第5章:「スポットライトの魔力」── パート8
「ライトオフ。お疲れ様でした!」
フロアマネージャーの声とともに、スタジオを照らしていた強烈なライトが一斉に消え、あたりに薄暗い静寂が戻った。
ケイトは張り詰めていた呼吸を吐き出し、胸に手をあてた。心臓がまだ激しく波打っている。向かいの席から、クリスがすっと立ち上がり、彼女に向かって小さく会釈をした。その顔には、カメラの前で見せたあの哀愁を帯びた微笑みの余韻がまだ残っていた。彼はそのまま、局のスタッフたちに丁寧に見送られながら、スタジオを後にしていった。
ケイトがその余韻に浸る間もなく、スタジオのインターホンから、ニュースルームのフォスターの怒鳴り声が響いた。
「ケイト! 今すぐ二階の報道フロアへ戻れ! 大変なことになっているぞ!」
急いで階段を駆け上がり、ニュースルームの重い防音扉を開けた瞬間、ケイトは凄まじい音の嵐に包まれた。
ジーッ、ジーッ、ジーッ──。
何十台もの電話機が、まるでパニックを起こしたかのように一斉にベルを鳴り響かせている。交換台(交換手)の女性たちは、ヘッドセットを押さえながら、しゃかりきにプラグを差し替えていたが、点滅する赤いランプは増え続ける一方だった。
「フォスター、いったい何が──」
「電話回線が完全にパンクしたんだ!」
フォスターはタバコをくわえるのも忘れ、青いインクがにじんだ受信記録のメモをケイトの目の前に突きつけた。
「オレゴン中、いや、コロンビア川を越えたワシントン州の南部からも電話がかかってきている!最初は警察への抗議か、あるいはあのベネットを犯人だと罵る市民からの電話だと思った。だが、違ったんだ。電話をかけてきているのは、全員若い女たちだ!」
ケイトはフォスターからメモをひったくり、その内容に目を走らせた。
『あんなに美しい青年を犯人扱いするなんて、警察の嫉妬だ』
『彼の無実を信じます。ハラスメントを行うマッケンジー刑事を解雇するべきだ』
『彼を助けるために、私ができることは何ですか? ベネットさんにファンレターを送りたい』
メモを読み進めるうち、ケイトの背筋に、恐怖ではなく、ゾクゾクするような熱い鳥肌が立ち上っていった。
(私が……やったのね)
彼女は自分の胸の内で、声にできない巨大な勝どきが爆発するのを感じた。
目の前で祝電のようにベルを鳴らし続ける電話機。それらはすべて、ケイト・コリンズという一人の若い女性リポーターが、男たちのニュースルームを出し抜き、自らの手で作り上げた「偉業」の証だった。
フォスターをはじめ、自分を「お天気お姉さん」と呼び、バラ園のレポートでもしていろとあざ笑っていた男性リポーターたちは、今や完全に呆気にとられ、にわかには信じられない目でケイトを見つめていた。誰も彼女を軽視することはできない。彼女は今夜、ただの「容疑者」だった一人の法学生を、オレゴン中の女性たちが熱狂する「悲劇の主人公」へと、テレビの電波を使って一瞬にして作り替えてみせたのだ。
「ケイト……お前は、とんでもない時代の寵児を生み出しちまったな」
フォスターが、どこか畏敬の念を込めた目でぽつりと言った。ケイトはその言葉を聞き、誇らしげに顎を上げた。
「ええ、そうよ、フォスター。これが私の仕事。……明日の視聴率レポートが楽しみね」
さらに驚くべきことに、生放送からわずか数時間後、深夜のテレビ局の受付には、早くもクリス宛ての電報や、手書きのファンレターを抱えた若い女性たちが集まり始めていた。
ケイトは、点滅し続ける電話の赤い光の海の中に立ち、自らが手に入れた栄光の余韻に酔いしれていた。
マッケンジー刑事がダイナーで放った「最初に餌食になるのはお前だ」という警告など、この凄まじい熱狂の前には、哀れな老刑事のただの世迷言にしか思えなかった。ケイトはテーブルの上のレコーダーを愛おしそうに撫で、自分こそがこの世の中の潮流を作り出したのだという万能感を胸に、深い満足の微笑みを浮かべるのだった。




