第6話 メッセージを送るそして
SNSの文面はどうするか。
何を書くかより、どんな風に送るかを決めるのに時間がかかった。
あまり書き過ぎても相手に負担になるから、さらっと決めるに限る。それというのも、過去にSNSでメッセージを送ったのに、何度か既読スルーされたことがあったからだった。
それ以来、どう送れば返事がもらえるかを考えすぎてしまうのだった。
俺が考え抜いたメッセージの最終版は下記だった。
「アナン君
今日手紙受け取った者だけど無事届いてるかな
手紙ありがとう
読ませてもらったよ
返事くれたらうれしい」
今思えば完全に不審者だが、その時はこのくらい漠然としていた方がいいと思っていた。まじめに自己紹介して返事が来なかったら恥ずかしいし、あちらも気が変わる可能性だってある。
家の住所まで知らせて来たのに?
いいや。
俺は人の気持ちは一瞬一瞬で変わると思ってる。
よくあるのが「〇〇するから来いよ」と言っておきながら、それっきり連絡してこない人がいることだ。
だから、他人に「性奴隷にしてください」と頼んでおきながら、忘れるということもあるかもしれない。
前者より後者の方が極端だが、あの子が無作為に手紙を出しまくっている場合は、先約がいるかもしれない。
もし、俺以外にもご主人様候補がいるとして、先着順だったら俺が一番最初でありたかった。
それなのに、メッセージを送るまで5時間かかってしまった。ハイになって考えがまとまらなかったからだ。
しかし、文章を作って送るまでにかかった時間はわずかだったと思う。
よし。
送るぞ…。
いや、待てよ…これだと名前がばれてしまうじゃないか。
俺はふと気が付いた。LIN〇アカウントがほぼ本名だ。
とっさに偽名を使った方がいいと判断した。
これはやばい案件のような気がする。
未成年とSM行為。
世間に出回ったら恥ずかしいし、もしかしたら、傷害事件になることだってあり得る。股間を踏みすぎて睾丸が破裂したり、鞭を強く打ちすぎて皮膚が裂けたりして、病院に行き、通報されるとか。親が気付いて通報するとか…。
海外ではSMで客が死んでしまったという事件もあったらしい。
俺の将来は明るくないが、それでも台無しにしたくない。
最終的に、名前とプロフィール写真を変更した。
俺がLIN〇を教えているのは親兄弟と高校時代の友達2人だけだったが、いきなり名前も写真も変更したら何かやばいことをするんじゃないかと心配されそうだ。
それ以上に、アナン君とのコンタクトはリスクが高い。
本当にやるのかお前?
相手が俺に望んでいるのは、ただの友達じゃないんだぞ。
後で脅されるかもしれない。
そうじゃなかったとしても、相手が望むように振舞えなかったら、俺はすぐ用済みになる。
恋愛が崖っぷちを歩くようなものであることは、男女の普通の恋愛でも同じかもしれない。俺には経験ないけど。
うわ、めっちゃドキドキする。
俺は真っ赤になった。
俺は送信ボタンを押した。
もし、連絡が来たら、会って喋って、それからどうするんだろう。
あっちの家か、うちにくるか。またはホテルか…。
今から家に来ることになったらどうしよう。
相手が衝動的に相手を欲しがっているなら、そういうこともありそうだった。
新大久保の公園周辺に立っている女の子たちを物色している客は、計画的にあそこに来ているというより、その日、ムラムラするからという理由であの場に向かったのではないかと思う。
例えば、今晩、公園で待ち合わせとか…。
もしかしたら、暗がりでボコられる可能性もある。
以前ゲイの発展場で殺人事件があった。
俺に何を期待してるんだ。
あの子は!
俺は再びどうしょうもなく気持ちが乱れてしまい、もし、彼が家に来る時のためにと部屋を片付け始めた。
そういえば、手紙って原始的な手段だよな。
燃やしてしまったら跡形もなくなる。
スマホだったらデータが残って、端末からは消せても、完全には消せないだろう。
知らない人ってやっぱ怖いな。
LIN〇送らなければよかったのかな…。
俺はYouTub〇で音楽をかけて気を紛らわせた。




