第13章: 神宮の夜風と、勝利の祝勝会
「勝った、勝った、大勝利だァーーーッ!!」
カクテル光線が眩しく降り注ぐ、明治神宮野球場のライトスタンド。佐藤が、ラグビー仕込みの巨体を激しく揺らし、メガホンを両手に持って狂喜乱舞していた。
平井秀平の罠を粉砕し、滝サユリの無実を完全証明した緊急審理から数時間。サユリたちは、東京ヤクルトスワローズのホームゲームにいた。満員のスタンドにミニビニール傘の波が揺れている。
「滝先生! 有吉さん、松井先生! そしてヨシオくん! 本当に、本当にありがとうございました! 乾杯っす!!」
佐藤の音頭で、冷え切った生ビールのプラスチックコップが豪快にぶつかり合った。
「ぷっはぁぁーーー! やっぱり神宮で飲むビールは五臓六腑に染み渡るわね!」
元ソフトボール部一塁手の有吉が、弾丸ライナーのような勢いで一杯目のビールを干し、早くも二杯目を注文している。「たまには冷房の効いていない外で、こうして頭を空っぽにするのも悪くないですね」と松井先生も上気した顔で笑っている。
「ママ、これすっごく美味しい!」
サユリの隣では、ケンタが口の周りにケチャップとマスタードを派手につけながら、大好物のアメリカンドッグに笑顔でかぶりついていた。「ええ、本当ね、ケンタ」サユリはケンタのオレンジジュースのコップに自分のコップをカチンと合わせ、愛おしそうに頭を撫でた。その隣では、実母の昌子が、マイ水筒から温かい緑茶を湯呑みに注いで、しみじみと味わっていた。
「むぐ……もぐ……むぐ……」
そのヨシオはといえば、作戦会議での「たい焼き+牛乳」に続き、完全に脳の糖分とカロリーのセンサーが振り切れていた。彼は球場名物の『つば九郎ヘルメット型チャーハン』を抱え込み、さらに手元には『ヘルメットポテト』と『ロングサイズみたらし団子』を並べ、狂ったような速度で胃袋へ流し込んでいる。
「ちょっとヨシオくん、あなた法廷でPythonのコード叩いてるときより必死じゃないの!」
有吉が爆笑しながら突っ込むと、ヨシオは口の周りをチャーハンだらけにしながら、大真面目な顔で眼鏡を上げた。
「松井叔母さん……
僕の脳のPython環境(Jupyter Notebook)は、糖分がメガバイト単位で不足すると、秀平の国家AIに逆探知される恐れがあるんです。……むぐ、美味い。神宮の炭水化物は、処理速度が違います」
「何よそれ、ただの食いしん坊じゃない!」
松井先生も呆れて笑い出し、スタンドは温かい爆笑に包まれた。張り詰めた緊張のあとに訪れた、この最高に温かい仲間たちとの「緩和」の時間。サユリはビールを喉に流し込み、幸せを噛み締めていた。
なお、この大勝利によって元旦那マサヒロと平井秀平のコンビは完全に成敗され、サユリを悩ませていたすべての問題はクリアとなったのだった。




