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第4章:「恋人のブラインド」── パート5(遺体遺棄)

深夜二時。ポートランドを濡らす雨足は、衰えることなくアパートの窓硝子を叩き続けていた。


クリスは暗闇の中で静かに目を開けた。隣では、シンシアが自分の腕を枕にし、あどけない寝息を立てて深く眠り込んでいる。彼女の体温は心地よく暖かく、その表情には、愛する男を警察の横暴から守り抜くという強固な決意を秘めたまま、安らかな幸福感が満ちていた。


クリスは、彼女に刺激を与えないよう、極めてゆっくりと自分の腕を抜き取った。シンシアは微かに身じろぎをしたが、目を覚ます気配はなかった。クリスはベッドから滑り出ると、音を立てずに衣服を着替え、リビングへと向かった。


カウンターの上には、彼女が丁寧に畳んだ衣類の脇に、真鍮製のキーホルダーが置かれていた。シンシアの愛車である、グリーンのダッジ・セダンの鍵だ。クリスはその金属を、音を立てずに指先でつまみ上げた。さらに、ドレッサーの上に置かれていた彼女のヘアゴムをそっと摘んで、自分のポケットへと滑り込ませた。


(保険は、常に多すぎるということはない)


もし深夜、この雨の中でシンシアの車を運転しているところをパトカーに呼び止められても、助手席やグローブボックスにこれらの女性用の私物を散らしておけば、「恋人の車を借りて、夜食のハンバーガーを買いに出かけた善良な学生」という完璧な役割が完成する。アメリカの田舎町の警官など、その程度のディテールを見せるだけで、簡単に追及を諦めるものだ。


クリスは窓のブラインドの隙間から、アパートの正面の路上を冷たく見下ろした。

街灯のオレンジ色の光に照らされた雨の中に、一台の古いシボレーが佇んでいるのが見えた。マッケンジー刑事の車だ。


マッケンジーは、駐車場に停められたクリスの「ベージュのフォード」を執拗に見張っている。自分が一歩でもフォードを動かせば、老刑事は即座にエンジンをかけ、執念深く追ってくるだろう。

だが、マッケンジーは知らない。クリスが今夜、フォードではなく、恋人のダッジに乗って、アパートの裏口から音もなく滑り出していくということを。


クリスはアパートの裏手にある暗い駐車場へ降り、ダッジの運転席へと滑り込んだ。エンジンを極力静かに目覚めさせ、彼はヘッドライトを消したまま、路地裏の闇を伝って通りへと滑り出した。


向かう先は、市街地の北西にある、偽名で借りている安アパートの地下倉庫だった。

そこには、昨夜彼が拉致し、命を奪ったサラ・ジェンキンスの遺体が、防水シートに包まれて静かに眠っていた。クリスは周囲を警戒しながら、冷たい死体をダッジの広いトランクへと運び込み、再び車を走らせた。


目指すは、カスケード山脈の深い森だった。


深い霧と、激しい暴風雨がダグラスファーの巨木群を揺らしている。

クリスは車のヘッドライトを頼りに、舗装の途切れた、ぬかるんだ林道へとダッジを乗り入れた。道は徐々に険しくなり、雨水が川のように流れる泥濘がタイヤを阻もうとする。ダッジの細いタイヤは、泥の中にスリップした痕跡を深く刻み込んでいく。神崎がのちに林道のゲートの傍らで見つけることになる、あの不審な都会の乗用車の足跡が、ここに刻まれた。


やがて、行く手を阻むように張り巡らされた、頑強な鉄条網のゲートが視界を遮った──「神崎アカデミー」。


クリスは車を停め、エンジンを切った。ヘッドライトが消え、世界は一瞬にして漆黒の闇と、耳を裂くような雨音に支配された。

クリスはトランクからサラの遺体を引きずり出した。雨水を含んだ死体は信じられないほど重く、衣服を冷たく濡らした。彼は泥まみれになりながら、鉄条網のすぐ外側にある急斜面の谷底へと、サラの遺体を引きずり下ろしていった。


(ここで眠るといい)


カスケードの深い谷。誰も立ち入らない深いブッシュの奥。クリスはサラの遺体を湿った朽ち木とダグラスファーの濡れた葉で覆い、冷酷にカモフラージュした。

外界の法律も届かない、人跡未踏の山奥の檻。そのすぐ目の前に、ポートランドを震撼させる連続殺人の犠牲者が眠ることになる。この「時限爆弾」が、のちに神崎のアカデミーを跡形もなく吹き飛ばす強力な燃料になることなど、まだ誰も知らない。


作業を終えたクリスは、息を切らせながら車へと戻った。

冷え切った運転席に腰掛け、彼は泥を拭いながら、ポケットからポートランドのガソリンスタンドで配られるブックマッチを取り出した。震える手でマッチを擦り、煙草に火をつける。紫煙を深く吸い込んだ後、彼は使い古したマッチの燃え殻を、鉄条網の支柱の根元へと無造作に投げ捨てた。


ダッジは静かに方向転換し、嵐のカスケード山脈の闇の中へと消え去っていった。


午前四時。

クリスはアパートに戻り、浴室で泥と雨水を完全に洗い流した。衣服を洗濯機に放り込み、何事もなかったかのようにシンシアの車の鍵を元の場所に戻した。

そして、再びベッドへと滑り込み、シンシアの暖かい身体を抱きしめた。

シンシアは微かに笑みを浮かべ、彼の胸に顔を寄せた。自分の愛車がたった今、山奥で女子大生の遺体遺棄に使われたことすら知らず、彼女はこれからもクリスを無邪気に愛し、彼を守るための嘘を吐き続けるのだ。クリスはその滑稽なまでの盲信を愛おしみながら、静かに目を閉じた。



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