第7話 俺ってどんな人
俺は部屋を片付けながら、何度もLIN〇を見た。
いつまでも既読にならなかった。時間はすでに深夜0時を回っていたから、その日はもう連絡が来ないと思った。あちらは高校生だから、そんなに遅くまで起きていないだろう。
普通はあんな熱量で迫って来るなら、手紙を渡した瞬間から連絡を待つものだろう。それなのに、LIN〇を見もしないってことは、気が変わってやっぱり会いたくなくなったのかもしれない。
あの後、俺なんかより、もっとイケメンが見つかったか?
俺の経験から言って縁がある人とはすぐに連絡がつくものだ。
今回はそうではない。
俺はあの子に選んでもらえなかった気がした。
俺は顔はそれほど悪くないと思う。
兄たちはイケメンでモテてたから、俺もそこそこなのかもしれない。
しかし、俺自身がイケメンと言われたことはないから、やっぱり世間的に見て普通なんだろう。
普通ってのが、一番ポテンシャルがあるはずだ。
髪型次第でイケメン風に見えるかもしれないんだし。
背も高い。180センチ。
誰もが背の高い男が好きとは限らないが。
男が身長にこだわるほど、女は気にしてない。
小柄でも顔がよければもてる。
体形はやせ型。
細くて筋肉があるのが理想かもしれないが、俺はただ痩せてるだけ。
勉強はそこそこ得意。
だが、教養があるわけじゃないから話は多分つまらないと思う。
イケボでもない。
一緒にいて楽しいタイプじゃないな。
誰かといても間が持たない。
喋ったらがっかりされる。
いつもそうだ。
そもそも高校生と何を話したらいいのかわからない。
俺が通う大学だって、あの子の通う超難関私立高からしたら受験失敗組に入る。
俺は今まで恋愛経験がまったくなく、告白したこともされたこともない。
恋愛も性体験の話も蚊帳の外。
年下を前に余裕をかますこともできない。
無理やりでも女性経験を積んでおけばよかったと後悔した。マッチングアプリなどもやったことがなかった。そもそも、女性と個人的に連絡を取り合ったことがなかったのだ。サークルやゼミなどで要件があるときだけ。
今まで俺に気がありそうだと思った女性は、みなバイト先で出会った人たちで、かなり年上の人ばかりだった。30代の独身の女の人、30くらいのシングルマザー、40代以上のおばさん。そういう人は俺に普通に話しかけてくる。俺は「はい、はい」と聞くだけ。
そういう人から何度か食事や飲みに誘われたことがあるけど、怖いので断った。
そういう人が求めているのは若い男の肉体とエキス。みないやらしそうに俺を見ていた。または、有名大学に通う俺の将来性を買って、エリートと結婚して楽をしようという魂胆だ。残念ながら俺は心理職という稼げない職業を選んだから、結婚したら死ぬまで共働きしてもらうしかない。
そんな人生なら独身の方がましだった。
俺の人生にとっての最高の上がり方は、女医と結婚して、自分は仕事を適当にこなしつつ家で子どもの面倒を見るというやつだ。いつかそんな風にならないかなと思って、女医が出てくる成人向け動画を見るのが好きだった。美人でやさしい女医。そんなのファンタジーでしかない。いたとしても医者の男と付き合うだろう。
俺が相手を選べる立場でもないけど、看護師と結婚して共働きは嫌だ。女医みたいな金持ちで甘やかしてくれる人がいい。顔は美人じゃなくてもいい。妥協できる。
でも、相手が男の医者でBL展開だったら嫌だ。1回10万くれると言われても無理。アナン君はかわいいし、十代だからギリギリいけるかもしれない。俺みたいな見境のないタイプは結構いると想像する。
俺はアナン君に会う前は、同性は絶対無理だと常々思ってた。
体が受け付けない。
ゲイビデオはトラウマ級に拒否感があった。
BL漫画みたいに、相手に告られて、流されて付き合うとかありえない。
だから同性愛の人も、俺が男に対して感じるのと同じように、本当に女は無理なのかもしれない。
いや。子作りだけ頑張って、その後は何もしないとかなら、できるのかな…。
バイアグラとか飲めばなんとか。
俺の親世代だと結婚して子どもがいるのが当たり前だったんだろうけど、中には同性愛の人もいたはずだ。今の50歳の人の婚姻率は男70%、女80%だけど、1960年の50歳の婚姻率は男女とも98%以上あったと聞く。結婚するのが当たり前の時代。独身の人がいたら見合いの話がどこからか舞い込んで来る。離婚率も0.1%未満で極端に低い。偽りの人生を送っている人が多かったんじゃないかと思う。正直言って異常な時代だ。
日本全体が村社会のような時代。近所や親せきから過度に干渉されてたからこそ、高い結婚率を維持できていたんだろう。
俺みたいな非モテはそういう社会の方が結婚出来ていたはずだ。もし、今、見合いの話が来たら喜んで会いに行く。
気が付いたら深夜2時を回っていた。
俺はその日、ずっと不毛な妄想に囚われて時間を無駄に過ごしていた。自分自身の過去を反省し、どうしたら年下に馬鹿にされないか悩み、身体的に男を受け入れられるかを延々と考えていた。
アナン君。
正々堂々と俺に会って、責任を取りやがれと思った。




