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第4章:「恋人のブラインド」── パート3

アパートのベルが鳴ったとき、シンシアはクリスのシャツにアイロンをあてているところだった。

(もう戻ってきたのかしら)

まだ夕方の四時だ。クリスは大学の判例研究があると言って出かけたばかりだった。彼女はアイロンを立て、エプロンのスリットを軽く整えながら、軽い足取りで玄関へと向かった。ドアを開けると、そこにはクリスではなく、見知らぬ中年男性が立っていた。

「ベネット君の部屋で間違いないかな?」

男は雨を吸って重くなったヨレヨレのトレンチコートを着ており、雨の匂いをまとっていた。無精髭に覆われた顔には、隠しきれない極度の疲労と、どこか偏執的な光を湛えた濁った瞳があった。男は懐から革ケース入りのバッジを無造作に取り出して見せた。

「オレゴン州警察のマッケンジーだ。少し話を聞かせてほしい」

「マッケンジー刑事……」

シンシアの背筋を、冷たい不快感が走り抜けた。

クリスが以前、「僕を犯人に仕立て上げようと執拗に追い回している気の毒な刑事」と言っていた男だ。本当に来たのだ。彼女は警戒心を剥き出しにし、ドアを細く開けたまま、男を中に入れまいと体で遮った。

「クリスは留守です。お話しすることは何もありません」

「君がシンシア・ミラーさんだね」

マッケンジーは、彼女の拒絶を意に介さず、低く掠れた声で続けた。

「ベネットを庇うのはやめろ。彼は君を騙している。我々は、ポートランド周辺で起きている若い女性の連続失踪事件を追っている。昨夜も、サラ・ジェンキンスという女子大生が消えた。そしてベネットには、昨夜の行動に数時間の空白があるんだ」

「空白なんかありません!」

シンシアは鋭く言い返した。

「クリスは昨夜、ホットラインのボランティアのあと、レポートの提出のためにダイナーで朝まで勉強していました。私に事前にそう話してくれました。私は深夜二時すぎに彼の部屋に電話をかけましたが、彼は不在でした。それは、彼が約束通り外で必死に勉強していた何よりの証拠です!」

マッケンジーは深くため息をつき、その濁った目をシンシアに向けた。その眼差しには、哀れみと、そして冷酷な警告が混ざり合っていた。

「ミラーさん。それが奴の罠なんだ。奴は君に電話をかけさせるように仕向け、自らの不在を『勤勉さ』の証明にすり替えた。奴は巧妙な嘘つきだ。君が彼を『誠実な紳士』だと信じているその心を利用して、自分を覆い隠すための盾にしているんだ。ベネットの本性は、そんな綺麗なものじゃない。奴は若い女性を拉致し、暴行し、首を絞めて殺す冷酷な怪物だ。私は奴の目の奥にある暗闇を見た」

「黙りなさい!」

シンシアの叫び声が、狭いアパートの廊下に響き渡った。

彼女の全身が、激しい怒りと侮蔑でわなないていた。目の前の男が、自らの命よりも大切に思っているクリスの高潔な人格を、泥靴で踏みにじるように侮辱している。その事実が、彼女の脳を沸騰させた。

「あなたに何がわかるというの! 一生懸命に法律を学び、他人のためにボランティアをし、私を心から愛してくれるクリスが、そんな恐ろしいことをするはずがない! あなたは、自分の無能さで事件を解決できないから、将来のある優秀な学生を犯人に仕立て上げて、自分の落ちぶれたキャリアを救いたいだけでしょ!」

マッケンジーは何かを言おうと口を開けたが、シンシアの怒号がそれを遮った。

「二度とここへ来ないで! 今度クリスや私に近づいたら、ハリス議員の事務所と大学の法学部に連絡して、あなたの不当な嫌がらせを正式に告発します! さあ、帰って!」

シンシアは全身の力を込めてドアを叩きつけた。

バタン、という凄まじい金属音が廊下に響き、鍵がガチリと閉まる音が続いた。

ドアの向こう側──薄暗いアパートの廊下で、マッケンジー刑事はしばらくの間、直立不動のまま佇んでいた。彼の額からは冷たい汗が流れ、その肩は落胆で微かに落とされていた。

「……手遅れか」

マッケンジーはぽつりと呟いた。

彼は、クリスという怪物の恐ろしさを改めて痛感していた。奴は単に身体的な暴力を振るうだけではない。周囲の無垢な人間の心に完璧な「忠誠」を植え付け、自分を盲信的に擁護する最強の兵士に仕立て上げる。

ドアの向こうにいるシンシアは、もはや被害者でもただの傍観者でもなかった。クリスを狂信的に守るために、いかなる真実も撥ね退ける「防壁」そのものに変えられてしまっている。マッケンジーがどれだけ物証を集めようとしても、この女はクリスのために偽りのアリバイを叫び続けるだろう。

マッケンジーはポケットの中で拳を握りしめ、ゆっくりと階段を降り始めた。

外の雨は冷たく、彼の疲れ切った身体に容赦なく染み込んでいく。猟犬の追跡は完全に阻まれた。だが、彼の瞳の奥にある執念の火だけは、消えることなく、さらに暗く、鋭く燃え盛っていた。

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