なステージを引き立てるための、取るに足らない舞台装置に過ぎない。自分は神になったのだ──クリスは熱狂する少女たちの瞳の中に映る、世界で最も美しく、世界で最も潔白な自分自身の姿を、脳内で無限に反芻しながら、至高の頂点へと上り詰めていた。




